なめらかな社会とその敵
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キーワード:PICSY, 分人民主主義, 伝播委任投票システム, CyberLang
関連 Web3, 暗号通貨, スマートコントラクト
興味深いところ
ヴィタリックやウッドに代表されるイーサリアム〔Ethereum〕やWeb3の活動家は,主に政治経済学や社会的選択理論的な知見から洞察をしており,政治システム固有の問題を度外視し,多くの問題が経済学的なアプローチで解決可能であるという幻想を抱いているようにみえる.ここでいう経済学的なアプローチとは,社会制度の優劣を効用の最適化の問題に還元する考え方をいう.ここでいう政治システム固有の問題とは,本書の第V部で提示したメンバーシップの問題であり,カール・シュミットが定義した「敵と味方を区別することとしての政治」の概念,そこから導かれる軍事および暴力の管理である.こうした問題は,効率性の問題には還元できない.スマートコントラクトによる暴力の管理についての研究を,私はいまだ知らない.しかしながら,本格的に社会でスマートコントラクトを実現するにおいては,契約の自動執行を可能にするための強制力を伴うための暴力の管理,および軍事力の管理,あるいは革命権の問題について論じないわけにはいかなくなるであろう.現時点では,そういったもっとも難しい問題を回避して,現状の社会制度の効率性の問題に焦点があたっているように思える.
鈴木健『なめらかな社会とその敵』p.405, 2022, 筑摩書房