Geach論理
参考文献
Peter Geachによるものらしいがなぜそう呼ぶのかはあまりわからない
https://plato.stanford.edu/entries/logic-justification/#GeaLog
教えてもらった
Geach公理はE. J. Lemmon, D A. Scott; "An introduction to modal logic: the Lemmon notes"で導入されたらしく,E. J. LemmonとDana. A. Scottに由来してLemmon-Scott Axiomと呼ばれることもあるらしい
鹿島 亮; "コンピュータサイエンスにおける様相論理"
定理番号はこれに寄る
なお文献ではGeach論理式と呼んでいるが,おれ個人の信条でGeach公理と呼んで適当に変えている
その他はP.Blackburn, M. de Rijke, Y.Venema; "Modal Logic"の3章などに書いてあるらしい
モチベーション
様相論理のいくつかの公理の一般化とも考えられる.
Def. Geach公理
$ 0 \leq k,l,m,nとする.以下の$ \mathsf{G}_{k,l,m,n}はGeach公理という.
$ \mathsf{G}_{k,l,m,n} \equiv \Diamond^{k}\Box^{l} \Phi \to \Box^{m}\Diamond^{n}\Phiとする.
例
$ \mathsf{B} \equiv \mathsf{G}_{0,0,1,1} \equiv \Phi \to \Box\Diamond\Phi
$ \mathsf{T} \equiv \mathsf{G}_{0,1,0,0} \equiv \Box\Phi \to \Phi
$ \mathsf{D} \equiv \mathsf{G}_{0,1,0,1} \equiv \Box\Phi \to \Diamond\Phi
$ \mathsf{4} \equiv \mathsf{G}_{0,1,2,0} \equiv \Box\Phi \to \Box\Box\Phi
$ \mathsf{5} \equiv \mathsf{G}_{1,0,1,1} \equiv \Diamond\Phi \to \Box\Diamond\Phi
Def. 状態遷移の合流性
Kripkeフレーム$ \mathcal{F} \coloneqq \lang W,R \rangとする.
$ Rの$ (k,l,m,n)合流性を以下のように定義する.
$ \forall_{s,x,y}\left\lbrack (s R^{k} x ~\&~ s R^m y) \implies \exists_t(x R^{l} t ~\&~ y R^{n} t) \right\rbrack
Thm 2.10.5
次は同値
1. $ Rが$ (k,l,m,n)合流性を満たす
2. 任意の付値関数$ f, $ w \in W,任意の様相論理式$ \varphiで$ \lang W,R, f\rang , w \models \Diamond^{k}\Box^{l} \varphi \to \Box^{m}\Diamond^{n}\varphi
すなわち,$ \lang W,R, f\rang, w \models \mathsf{G}_{k,l,m,n}\lbrack \Phi\mapsto\varphi\rbrack
Thm 2.10.8: Geach論理の健全性定理 / Geach論理の完全性定理
様相論理の公理Kを含んだ命題論理のHilbert流演繹体系$ \mathcal{H}_\mathsf{K}
$ \mathcal{H}_\mathsf{K}にいくつかのGeach公理を追加した証明体系を$ \mathcal{H}_\mathsf{G}とする.
このとき,次は同値
1. $ \vdash_{\mathcal{H}_\mathsf{G}} \varphi
2. 任意の$ f,w \in Wで$ \lang W,R,f \rang, w \models \varphi.
ただし$ Rは$ \mathcal{H}_\mathsf{G}が含む全てのGeach公理$ \mathsf{G}_{k_i,l_i,m_i,n_i}に対応する$ (k_i,l_i,m_i,n_i)合流性を満たしているとする.(Thm2.10.5の意味で)
すなわち$ \mathcal{F} \coloneqq \lang W, R\rangで$ \varphiは恒真
注意当然ながらこれは正規様相論理の完全性定理と同様のことを主張している.
証明方法のあらまし
1 → 2,健全性定理について
条件を満たす任意のフレームでŁukasiewiczの3公理図式,様相論理の公理K,Geach公理が恒真で,モーダス・ポネンス,ネセシテーションが恒真性を保つことを証明すればよい.
2 → 1,完全性定理について
正規様相論理と同じ様に極大無矛盾集合でカノニカルモデルを構成して同様に.
その他
Geach公理で特徴づけられる論理の有限モデル性(有限フレーム性)は一般には示せない.有限モデル性から完全性を示す方向はこの点で失敗する.
$ \sf KBT,S4,S5などは正規様相論理の決定可能性などを参照.
近況の成果はZ. Lin, M. Minghui; "The Finite Model Property of Quasi-transitive Modal Logic"などを参考