自己言及的な文の一覧
#一覧 #自己言及 #パラドックス
あくまでも自然言語的に端的に言える文を対象とする.
その他の場合,例えばRusselのパラドックスなどは当該記事を参照.
この文はウソだ!
嘘つき文
嘘つきのパラドックス
状況整理
この世界の文は,本当かウソのどちらかであり,どちらでもある/どちらでもないといった状況は認めないとする.
「この文」とするとややこしいので,$ Sとする.
$ Sが実際に本当だったとする.
$ Sは「$ Sはウソだ!」と意味していることになるので,$ Sはウソである.
ところが,本当でありかつウソでもあるといった状況は認められないので,破綻する.
$ Sは実際にはウソだったとする.
すると「$ Sはウソだ!」はウソで,$ Sは「$ Sは本当だ!」と意味していることになるので,$ Sは本当である.
ところが,やはりこの状況は認められないので,破綻する.
よって,$ Sはどちらとも出来ないのである.
この文は本当だ!
ホントつき文
矢田部俊介による.ホントつきのパラドックスなどを参照.
状況整理
嘘つき文の状況を引き継ぐ.
「この文」は$ S'とする.
$ S'が実際に本当だったとする.
$ S'は「$ S'は本当だ!」と意味していることになるので,$ S'は本当である.
実際と意味内容が一致しているので,別に破綻しない.
$ S'が実際にはウソだったとする.
すると「$ S'は本当だ!」はウソで,$ S'は「$ S'はウソだ!」と意味していることになるので,$ S'はウソである.
実際と意味内容が一致しているので,こちらでも破綻しない.
よって,$ S'はどちらとも出来るのである.
この文は証明できない!
Gödel文$ G
Kurt Gödelによる.
非可証性(Unprovablility)に基づいた文.
Gödelの不動点補題などを用いて構成可能.
実際にはこういう形式をしている
$ T \vdash G \leftrightarrow \lnot\mathrm{Pr}_T(\ulcorner G \urcorner)
自分自身の非可証性が証明可能である.
Gödelの不完全性定理より,ある程度の条件を満たしたω無矛盾な体系には必ず存在し,
$ T \nvdash Gであり,$ T \nvdash \lnot Gでもある.
Rosser文$ R
大雑把には
$ Rは$ \mathcal{P}_Rという証明をもって証明可能で,かつ,$ \mathcal{P}_RよりGödel数の小さいいかなる証明によっても$ \lnot Rが証明されない.
というRosser証明可能性述語に基づく文
Gödel-Rosserの第1不完全性定理より,ある程度の条件を満たした無矛盾な体系には必ず存在し,
$ T \nvdash Rであり,$ T \nvdash \lnot Rでもある.
ただし,この可証性述語ではGödelの第2不完全性定理は成り立たなくなる.
Kreiselの注意を参照.
この文は証明できる!
Henkin文$ H
Leon Henkinによる.
実際にはこういう形式をしている
$ T \vdash H \leftrightarrow \mathrm{Pr}_T(\ulcorner H \urcorner)
自分自身の可証性が証明可能である.
Martin H. Löbがこの文を研究した結果,Löbの定理が発見された.
M. H. Löb, "Solution of a problem of Leon Henkin"参照.
この文は反証できる!
Jeroslow文$ J
R. G. Jeroslowによる.
新井敏康『数学基礎論』増補版のp137に用例あり.
反証性(Refutability)に基づく文.
$ T \vdash J \leftrightarrow \mathrm{Pr}_T(\ulcorner \lnot J \urcorner)
非可証性と反証性が明確に区別されるような(あるいは反証性が一級市民であるような)体系で検証される.
証明可能性論理の亜種?
非可証性と反証性について
参照?
R. G. Jeroslow; "Redundancies in the Hilbert–Bernays Derivability Conditions for Gödel's Second Incompleteness Theorem"
Lev D. Beklemishev, D. Shamkanov, "Some abstract versions of Gödel's second incompleteness theorem based on non-classical logics"
この文が正しいと仮定すると…
Kreisel文
この文は13文字以下だ!
Berryのパラドックス
題は間違っている.この文は13文字以下だ!は12文字である.
「あるオブジェクトを記述するのに最低でも何文字必要なのか?」といった情報量を測る指標の一つにKolmogorov複雑度がある.
Kolmogorov複雑度に基づいて形式化を行うと
正しいのに証明できない文がある,という意味で不完全となるような文を取ることが出来る.
大雑把には,
$ L文字以下では記述出来ない文は確実に存在する,
しかし,その事実は絶対に確かめることは出来ないような,限界の$ Lが存在することが明らかになる.
Chaitinの不完全性定理を参照.
#TODO
Jeroslow文的な状況でこの文は反証できない!文はどうなるのだろうか?
無いので,これを否定Jeroslow文と命名する.
$ T \vdash N \leftrightarrow \lnot \mathrm{Pr}_T(\ulcorner \lnot N \urcorner)
Parikh文
Noson S. Yanofsky, "A Universal Approach to Self-Referential Paradoxes, Incompleteness and Fixed Points"に書かれているが,実際何を言っている文なのかよく調べていない