進化倫理学入門
2冊ある
An Introduction to Evolutionary Ethics
著者: スコット・ジェイムズ
道徳哲学者
『進化倫理学入門』
光文社新書
著者: 内藤 淳
倫理学や法哲学で議論が錯綜している問題に、「人間行動進化学」という角度から光を当てる。 目次
序章 「嘘をついてはいけない」と子どもに教える本当の理由
第1章 人は利益で動くようにできている
第2章 「利己的」な愛
第3章 友情と良心の損得
第4章 「善」は得、「悪」は損
第5章 「私」の利益になる「正しい社会」
終章 「自分のため」の道徳
以下、新書の方の読書メモ
第1章
要素
資源獲得
生存
繁殖
資源は多様
例: 地位、評判、名誉
理性が固有説
そもそもヒトは理性的に行動しない。感情が先。理性は補助。
快・不快が行動を生む
理性で推論や分析や計算はする
快を志向し不快を回避する原則
快・不快は利益を基準に生じる
進化によって形作られた
基本的には利益をもたらす
感情反応パターン
つまり利己的な行動
つまり本来の機能は利益を目的にしているwint.icon 例外
これまでの環境や学習によっては、不利益をもたらす感情が生じることもあり得る。
→ 不利益行動の発生
まとめ
(以下第2章)
血縁者
適応
e.g. 動物にも見られる
配偶者
繁殖資源が目的
獲得、維持
性的な結びつき
ヒトは特に子育て期間が長い
配偶関係維持にもコストを割く
(以下第3章)
友人、仲間
血縁でない他人とも協力できる
好悪の感情
不利益の回避
ここでも無意識ながらに利得が計算されてる
見知らぬ他人
返礼は期待できないが…?
他にも共同体へも
by アレグザンダー
e.g. 評判の利益
広まる
合理的な悪人は善人の振る舞いが最適wint.icon
互恵関係の前提
悪評は不利益
先行投資
無限定な行動を示す必要がある
さらには無条件に
第2章
利己的な愛
→ 利他行動の4種別
愛情の進化
利己的な実利のため
主観的な理解と一致するとは限らない
むしろ一致しない方が適応的な可能性もある。つまり自分を騙す。wint.icon
感情は利益行動誘発装置。愛情⊂感情も然り。
第3章
4種別の続き
要件
仲間の記憶力
集団生活、社会生活
返礼がないとやめる
好悪
好意 → 関係促進
嫌悪 → 関係抑制
強化の相互作用
好意⇔利他行為
嫌悪⇔不利益
→ 互恵関係の選別
関係性へのバッファとして機能するwint.icon
返礼性を前提とした有望な投資先への投資へのインセンティブ
本人の欠点に依る不遇には同情が発生しない
利他行動の失敗に対するリカバリーへのインセンティブをもたらす
関係回復など
憎しみ、復讐心 = 報復心
不利益への反撃に対するインセンティブ
他人への利他行動
→広告効果
評判につながらないなら?
注意:選択的行動をすることになる
→ 認識しきれない
露呈すると、むしろ悪い広告効果になる
→ 原則的な行動にするべき
都度計算するのは不可能なため
無意識化
思いやり→利他行動による快
利己性や計算を意識せずに済む
利他性があると思い込める
より自然に行動できる
良心 → 評判の利益
善行には利益、悪行には損を
メモ
スペクトラム: 血縁淘汰、配偶関係、互恵関係、間接互恵
第4章
セオリー集
→ 対立利益があると別
これは他でも同じ話
真の対立: 短期的利益 vs 長期的利益
短期に流れがち
→ 強化が必要
あるいは行動指針wint.icon
つまり原則論
規範は相互利益が前提
利益にならないなら命じない
つまり利益の一致
個人規範 → 社会的規範
浮気
ここでも自己利益の対立
長期利益: 配偶関係の安定
悪行
→ 互恵に反する → 不利益
→ 報復 → 不利益
→ 悪評 → 不利益
反-互恵的 ← 悪行
互恵的 ← 善行
⊂ 悪行
つまり互恵関係を失なう
→ べからず
他の生物とは互恵関係にならないのでセーフ
人を特別視する合理的理由がある
(対等な)エージェントではない?wint.icon
悪事の隠蔽コスト
コスパが悪いだろう
疑われるリスクすら不利益につながる
道徳のベースは(結局は)利害損得
もはや曖昧さはない
道徳では足りないケース
補償しきれない
被害が拡大する
→ 予防的措置が必要
悪事の損失を明示的に拡大させて抑止する
法は道徳を補完する
裁判所が執行を強制する
e.g. 強制履行
不道徳な契約も予防する
道徳教育
親に教育のモチベーションがある
道徳教育 → 適応度向上 → 子供の利益 → 自分の利益 それでも教育に意味はある
第5章
問題
功利主義に似た設定wint.icon
応用問題
「社会それ自体の善し悪しを利益の概念で論じられるか?」
主に社会の基本構造とその条件を論じる
条件の候補
価値観:自由、平等
→ これらを重視する根拠は?
合意主義
相互に尊重し、調停するという発想
→ 妥協不可能な価値観はどうする?
言うならば寛容が強制される
→ 少数の犠牲を許容するのか?
個人への視点が必要だろう
本書の提案
前提: 個々人の利益
仮定:
互恵(当然、利己性も)がある
長期的な利益を満たす
利益獲得機会の配分
anti. 独占は?
→ これも短期利益にすぎない
配分なしで偏るのも不利益が出る
ヒトの社会性
社会を作ること = 集団生活すること
普遍的な性質
メリット
cf. 捕食者回避
ここでは特に他のヒト集団
→ 対抗のために集団規模拡大
つまり、集団的闘争での有利wint.icon
現実には、"力の不均衡"
e.g. 格差、搾取
→ 支配者階層の長期的な不利益
⇆ 事前に配分する
つまり、事前の配分があるのが正しい社会
配分の実施、様態
e.g. 人治、身分、…
対象:職業、婚姻、…
奴隷制は反-配分なので、不正。
配分原理
e.g. 権利保証
自由権 → 形式的名目的保証
社会権 → 実質的保証、是正
cf. 圧政 → 長期的不利益
例によって
→ 正しい配分体制
社会的正義も利害損得に拠る
終章
ふりかえり
主観説 vs 客観説
客観説
table:matching
利益 不利益
善 悪
正 不正
正義 悪徳
生(セイ)の指針
基本技
タネ本、参考文献、著者