大聖堂
モールドバグが 大聖堂 と呼んだ、現代のメディアとアカデミズムの複合体によって行われているマインド・コントロールであり、思考の抑圧である。だが物事が押し潰される場合でも、押し潰されたものが完全に消えてなくなるわけではない。そうではなくそれは、場所を移され、その身を隠すための 陰 の中に避難して、そして時により、怪物へと姿を変えることもある。 大聖堂 の抑圧的な教義が、様々な形で、また様々な意味において力を失いつつあるこんにち、怪物たちの時間が迫ってきている ランドらは、「今日の西洋社会を支配しているメディアと学の複合体」を「大聖堂」に見立て、強く批判する。というのも、彼らによるとそこには、PC(政治的公正を意味する「ポリティカル・コレクトネス」の略称) 等の倫理と教義が奉られており、それらは西洋文明に有害な脅威をもたらすからである。その上で彼らは、大聖堂に対する破壊活動として暗黒啓蒙を仕掛けるのだが、つまるところそれは、ラディカルな変化をもたらして現在の窮状から「西洋」を救い出すためには、技術的・商業的な「脱政治化」(つまり、政治による経済やテクノロジーに対する制約を解除すること) がぜひとも必要であるという、技術革新と生産性向上への欲求に裏打ちされたものとみなしうる 西洋近代の「啓蒙」を、さらにいえばそれが生み出した民主主義や平等という「神話」を批判する。ヴォルテールがキリスト教会を批判したのと同じ身振りで、彼らは「 政治的正しさ」から成り立つ民主主義的な言論空間を「大聖堂カテドラル」と形容し揶揄する