MELL-Being
MELL-Being(メルビーイング)
Music Empowerment and Liberal Lively Being
音楽エンパワメントと自由でライブリーな在り方
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メルビーイングは、王子のシェアハウス「REGIE」(医療福祉系)及び「スキマデ(旧たまごま)」(社会文化系)で開催されるNTMラボ主催の音楽ライブ付き勉強会。シェアハウスは手狭なため、10名程度までのイベントですが、そのぶん少人数だからこその深い議論が各回のテーマに合わせて交わされます。なお、イベント名のMELL-BeingはWELL-Being(ウェルビーイング)のWをMusicやMachizukuriのM(NTMのM)に代替したものです。また、MELL-Beingは、Music Empowerment and Liberal Lively Beingすなわち「音楽エンパワメントと自由で生き生きとした在り方」を表現しています。(2021.8.19~) 1. はじめに
1. MELL-Beingとは MELL-Beingは、勉強会と音楽ライブの共催イベントで、社会を(ゆるく)変えていこうとしている人びとの交流と連携を目指しています。広い意味では各分野の知見とアートによるソーシャルイノベーションの実践の試みです。
2. アートとケア MELL-Beingは、もともと医療福祉系シェアハウスREGIEのアンバサダーイベントとしてはじまりました。音楽とケアは芸術文化と医療福祉という異なる分野ですが、誰かを癒すという点においては共通しています。音楽は趣味、医療福祉は切実、という区別もあります。しかし、近年のケア業界は、趣味縁に関わりかつ病の根源的な要因である社会関係まで踏み込むべく、病院から出てまちに進出してきました。たとえば、医師の西智弘さんは病の原因である社会的孤立を解消・回避するための『社会的処方』という本を2020年に出版しています。予防医療的にも介護予防的にも、社会的孤立の解消・回避には、ひとりひとりの趣味嗜好にマッチした地域のコミュニティやネットワークが必要であり、特に私が提供できるのは、音楽的な繋がりです。
3. 音楽を介した繋がり 音楽は人びとを精神的に癒すだけでなく、ライブやコンサートに参加した人びとをアーティストとファン、ファン同士という共通項によって繋げることができます。音楽は、聴き手や奏者という役割や位置を人に与えることで、社会への参加を容易にし、社会的孤立を防ぐことができるのです。この繋がりは音楽がもたらす、もうひとつの癒しといえます。つまり、音楽はそれじたい目的となる芸術文化的な価値であるだけでなく、会食と同様に、人と人が自然に繋がることができるツールとしても価値が高いのです。
4. アーティストにとって またもちろん、近年、ファンコミュニティはアーティスト側から見ても活動の支えになるために魅力的です。アーティストの側からみれば、やはり自分が求められていることを実感しなければ、自信をもって活動することができません。医療福祉関係者、シェアハウス関係者、地域活動のアクターといった人びとがファンコミュニティとなってくれれば、大変心強いものです。またファンまでいかなくても、アーティストを知ってもらう機会は、特に駆け出しのアーティストにとって大きな価値があります。
5. MELL-Beingの立ち位置 MELL-Beingは社会的孤立にある人びとに直接リーチするものではないですが、そういった人びとを支えるためのコミュニティとして、医療福祉関係者と音楽関係者が繋がっておくことが重要と私は考えています。医療福祉関係者にとって音楽は美術、演劇、映画、読書、茶道、華道、囲碁将棋、ゲーム、スポーツ、旅行といった趣味コンテンツの一つであり、それぞれに趣味縁があります。しかし音楽こそが、最もインパクトがあり、誰でも楽しめ、それゆえいろいろな人と仲良くなれて孤立を防ぐジャンルではないかと私自身は考えています。また近年のMELL-Beingでは、医療福祉を基軸としながらも、環境系やまちづくり、ITなどソーシャルイノベーションに関係する分野の方にお話いただいたり、オーディエンスとして参加いただいたりしています。
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2. Concept
▼コンセプト
1. 兼業アーティストと若い医療福祉関係者(ケアワーカー)・地域アクターの交流
2. 音楽はコミュニケーション形態の1つ、他者を知り理解するきっかけの1つ
3. 音楽が演者と聴き手をともに力づけ、勇気づけ、自由で生き生きとしたライフを演出
1. 兼業アーティストと若い医療福祉関係者の交流
・そのため演者には自己紹介的なお話もしてもらう
・つまり音楽以外の人間性・専門・趣味も知ってもらう
・これはアーティストの全体性を知ってもらうことが互いのエンパワメント(Empowerment)になるため
2. 音楽はコミュニケーション形態の1つ、他者を知り理解するきっかけの1つにすぎない
・重要なのは重層的な人間の全体性・固有性を反映したコミュニケーションの総体
・生演奏はCDやレコードのような音楽を聴くための単なる手段ではなく、人と人のコミュニケーションにおける一形式
・このことを忘れると、もっと演奏の上手い人に置き換えればいいという機能的代替性が前面に出てディスパワメントな場に
・生演奏は奏者の人格に触れ、精神と肉体が反映する表現であり、一回切りのアウラ、固有性そのものであり、代替できない
・つまり生演奏は、打ち込みやレコードも含めた音楽のなかにあって、特別に身体的な固有性、かけがえのなさをもつ
3. 音楽が演者と聴き手をともに力づけ、勇気づけ、自由で生き生きとしたライフを演出する
・通常の癒しの音楽ではなく、力づけ、勇気づけるエンパワメントがコンセプト
・Liberal LifeないしLiberal Liveは、自由で自律的(自己決定的)な人生、生き生きとした人生という理想
・自由な演奏は、ストリートピアノの理念とも通底する
※ 演者には自己紹介的なお話もしてもらい、音楽以外の人間性・専門・趣味にもスポットをあてる
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3. Preface
1. 交流と全体性 この企画は、基本的に若い兼業アーティストと若い医療福祉関係者の交流を狙いとしています。兼業アーティストは、音大生やプロ・ミュージシャンなど音楽のみを専門とするアーティストではなく、他に仕事や学業がありつつ、音楽活動をする人のことを指します。兼業アーティストであるからこそ、音楽以外の《関わりしろ》があるので、医療福祉関係者にとっても、交流しやすくなると思います。兼業アーティストの全体性を知ることは、《多様性》や《人間の全体性》への理解を促進するものです。ともすれば抽象性の高い音楽、特にインスト音楽は(数学などと同様に)他の分野と関係なく独立に存在できてしまい、社会や世界との関係性が不明なものになりがちです。それを回避するためには、言葉が、つまり会話や対話が必要になると私自身は思っています。それはアーティストが自身の感覚や構えから《世界を語る》ことであり、音楽だけでなく他の分野についても語ることを含みます。そしてそれだけでなく、問いかけに応答するという《双方向》のやり取りが必要ということです。( イベントを主催するNTMのNarativeにもこんな意味合いが込められています)
2. 理解と意味生成 上記の「《多様性》や《人間の全体性》への理解」というのは、精神におけるポジティブで不可逆的な変容であり、簡単にいえば成長ということです。《理解》は、より人間や社会的世界が分かるようになるということで、一過的な楽しみを超えていく重要な概念であり、その人やコミュニティにとっての《新しい意味》の獲得を指すと考えられます。簡単にいえば、《学び》ということですが、この《意味生成》は、以下にみる、癒し、エンパワメント、自由、ライブ(生き生きとすること、生命的であること)のすべてに関わります。
3. 高度な感情の共通体験としての癒し 基本的に、音楽は趣味、医療福祉は切実、というように異なる分野ですが、音楽そのものが医療福祉と共通する点もあります。それは人びとを癒すということです。これは現代アート(現代美術)が人びとにインパクトを与え、考えさせることを主眼とするのとは対照的です。つまり、音楽は、認知的というよりは情操的であり、共に場をつくり、高度な感情を共通体験することに主眼があります。この高度な感情の共通体験こそが《癒し》です。音楽は抽象的ゆえに、その奏者の目に見えない精神そのものの表現でもあると思います。オーディエンスは、奏者が表現する精神そのものに触れることで、いわば世俗的な世界から精神的な世界に回帰することができ、癒しを得ます。それと同時に、奏者自身も演奏を通して、自らの精神を表現することによって自分自身の精神に触れることができ、それが自己確認すなわちアイデンティティの再確認・再発見にもなり、癒しを得ます。
4. エンパワメントとレジリエンス ただ、私が考えている癒しは傷を治癒するというマイナスをゼロにするものではなく、マイナスをプラスにするものです。もっとポジティブな、《レジリエント》(超回復的)なものです。何か行動したり、困難や障害を超えていこうとすることを《勇気づける》ものといってもいいでしょう。そこで癒しというよりは、《エンパワメント》という言葉をイベント・タイトルに使いました。エンパワメントはポジティブで《不可逆な相互変容》を意味するものです(不可逆性は上記の《理解》と同根)。ミュージック・エンパワメント(Music Empowerment )にはこのコンセプトが込められています。なお、エンパワメントとレジリエンスは、社会面を含めた広義の健康概念である、ウェルビーイング(Well- Being)やウェルネス(Wellness)の基本的な方向性といえます*。
心身ともに健康で幸せな「ウェルビーイング」を前向きに目指して、キラキラ輝いている状態を「ウェルネス」といいます。
「ウェルビーイング」というゴールを目指すプロセスを「ウェルネス」と呼ぶのですね。
5. より自由で生き生きとした共存在をめざして さらにポジティブな概念として、リベラル・ライブ・ビーイング(Liberal Live Being)は、自由なライブ的存在という難解な言葉になっていますが、要するに、上記のポジティブの具体的な方向性として、より自由で生き生きとした共存在をめざすということです*。人が《元気》になり、生き生きとするのは、依存的でなく自律的な人びとがコミュニケーションをする場、新しい意味が生まれ、意味充実する場においてだと思います。人間の持続的な幸福であるWell-Beingの内実は、このような生き生きとしたコミュニケーションが継続され、《発展》していくことだと考えています。もちろんライブは、音楽ライブであり、また、医療福祉的なライフ(生命・人生)を連想させるものであり、ライブリー(生き生きとした生命的なもの)という意味を掛け合わせてもいます。
*Liberal Live Beingは、イヴァン・イリイチの《自律共生》を意味する、コンヴィヴィアリティ(conviviality)を意識しています。 コンヴィヴィアリティ(conviviality):
<辞書的意味>宴会、陽気さ、上機嫌、共生
<学術的意味>自発的な個人が、人間的な創造性により、相互依存の中で構築される個的な自由。「自立共生」、「自律共働」。
6. 様々な音楽と人間性への接触からの意味獲得 このようなコミュニケーションの一形態として、音楽、会話、そして食事は、《五感》と《頭脳》をフルに用いるものであり、癒しであり不可逆的なエンパワメントなのだと思います。音楽・会話・食事がもたらす饗宴が、一過的な楽しみを超えて、互いの存在を発展させる契機になることを企図します。簡単にいえば、楽しみの場であるとともに成長の場であるということです。単なる楽しみだけでは続ける意味を欠きます。継続的にやるからこそ、積みあがるものがあり、めざすべき方向性があります。互いに多くの音楽を知り、それを奏でる者の人間的な全体性を知り理解していくことが、豊かな人間性やWell-Beingを育むことは論を待たないでしょう。私たちがより自由で自律的な存在であるためには、多様な人びとと音楽や芸術に触れ、理解していくこと、意味を獲得していくことが何よりのことなのです。そしてもちろんこの活動は、コミュニティの活性化を通じて人びとの孤独・孤立・病苦を回避する《予防医療》の側面があることを付け加えておきます。
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4. イベントタイトル一覧
MELL-Being vol.01 Piano Instrumental LIVE(2021.8.19)出演:さとゆぅ・高梨大
MELL-Being vol.02 箏 LIVE(2021.9.29)出演:流音
MELL-Being vol.03 まちづくりアクター Talk LIVE(2021.10.6)出演:田中類
MELL-Being vol.04 まちづくりアクター Talk & Music LIVE(2021.11.24)出演:織戸龍也・WelCaMe・Daichi
MELL-Being vol.05 マルチタレント Talk & Music LIVE(2021.12.9)出演:Ebosi
MELL-Being vol.06 アドラー心理学 & Piano LIVE(2022.4.29)出演:鈴木昇平・きゃしぃ
MELL-Being vol.07 LGBTQ銭湯 & Piano Vocal LIVE(2022.8.6)出演:Saito・Hirono・Ikuto
MELL-Being vol.08 トネリライナーノーツ & Jazz Piano LIVE(2022.9.29)出演:大島俊映・中村晃一
MELL-Being vol.09 統一地方選 Talk LIVE(2023.3.18)出演:スクエアゼットほか
MELL-Being vol.10 WELL-Being Talk & Piano LIVE(2023.5.14)出演:mayukoほか
※ MELL-Beingは東京北区王子「REGIE」及び「たまごま」という2つのシェアハウスが連携するイベントです(佐藤ハイム KATTE GUCHI Oji)──スクエアゼット(2023.6.23) ────