知的財産法 前期第2回
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前回、模倣と創造の関係を学びました。模倣は創造の源泉であることは確かであるが、すべての模倣を許容すると、創造がないがしろになってしまうことも明らかになりました。それを防いで、両者のバランスを取るために、法的な規制が必要となります。そのための法律として、どのような制度が必要なのか。第2回目は、そのような観点から知的財産権法を俯瞰してみます。
ここでは、なぜ一般法たる民法だけでは知的財産を保護できないのかを学びます。そして、一般法を補完する形で知的財産法が定められていますが、その法体系の全体像を俯瞰します。
2023年アーカイブ
知的財産法が必要な理由を学ぶ
所有権と知的財産権の違い
かえでの木事件と顔真卿自書建中告身帖事件(がんしんけいじしょけんちゅうこくしんちょうじけん)を参照しつつ
なぜ、知的財産法が必要となるのかを考える。
背景にある世界観を考え、どのような対象をどのように保護するのが最適なのか、そのために、どのような法律が整備されているのかを学ぶ
今回、まず、この問題を考えてみましょう。
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敷地内での撮影禁止
撮影したらどうなる?
写真の公表差し止めはできるのか?
かえでの木事件
東京地裁平成14年(ワ)1157号平成14年7月3日判決
かえでの木を所有する原告が、同かえでの木の写真を掲載した書籍を出版、販売等した出版社に対して、かえでの木の所有権に基づく出版等の差止めを請求するとともに、かえでの木の撮影者に対してかえでの木の所有権侵害による不法行為に基づく損害賠償を求めた事案。
本件かえでの木の画像
裁判所の判断
所有権は有体物をその客体とする権利であるから,本件かえでに対する所有権の内容は,有体物としての本件かえでを排他的に支配する権能にとどまるのであって,本件かえでを撮影した写真を複製したり,複製物を掲載した書籍を出版したりする排他的権能を包含するものではない。
顔真卿自書建中告身帖事件
(がんしんけいじしょけんちゅうこくしんちょうじけん)
唐代の書家顔真卿の真蹟である「顔真卿自書建中告身帖」の所有者である博物館(財団法人)が、この告身帖を無断で複製し販売した出版社に対して、所有権(使用収益権)の侵害を理由に、出版物の販売差止とその廃棄を求めた民事訴訟事件。
裁判所の判断
所有権は有体物をその客体とする権利であるから、美術の著作物の原作品に対する所有権は、その有体物の面に対する 排他的支配権能であるにとどまり、無体物である美術の著作物自体を直接排他的に支配する権能ではないと解するのが相当であるとし、博物館側敗訴。
上記リンクが切れてしまった場合:
所有権に基づく写真集出版差し止め
よって、開けた土地内に無断進入して所有物を撮影されただけでは、写真の出版差し止めはできない。いわゆる物のパブリシティ権は認められないが、これも、人格的利益に当たらないからである。
土地への無断進入によって不法行為が成立する場合はあり得るが、それによって認められる損害とは、進入事実と相当因果関係があり、且つ、進入がなかった場合の被害者の経済状態と進入後の被害者の経済状態との差額に限られるので(通説である差額説)、植物が損傷したとかの事情がなければ損害ゼロとなる。
出版によって撮影者が得た利益は、土地所有者の経済状態とは何等の関連性がないので、これを土地所有者の損害とすることはできない。
もっとも、屋内に侵入して撮影した場合には、プライバシーという人格的利益が損なわれるので、差止も可能になるし、精神的損害が生じたとして損害賠償(慰謝料)の請求も可能となる。この場合、民訴248条の適用により、出版利益額も損害額認定の一資料となると思われる。
参考情報:弁護士の福井健策氏の記事
平等院パズル事件
平等院鳳凰堂の写真を使ったジグソーパズルを無断で販売したとして、平等院が玩具メーカー「やのまん」に販売停止などを求めた訴訟(京都地裁)
平等院はパンフレットに「撮影した写真の営利目的使用の禁止」を明記していた。やのまんは、写真家が撮影した鳳凰堂の写真を使用して、300ピースのジグソーパズルを平等院に無断で販売していた。
事件の結果・・・
令和2年10月12日付にて和解が成立いたしました。裁判所が、平等院の主張を否定して「やのまんに違法行為がない」ことを文書で認めて下さったので、和解を受諾することとしました。
やのまんのホームページ:お知らせ・・■宗教法人平等院との訴訟についてより
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パブリックドメイン(公有) という世界観
背景にある世界観を考え、どのような対象をどのように保護するのが最適なのか、そのために、どのような法律が整備されているのかを学ぶ
知的財産の価値はどこにある?
知的財産には、何からの価値がある・・その価値が社会にメリットをもたらす。誰もが使いたがる。放っておくと、自然に伝搬していく。伝搬には当然模倣が伴う。
模倣を防止する必要があるのだろうか。あるとするならどうすればよいだろうか
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問い
知的財産権法(産業財産権法・工業所有権法)の制定趣旨は?
知的財産権法を通じて我々は何をしなければならないのであろうか?
産業財産権法(工業所有権法)・知的財産権法は何を規制しているのだろうか?
産業財産権制度の歴史
ベニス共和国 1443年:発明に対して特許。1474年:世界最古の成文特許法「発明者条例」
イギリス 1624年:「専売条例」(近代特許制度の基本的考え方明確化)
アメリカ 1787年の連邦憲法「議会は・・・科学及び有用な技術の進歩を図るため・・・発明者に対し・・・一定の期間、独占を与える権限を有する」・・1790年、特許法が制定
フランス 1791年:特許法(無審査主義)
ドイツ1877年、ドイツ統一特許法(世界で最初の審査公告主義採用)
国際条約・・1883年 工業所有権の保護に関するパリ条約
日本 (江戸時代 享保6年(1721年)に「新規御法度」のお触れ)
明治4年(1871年) 我が国最初の特許法・専売略規則公布
当時の国民は特許制度を理解し利用するに至らず、当局においても運用上の問題が生じたため、翌年その施行は中止
明治18年(1885年)4月18日「専売特許条例」公布:高橋是清初代専売特許所長
特許第1号は、明治18年7月1日東京府堀田瑞松により出願された「堀田式錆止塗料とその塗法」
明治38年(1905年) 実用新案法制定
大正10年改正: それまでの先発明主義から先願主義に移行
昭和34年 大正10年法が全面的に改正され、現行特許法、現行実用新案法となる
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知財を規律する法体系
社会活動、経済活動の中で生まれた知財は、どのような法律で、どのように保護されているのであろうか?
秘匿(ひとく)
契約
行為規制(不競法・独禁法)
物権化・・特許法・実用新案法・意匠法・著作権法・種苗法・半導体集積回路の回路配置に関する法律
所有権による規律・・(例:建物敷地内の撮影禁止・・・所有権に基づく管理権による)
施設・空間に対する所有権に基づく立ち入り禁止など
問い:公開で知的財産は守れるか?
所有権と知的財産権
所有権は有体物をその客体とする権利であり、有体物自体を直接排他的に支配することができる。
民法206条 所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。
一方、
有体物に潜在しているアイデアや信用を直接排他的に支配する権能はない。
物権法定主義
知的財産を物権として保護するには、どうしたらよいのか?
民法175条 物権は、この法律その他の法律に定めるもののほか、創設することができない。
物件の種類(本権と占有権)
本権(占有を正当化する権利)
所有権(民法206条 所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。)
制限物権
用役物権:地上権、永小作権、地役物権、入会権
担保物権:抵当権(根抵当権)、質権、留置権、先取特権
占有権(第180条 占有権は、自己のためにする意思をもって物を所持することによって取得する。):物に対する事実上の支配(占有)そのものを法律要件として生ずる物権
憲法
憲29 財産権
財産権は、これを侵してはならない。
2 財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。
3 私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。
憲98
この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。
○2 日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。
条約
工業所有権の保護に関するパリ条約
属地主義を前提
工業所有権保護同盟
保護は,特許,実用新案,意匠,商標,サービス・マーク,商号,原産地表示又は原産地名称及び不正競争の防止に関する
内国民待遇
優先権制度
特許独立の原則
特許協力条約 PCT (特許)
意匠の国際登録に関するハーグ協定のジュネーブ改正協定
マドリッド協定議定書(商標)
世界貿易機関を設立するマラケシュ協定附属書1Cの知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(地理的表示)
他多数
知的財産基本法
(目的) 第一条 この法律は、内外の社会経済情勢の変化に伴い、我が国産業の国際競争力の強化を図ることの必要性が増大している状況にかんがみ、新たな知的財産の創造及びその効果的な活用による付加価値の創出を基軸とする活力ある経済社会を実現するため、知的財産の創造、保護及び活用に関し、基本理念及びその実現を図るために基本となる事項を定め、国、地方公共団体、大学等及び事業者の責務を明らかにし、並びに知的財産の創造、保護及び活用に関する推進計画の作成について定めるとともに、知的財産戦略本部を設置することにより、知的財産の創造、保護及び活用に関する施策を集中的かつ計画的に推進することを目的とする。
産業財産権
知的財産権の内
特許権
実用新案権
意匠権
商標権
を産業財産権といい、これらを保護する法を産業財産権法という。
密接な法として不正競争防止法がある
特許法: この法律は、発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もつて産業の発達に寄与することを目的とする。
実用新案法: この法律は、物品の形状、構造又は組合せに係る考案の保護及び利用を図ることにより、その考案を奨励し、もつて産業の発達に寄与することを目的とする。
意匠法: この法律は、意匠の保護及び利用を図ることにより、意匠の創作を奨励し、もつて産業の発達に寄与することを目的とする。
商標法: この法律は、商標を保護することにより、商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もつて産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護することを目的とする。
不正競争防止法の目的と保護対象
(目的) この法律は、事業者間の公正な競争及びこれに関する国際約束の的確な実施を確保するため、不正競争の防止及び不正競争に係る損害賠償に関する措置等を講じ、もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする
信用の保護
営業秘密の保護
商品形態の保護
技術管理体制の保護
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産業秩序の維持
特・実・意・・・・保護と利用のバランス
商標・・・・自他商品識別により、出所表示を明確にし、商品の品質を保証する。また、広告・宣伝機能によりブランド力を高める。
業務上の信用の維持・・公正な商取引(他人の信用へのただ乗り防止)、
消費者の保護
その他の知的財産保護法・関連法
著作権法の目的と保護対象
(目的) この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする。
保護対象・・著作物
著作権は支分権の束
複製権・上演権・上映権、公衆送信権、口述権、展示権、配布権、譲渡権、貸与権、二次的著作物作成権・利用権等、著作隣接権、出版権など
依拠性を侵害要件
産業財産権法は、差し止め請求に依拠性不要、損害賠償につき過失の推定
種苗法の目的と保護対象
この法律は、新品種の保護のための品種登録に関する制度、指定種苗の表示に関する規制等について定めることにより、品種の育成の振興と種苗の流通の適正化を図り、もって農林水産業の発展に寄与することを目的とする。
新品種の登録
育成者権を付与
地理的表示法:特定農林水産物等の名称の保護に関する法律
第一条この法律は、世界貿易機関を設立するマラケシュ協定附属書1Cの知的所有権の貿易関連の側面に関する協定に基づき特定農林水産物等の名称の保護に関する制度を確立することにより、特定農林水産物等の生産業者の利益の保護を図り、もって農林水産業及びその関連産業の発展に寄与し、併せて需要者の利益を保護することを目的とする。
地理的表示
農林水産物・食品等の名称であって、その名称から当該産品の産地を特定でき、産品の品質等の確立した特性が当該産地と結び付いているということを特定できるもの。
地名+産品名 例:○○干柿
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農林水産省HP
地理的表示法について
半導体集積回路の回路配置に関する法律
目的と保護対象
この法律は、半導体集積回路の回路配置の適正な利用の確保を図るための制度を創設することにより、半導体集積回路の開発を促進し、もつて国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。
保護対象・・半導体集積回路の回路配置
(創作保護)
回路配置利用権
その他の関連法
輸出入取引法
関税法
独占禁止法
電気用品安全法(PSE法)
製造物責任法
輸出入取引法
目的と保護対象
この法律は、不公正な輸出取引を防止し、並びに輸出取引及び輸入取引の秩序を確立し、もつて外国貿易の健全な発展を図ることを目的とする。
第二条 この法律において「不公正な輸出取引」とは、左に掲げるものをいう。
一 仕向国の法令により保護される工業所有権
又は著作権を侵害すべき貨物の輸出取引
二 虚偽の原産地の表示をした貨物の輸出取引
第三条・・輸出禁止 四条・・制裁:輸出停止処分
関税法の目的と輸出入の規制
関税法:この法律は、関税の確定、納付、徴収及び還付並びに貨物の輸出及び輸入についての税関手続の適正な処理を図るため必要な事項を定めるものとする。
(輸出してはならない貨物) 第六十九条の二 次に掲げる貨物は、輸出してはならない。
三 特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権、著作隣接権又は育成者権を侵害する物品
四 不正競争防止法 (平成五年法律第四十七号)第二条第一項第一号 から第三号 まで、第十号又は第十一号(定義)に掲げる行為(これらの号に掲げる不正競争の区分に応じて同法第十九条第一項第一号 から第五号 まで又は第七号 (適用除外等)に定める行為を除く。)を組成する物品
(輸入してはならない貨物) 第六十九条の十一 次に掲げる貨物は、輸入してはならない。
九 特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権、著作隣接権、回路配置利用権又は育成者権を侵害する物品
十 不正競争防止法第二条第一項第一号 から第三号 まで、第十号又は第十一号(定義)に掲げる行為(これらの号に掲げる不正競争の区分に応じて同法第十九条第一項第一号 から第五号 まで又は第七号 (適用除外等)に定める行為を除く。)を組成する物品
独占禁止法
公正取引委員会
この法律は、私的独占、不当な取引制限及び不公正な取引方法を禁止し、事業支配力の過度の集中を防止して、結合、協定等の方法による生産、販売、価格、技術等の不当な制限その他一切の事業活動の不当な拘束を排除することにより、公正且つ自由な競争を促進し、事業者の創意を発揮させ、事業活動を盛んにし、雇傭及び国民実所得の水準を高め、以て、一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進することを目的とする。
知的財産の利用に関する独占禁止法上の指針
電気用品安全法(PSE法)
この法律は、電気用品の製造、販売等を規制するとともに、電気用品の安全性の確保につき民間事業者の自主的な活動を促進することにより、電気用品による危険及び障害の発生を防止することを目的とする。
(基準適合義務等) 第八条 届出事業者は、第三条の規定による届出に係る型式(以下単に「届出に係る型式」という。)の電気用品を製造し、又は輸入する場合においては、経済産業省令で定める技術上の基準(以下「技術基準」という。)に適合するようにしなければならない。
製造物責任法
この法律は、製造物の欠陥により人の生命、身体又は財産に係る被害が生じた場合における製造業者等の損害賠償の責任について定めることにより、被害者の保護を図り、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。
(製造物責任) 第三条 製造業者等は、その製造、加工、輸入又は前条第三項第二号若しくは第三号の氏名等の表示をした製造物であって、その引き渡したものの欠陥により他人の生命、身体又は財産を侵害したときは、これによって生じた損害を賠償する責めに任ずる。ただし、その損害が当該製造物についてのみ生じたときは、この限りでない。
法体系の狭間で・・・新しい知財概念
社会の発展により、知的財産権の保護体系の枠にはいりきらない知財概念が生まれている。
肖像権
憲法13条に含まれる「個人の私生活上の一つ」であり、「何人も、その承諾なしに、みだりにその容貌、姿態を撮影されない自由」
プライバシー権(人格権の一部としての権利の側面)
パブリシティ権(肖像を提供することが対価を得る財産権の側面)
撮る側の「表現の自由」と対立
パブリシティ権
ピンクレディ事件最高裁判決
パブリシティ権が 人の肖像等の持つ顧客吸引力の排他的な利用権である以上,顧客吸引力の無断利用を侵害の中核的要素と考えるべき
肖像等の商業的利用一般をパブリシティ権の侵害とすることは適当でない。
我が国にはパブリシティ権について規定した法令が存在せず,人格権に由来する権利として認め得るものである。・・・競走馬の名称等が顧客吸引力を有するとしても,法令等の根拠もな く競走馬の所有者に排他的な使用権等を認めることは相当でないと判示している趣 旨が想起されるべきであると思う。
パブリシティ権が認められる類型
1)ブロマイド,グラビア写真のように,肖像等それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用する場合
2)いわゆるキャラクター商品のように,商品等の差別化を図る目的で肖像等を商品等に付する場合
3)肖像等を商品等の広告として使 用する場合
これらはいずれも専ら顧客吸引力を利用する目的と認めるべき典型的な類型である・・これらに準ずる程度に顧客吸引力を利用する目的が認められる場合に限定することになれば,パブリシティ権の侵害となる範囲は,かなり明確になるのではないだろうか。
物のパブリシティ権
ギャロップレーサー事件(最高裁平成16年2月13日第二小法廷判決)
競走馬の所有者が当該競走馬の名称を無断で利用したゲームソフトを製作,販売した業者に対しいわゆる物のパブリシティ権の侵害を理由として当該ゲームソフトの製作,販売等の差止請求又は不法行為に基づく損害賠償請求を求めた事件
競走馬の名称等が顧客吸引力を有するとしても,物の無体物としての面の利用の一態様である競走馬の名称等の使用につき,法令等の根拠もなく競走馬の所有者に対し排他的な使用権等を認めることは相当ではなく,また,競走馬の名称等の無断利用行為に関する不法行為の成否については,違法とされる行為の範囲,態様等が法令等により明確になっている とはいえない現時点において,これを肯定することはできないものというべきであ る。したがって,本件において,差止め又は不法行為の成立を肯定することはできない。
最強の知的財産は何か?
ブランド
ブランドとは、独自性を強調し、競合他社と区別させることを意図して、複数の商品やサービスを統一して象徴させるもの
「ある売り手の財やサービスを他の売り手のそれと異なると認識するための名前・用語・デザイン・シンボル、およびその他の特徴」米国マーケティング協会(AMA)の規定
ブランドによる参入障壁
ブランドは、消費者に一定の価値観(ブランド・イメージ)を植え付ける。それが参入障壁となるため、ブランドは、先発したものの方が、後発のブランドよりも優位性を持つ。後発ブランドが、先発ブランドに対抗して参入するには、何が優れているかよりも、何らかの「新しさ」を主張することが必要とされる。
ブランド=商標ではない・・・もっと広い概念
ブランドの種類
コーポレート・ブランド(商標法・商法・会社法・意匠法・特許法・不競法・著作権法)
技術ブランド(特許法・商標法)
デザイン・ブランド(意匠法・商標法)
ファション・ブランド(意匠法・商標法)
地域ブランド(商標法・地理的表示法)
ブランドの機能
想起機能(ブランド・イメージを想起させる)
メッセージ伝達機能(ブランドに付与された特定の概念化されたメッセージを伝える)
出所表示機能
品質保証機能
広告・宣伝機能
グレード表示機能
属性(ファミリー・グループ・クラス)表示機能
ブランド・マトリックス
知的財産権法を学ぶ上で必須の法律知識