第一原理
アリストテレスは第一原理について1こう書いている: 第一原理、原因、要素が存在するあらゆる体系的探究(メソドス)において、知識と科学はこれらの知識を得ることから生じる。
Aristotle, writing1 on first principles, said: In every systematic inquiry (methodos) where there are first principles, or causes, or elements, knowledge and science result from acquiring knowledge of these; for we think we know something just in case we acquire knowledge of the primary causes, the primary first principles, all the way to the elements.
その後、彼はこの考えを知識と結びつけ、第一原理を「物事が知られる最初の基礎」と定義した
Later he connected the idea to knowledge, defining first principles as “the first basis from which a thing is known.”
第一原理による推論は、仮定や慣習という不純物を取り除く。残るのは本質である。本質を知ることで、類推による推論がどこに迷いをもたらすかを知ることができるからだ。 この違いを考えるもう一つの方法は、もう一人の友人、ティム・アーバンから聞いた。彼は、これはコックとシェフの違いのようなものだと言う3。これらの言葉はしばしば同じ意味で使われるが、重要なニュアンスがある。シェフは先駆者であり、レシピを考案する人だ。彼は原材料とその組み合わせ方を知っている。料理人は、類推してレシピを使う。すでに作られているものを、わずかなバリエーションで作り上げる。 第一原理による推論と類推による推論の違いは、シェフとコックの違いのようなものだ。料理人はレシピを失ったらおしまいだ。一方、シェフはレシピを使わないほど基本的なレベルで味のプロファイルと組み合わせを理解している。彼はノウハウとは対照的に本当の知識を持っている。
マスクについて最も興味深いのは、彼が何を考えているかではなく、どう考えているかということだ:
人々の思考プロセスは、慣習や過去の経験からの類推に縛られすぎていると思う。第一原理に基づいて何かを考えようとする人はめったにいない。彼らは、"いつもそうしてきたから、そうしよう "と言う。あるいは、「誰もやったことがないのだから、良くないに違いない」といってやらない。しかし、それは馬鹿げた考え方だ。物理学では「第一原理から」という言葉が使われる。基礎に目を向け、そこから推論を組み立て、うまくいく結論が出るか、あるいはうまくいかない結論が出るかを見るのです
類推ではなく、第一原理から推論することが重要だと思う。つまり、私たちの通常の生活様式は、類推によって推論するということだ。他の人がやっていることに似ているから、あるいは他の人がやっていることに似ているから......。そしてそれは......第一原理からではなく、類推によって推論する方が精神的に楽なんだ。第一原理というのは物理学の世界の見方みたいなもので、それが本当に意味するのは、物事を最も基本的な真理まで煮詰めて、"よし、何が真実だと確信できるか?"ということなんだ。そしてそこから推論する。そのためには、より多くの精神的エネルギーが必要なのです7」。 それから何年も経った今でも、机は金物屋で買ったシンダーブロックの上に板を乗せただけのものだった。オフィスのコンピューターは部品から自作した。資金力のある友人たちは、私が1,000ドルで自作したものを10万ドルも出して買ってくれた。彼らは「最高のものが必要なんだ」と言ってそうしたが、顧客にとっては何の改善にもならなかった。...
直感に反するが、ビジネスを成長させる方法は、既存の顧客に完全に集中することだ。彼らをワクワクさせれば、彼らは皆に話すだろう。 第一原理思考の真の力は、漸進的な改善から可能性へと移行することである。他人に考えさせるということは、彼らの類推や慣習、可能性を利用するということだ。それはつまり、私たちが彼らの考えることに準拠した世界を受け継いでいることを意味する。これは漸進的思考である。
第一原理思考の真の力は、漸進的な改善から可能性へと移行することである。他人に考えさせるということは、彼らの類推や慣習、可能性を利用するということだ。それはつまり、私たちが彼らの考えることに準拠した世界を受け継いでいることを意味する。これは漸進的思考である。
すでにあるものを取り入れ、それを改良するとき、私たちは他人の影に隠れてしまう。一歩引いて、何が可能かを自問し、欠陥のあるアナロジーを断ち切ってこそ、何が可能かが見えてくる。類推は有益である。複雑な問題を伝えやすくし、理解を深める。しかし、アナロジーの使用にはコストがかかる。何が可能かについて私たちの信念を制限し、私たちの(欠陥のある)思考を暴露することなく、人々が議論することを可能にする。アナロジーは、他の誰かが問題を見ているのと同じ方法で問題を見るように私たちを動かす。
「ほとんどの人は、自分が思っている以上に多くのことを学べると思います」とマスクは言う。努力せずに自分を安売りするのです」。葉っぱや細部に入る前に、基本的な原理、つまり幹と大きな枝を理解しておくことだ。
https://www.youtube.com/watch?v=L-s_3b5fRd8
https://www.youtube.com/watch?v=0JQXoSmC1rs
平たく言えば、第一原理思考とは基本的に、与えられた問題やシナリオについて自分が「知っている」と思っているあらゆる前提を積極的に疑い、ゼロから新しい知識や解決策を生み出す練習のことである。ほとんど生まれたての赤ん坊のようなものだ。
裏を返せば、類推による推論とは、事前の仮定や信念、そして大多数の人々が承認する広く抱かれた「ベストプラクティス」に基づいて知識を構築し、問題を解決することである。
類推で物事を判断する人は、たとえ頭が良くても判断を誤る傾向がある。
「知識を意味的な木のようなものとして捉えることが重要だ。葉や細部に入る前に、基本的な原理、つまり幹や大きな枝を理解しているかどうかを確認する。- イーロン・マスク バッテリーパックは本当に高価で、それは今後も変わらないだろう......歴史的に見て、1キロワット時あたり600ドルもする。歴史的に見て、1キロワット時あたり600ドルもする。第一原理では、「電池の材料は何か?その材料成分の株式市場価値はいくらか?コバルト、ニッケル、アルミニウム、カーボン、分離用ポリマー、シール缶がある。それを材料ベースで分解し、「もしロンドン金属取引所でそれを買うとしたら、それぞれの値段はいくらになるか?キロワット時あたり80ドルといったところだ。だから、これらの材料を巧みに利用し、バッテリーセルの形に組み合わせる方法を考えるだけで、誰もが思っているよりもずっとずっと安いバッテリーを手に入れることができるんだ
マスクは、バッテリーパックは高価であるという社会通念に従う代わりに、炭素、ニッケル、アルミニウムといった基本的な真実や要素を明らかにする強力な質問をすることによって、これらの通念に挑戦した
"自分が何を考えているか分かっているが、それを表現できないと言う人は、たいてい自分が何を考えているか分かっていない“The person who says he knows what he thinks but cannot express it usually does not know what he thinks.”
"- モーティマー・アドラー
第一原理アプローチとは何か
最も単純な形として、第一原理思考は問題を取り上げ、それをパーツに分けます。パズルのユニークなピースを特定したら、それらを組み合わせて意味を持たせるのだ。
第一原理とは、真の知識の基礎となる命題や仮定のことである。科学では、理論、方法、法則は第一原理から導かれる。数学では公理と仮定が第一原理である。 アリストテレスは、真理を見出すために、著作の中で最初に第一原理を用いた一人である: > "第一原理、原因、要素が存在するあらゆる体系的な探究(方法)において、知識と科学はこれらの知識を得ることから生じる。" "私たちは、第一原因、第一原理、要素に至るまでの知識を得た場合にのみ、何かを知っていると考えるからである。"アリストテレス
それは、第一原理という方法を使って、要素(真理、本質)に至る道を見つけることである。アイデアや問題から出発し、公理や第一原理が見つかるまで遡らなければならない。そのためには、問題を分解し、基礎から積み上げていくための適切な質問を見つけることが不可欠である。
言い換えれば、第一原則の方法とは、本質と真実を見つけるまで仮定を疑うことである。
類推・アナロジーによって考えることは、凡庸さと停滞への道である。革新と進歩は、第一原理からの推論によって見出される独自の知識に基づいている。 https://www.youtube.com/watch?v=NV3sBlRgzTI
このビデオは、イーロン・マスクが「ファーストプリンシプル(第一原理)」思考法について説明しています。彼は、この思考法がどのようにして明確な革新を可能にするか、そして既存のものに小さな改善を加えるのではなく、根本的に新しいものを生み出す方法について話しています。マスクは、最初の自動車を例に挙げ、他の人々が馬車を改善しようとしている間に、誰かが交通手段と内燃機関の基本原理から出発して自動車を作り出したことを説明しています。
マスクは、「ファーストプリンシプル」思考を使うことの警告もしており、それは「はるかに多くの精神エネルギーを必要とする」と述べています。彼は、バッテリーパックが高価であるという一般的な見解に対して、この思考法をどのように適用したかを例に挙げています。過去に高価だったからといって、将来もそうである必要はないと彼は指摘します。マスクは、バッテリーを構成する材料のスポット市場価格を調べることから始め、それらの材料をバッテリーセルの形に賢く組み合わせる方法を考えることで、誰もが認識しているよりもはるかに安価なバッテリーを作ることができると結論付けています。
https://www.youtube.com/watch?v=vJ4bXM185qE
コピーバンドのようなもの
アナロジーじゃなく考えるもの
私の研究分野は,物の性質を理論的に解き明かす物性理論と呼ばれる学問分野です。その物性理論の中でも特に,第一原理計算理論の開発を行っています。第一原理とは,経験的なモデルなどを一切用いずに,基本的な物理法則のみから物の性質を解き明かそうとする理論的な試みのことです。理想的には「人間がモデルを持ち込むことなく物理現象を説明することが望ましい」という立場で研究を行っています。
マスクはスペース・エクスプロレーション・テクノロジーズ、通称スペースXを立ち上げた。火星移住と人類を惑星間種族にするという大胆な目標をかかげて。だが火星に宇宙船を送るロケットを購入しようとして愕然とした。アメリカ市場では、2機のロケットに1億3000万ドル(約136億円)と途方もない値がついていたのだ。
そこでマスクは、ロシア市場をのぞいてみることにした。しかし、ロシア側の提示額もミサイル1機2000万ドル(約21億円)という法外な価格だった。マスクの財力をもってしても、アメリカやロシアでロケットを購入することはできなかった。
マスクほどの富豪にとっても、宇宙開発企業を立ち上げるために支払うロケットのコストはあまりにも高すぎた。別の手を打たなければならないと、彼は痛感した。
アプローチが大きく間違っていたことを思い知らされたマスクは、諦めかけていた。しかし彼はやめるのではなく、最初の原理に立ち戻ろうと決めた。ロケットを扱うマスクはまさにロケット科学者の思考法で問題解決を行ったのだ。
ロケットを購入しようと思ったとき、マスクは初めて自分がそうした競争のなかにいることに気づいた。彼の思考はほかの人が過去にしたことに悪い意味で影響を受けていた。だからマスクは物理学の勉強に立ち戻り、最初の原理を判断のよりどころにしようと決めたのだ
第一原理思考の重要性を説いたのはアリストテレスだ。彼はそれを「物事が知られる最初の基礎」と定義した。フランス人哲学者で科学者のルネ・デカルトは、「疑わしいと思うことすべてを疑い、自分のなかにまったく疑いようのない何かが残るかどうかを見きわめること」と説明した。 現在の状況を絶対不変なものとみなすのをやめて、鉈(なた)をふるおう。自分なりのビジョン――またはほかの人のビジョン――をもとに将来の道を決めるのをやめて、それらに対する忠誠心を捨てよう。ジャングルを切り開いて進むように、今抱いている思い込みを切り捨てるのだ。あなたの手元に基本の要素だけが残るまで。
ロシアから手ぶらで帰国の途についたマスクの頭に、突然ある思いがひらめいた。帰りの飛行機で、マスクは同行していた宇宙コンサルタントにもちかけた。「僕たちでロケットを作るのはどうかな」。「ロケットの」本を片っ端から読んでいたのは、こういうわけだった
マスクにとって、第一原理を使うとは、物理学の法則から始めて、宇宙にロケットを飛ばすのに何が必要かを自問することだった。彼はロケットを最も小さい従属部品や基本的な原材料に解体し、「ロケットはなにでできているか」を考えた。そして、材料費が一般的なロケットの価格に占める割合は2%ほどしかないということがわかった。驚きの数字だ。
第一原理思考によってスペースXは、ロケット科学の領域に深く浸透しているもうひとつの前提に疑問を感じるようになった。それは「ロケットは再利用できない」というものだ。
NASAのスペースシャトルの再利用は、迅速でも完全でもなかった。とりわけ飛行頻度を考慮すると、点検と改修にかかるコストはとんでもない額になる。そしてスペースシャトルの再利用は、結局うまくいかなくなった。
類推によって判断するなら「NASAでうまくいかなかったのだから、私たちも無理に違いない」とするのが普通だろう。だがその考え方は間違っている。再利用反対の根拠はたったひとつ、スペースシャトルのケーススタディ。しかしながら、問題があるのはスペースシャトルだけであって、再利用可能なすべての宇宙船ではない。
2015年12月、貨物を軌道に送ったスペースXのファルコン9ロケットの1段目が、首尾よく地上に垂直着陸した。再利用可能なブースターを地球に着陸させたのだ。以来、同社は回収した数多くのロケットを改修して再利用し、保証つきの中古自動車のように再び宇宙に打ち上げてきた。かつて無謀な実験と言われたことが、今では当たり前になりつつあるのだ。
第一原理思考によって生まれるイノベーションによって、スペースXspacexは宇宙飛行にかかるコストを3分の1に満たないほど劇的に削減することができた。 業界の外に人材を求め思考パターンを変える
実は、行動を起こさない――過去の実績の幻にとらわれている――ほうが、リスクははるかに大きくなる。今いる場所を飛び立たない限り、行きたい場所にたどり着くことはできないのだ。小説家のヘンリー・ミラーは、「今の面白みのない自分から脱却し、もっと上に行くためには、炭になり石にならなければいけない」と書いている。
過去の実績を台なしにする危険があったとしても、あなたが何者であるかが変わるわけではない。あなたはこれからそれを突きとめるのだ。焼け跡の混乱が収まれば、美しい何かが空を駆け回るだろう。
根本的な思考パターンを変えるには、それにうってつけの人材を雇う必要がある。業界を変革しようとするなら、業界の外に人材を求めるのが有効だ。そこでなら、思考を縛りつける見えないルールで周りが見えなくなっていない人々を見つけられるだろう。
初期のスペースXは、自動車や携帯電話業界の人材を多く採用した。どちらの業界もテクノロジーの変化が急速で、迅速な学習と適応――第一原理思考ができる人の証し――が必要とされるからだ。 最初の原理に戻ることは、あなたが思っているよりも簡単だ。建物を解体する本物の鉄球ではなく、思考という架空の球を使えばいいのだから
ロケット科学者ではない人間が、宇宙分野の一流民間企業を立ち上げるにはどうすればいいだろうか。あるいは自動車業界の経歴を持たない者が、電気自動車をメインストリームに押し上げるにはどうすればいいだろう。
イーロン・マスクが触れるものなら、なんでも金に変わるように見えるかもしれない。だが、マスクの比類のない活力と野心的な目標の裏にあるのは、シンプルな思考戦略──「第一原理思考」(first principles thinking)だ。 第一原理とは、ほかのものから推論できない命題(基本的前提)のことだ。つまり、ある複雑な問題に関して、絶対に確実だとわかっていることがそれにあたる。 第一原理思考は、複雑な問題(たとえば、安価な宇宙ロケットや電気自動車など)の分析でこれ以上ないほどの効果を発揮する。
人類を火星へ送る計画を追求しようとマスクが決意したとき、最初にわかったのはロケット1台を購入するのに最大6500万ドルの費用がかかることだった。
そこでマスクは問題を別の枠組みで捉えなおし、「手ごろな値段のロケットを見つける」のではなく「ロケットをそれほど高価なものにしている要因は何か」を考えることにした。
ロケットの打ち上げ費用を10分の1に
「私には、物理学的な枠組みでものごとにアプローチする傾向がある」とマスクは『ワイアード』のインタビューのなかで語っている。
「物理学が教えてくれるのは、類推ではなく第一原理をもとに理屈を考えることだ。だから私は、こんなふうに考えた。
よし、第一原理を見てみよう。ロケットは何でできているのか。航空宇宙グレードのアルミ合金と、若干のチタン、銅、炭素繊維だ。 それから、こう考えた。これらの材料の商品市場での価値はどれくらいか。その結果、ロケットの材料費は、一般的な価格の2%ほどだということがわかった」
もちろん、労働力の問題もあるし、部品の組み立て方を知る必要もある。だが、マスクはそうした複雑な問題にもひるまなかった。そして数年のうちに、利益を維持したまま、ロケット1台の打ち上げ費用を10分の1近くまで削減した。
マスクは第一原理思考を駆使して、ロケット製造を基本的な部品──絶対に確実だとわかっている要素──に分解し、そこからどうすればより効率的にロケットを製造できるかを検証したのだ
第一原理思考は、「シンプル戦略」とも呼ばれることがあります。複雑な問題を抱える目的を達成するには、根本に眠っている当然のことに焦点を当てて問題を見出していくという考え方です。
イーロンマスクのロケット開発を例にすると、ロケットの専門家ではない一般企業がロケット打ち上げを成功させるためには、解決しなければならない問題が山積みです。そんな状況でイーロンマスクが最初に着目したのは1台のロケットが最大6500万ドル(約65億円)するということです。ロケットに関する知識を身に付けたり優秀なエンジニアを集めたりしたところで、一企業がたやすく投資できる金額ではありません。そこでイーロンマスクはロケットがそこまで高額な原因に着目し、単純に安いロケット探しに力を入れるのではなく、高い原因を削ぎ落したロケット開発の方法を追求しました。
分かったことは、1台のロケット開発費6500万ドルに対して材料が占める割合は2%程度だった、ということです。この事実からイーロンマスクは、利益を下げることなくコストを大幅に下げることができると考えました。この段階ではまだ、具体的にどうすればコストを落せるかは見出せていないながらも「ロケットは6500万ドルする」という概念を打ち砕き、新しい可能性を発見しました。
労働力や人件費、技術費、利益の維持をするために多くの問題に向き合う必要はありましたが、結果的にイーロンマスクは従来のおよそ10分の1までコスト削減したロケット開発を実現させました。枠にはまった考え方から脱線して根本に疑問を持つ、しかし確実に必要なものは削らない。というイーロンマスクの思考は、今までにあった固定概念を覆す結果を生み出しました。これが「第一原理思考」です。