禅と暮らす一週間。体験記 四日目 2024年秋

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龍雲寺 涅槃堂

はじめに

お寺での一週間体験記の四日目をお届けします。まだ過去の記事を読んでいない方は、そちらも併せてご覧ください。

生活に慣れてきて

四日目ともなると朝6時前の起床にも慣れ、日課をスムーズにこなせるようになってきました。でも、一つ一つの行動を丁寧にしようと心がけています。床を掃く時も、心の塵を払うような気持ちで隅々まで掃除をしました。

いつものように朝のお勤めが終わり、自由時間になると、チェックアウトする人たちが帰り支度を始めていました。お茶を汲みに広間に行くと、私と同じように一週間を過ごしていた方が大きな荷物を持って出発の時間を待っていました。この方とは二日目の水引体験をきっかけにして仲良くなったのですが、もうお別れの時が来てしまいました。四日目になると、私が来た時にいた人はほとんどいなくなり、新しい人ばかりになっていて、少し寂しく感じました。

帰られる方は京都の綾部から来られた方で、介護の仕事をしているそうです。仕事のストレスや、これから始まりそうな親の介護のことで悩んでいたとのこと。でも、ここでの一週間で「介護以外の仕事にも挑戦してみたい」と考えられるようになったと話してくれました。お別れの時の表情は明るく、前向きな気持ちが伝わってきました。自分も三日後には同じように帰る時が来ますが、こんな風に前を向いて帰りたいなと思いました。

法話について

この日の法話は、人のプライドについてでした。境内には、ダウン症の天才書家・金澤翔子さんの作品がたくさん飾られています。世界一大きい般若心経を書いたことでも知られています。

住職は翔子さんの家族と親しく、昔のエピソードを話してくれました。翔子さんと住職の子どもが遊んでいた時、小さな喧嘩で子どもが泣いてしまったそうです。その時、翔子さんは「素直になーれ、素直になーれ」と言いながら、子どもの背中をさすって一緒に泣いたとのこと。翔子さんはプライドがなく、意味もわからないので、なぜ泣いているのか分からなかったそうです。結局、泣いても問題は解決できません。その場にいるみんなが悲しい気持ちになります。素直にお互いが「ごめんなさい」と謝ってまた一緒に遊べば絶対に楽しいってわかっているのに、それができないのは、プライドが邪魔をするからです。大人になるとより頑固になって、自分の非を認めず、謝ったり感謝することができなくなります。

今の時代は、プライドが高くても、お金とコンビニがあれば一人で生きていけます。老後の準備も、子どもに頭を下げなくてもできる時代。でも、お寺に自身の供養の相談に来る人の多くは、家族とちゃんと話し合っていないそうです。住職は必ず「家族と相談してから来てください」と伝えるとのこと。どうせ子供は自分の世話なんてしてくれないだろうと思い込み、話もせず自分のプライドを守っていてはいけない。どんな相手にも頭を下げられる人に、プライドを捨てて素直になれる人になろう―そんなメッセージが心に残りました。

写経体験

この日は写経を体験しました。般若心経を筆ペンで書いていくのですが、補助線はあっても慣れない漢字ばかりです。そんな時、住職が「どれだけ上手く書こうとしても字は上手くなりません。むしろ考えれば考えるほど字は曲がり、綺麗に書けなくなってしまいます。写経は一回きり、今書けるものしか書けません。一文字一文字に集中して書いて、自身で納得してください」と言ってくれたおかげで、筆が進むようになりました。

最終的に１時間ほどかかりましたが、集中して丁寧に書き切ることができました。初めてだったので腕が疲れましたが、自分なりに納得のいく出来栄えでした。

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不思議な坐禅体験

坐禅中は、いろんな妄想や記憶が浮かんできます。そんな時は「数息観」という方法で心を落ち着かせます。長く呼吸を行い、数を数えて10まで行ったら、また1から数え直すのを繰り返すのです。繰り返しているうちに何を数えているのかよくわからなくなってくるらしいのですが、まだその境地には辿り着けていません。もう少し練習が必要そうです。

この日の坐禅では、始まるとすぐに視界が揺れ始め、頭がクラクラしてきました。気持ち自体は悪くないのに、フラフラする不思議な感覚。しばらくしてその感覚は消え、視界は安定し始め、むしろいつもよりも集中できました。20分の坐禅があっという間に感じられたほどです。今でもあの感覚がなんだったのか、よくわかりません。自分の中にある魂がフッと外に飛び出そうとするような、変な感覚でした。

振り返り

プライドが高いと、知らないことを「知らない」と言えなかったり、自分や相手にも素直になれないものです。いつも反省することがたくさんあります。ただ、すぐには直せなくても、日々の小さな積み重ねで少しずつでも改善していくことができるものです。もっと素直な人になりたい―そう考えた一日でした。

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