B.参考05:生成AIをめぐる3つの旅(2)
生成AIをめぐる第2の旅は,実際に生成AIを使ってみる旅だ.
★以下,📝欄では実際にメモを取りながら実習を進めること.
◎1◎Copilotを使ってみる
ここではMicrosoftのCopilotを使ってみよう.
https://gyazo.com/e66370caa33dcf930575336cd2d1bc82
CopilotはMicrosoftが開発したものだが,ブラウザに依存せず,しかもアカウントなしで利用できる.ただし,アカウントなしでの利用では,1つのテーマでのやりとりが5回までに制限される.
大学アカウントに接続したEdgeだとすぐに入力画面になる
Chromeだといったんサインインを求められる
Copilotの使い方については各自web検索すること.
※豆知識※ Copilotの横の「ノートブック」は一問一答式で,込み入った質問をしやすい.対話が流れていかず,ひとつずつ別のノートとして残せるので,あとからの整理も楽.一つのテーマについてじっくり調べたい場合にはおすすめ.
★ここで利用する生成AIは,言語生成系であればChatGPTでもGemini( 旧Bard )でも構わない.時間内には無理だろうが,むしろ複数のAIを使ってみることをお薦めする.複数のAIの出力を比較すれば,新たな知見が得られることは間違いない. ◎2◎プロンプトを学ぶ
生成AIに書き込む質問を「プロンプト( prompt )」という.生成AIを活かすのはプロンプト次第である.昨今はAI利用者の多くがプロンプトを研究し,その成果を共有しているので,検索すれば役に立つ( かも知れない )プロンプトのサンプルがたくさん見つかるだろう.
※実社会では生成AIを活用して生産性を上げようとしている企業は数多い.彼らにとって有用なプロンプトはキラーアイテムになりうる.そのためプロンプト開発も必死なのだ.
このように,望ましい出力を得るためのプロンプトの設計・最適化に関する技術を総じて「プロンプトエンジニアリング」と呼ぶ.
●よいプロンプトを作るにはいくつかのコツがある. まずは教科書的な以下のサイトを紹介する.
↑↑ DAIR.AIによる文書でバイブル的なガイド.これをきちんと読めればいっぱしのプロンプト使いになれるだろう.ここではまず,イメージを身につけておくために,プロンプトの実例を見ておこう. ↓↓
●ほかにも入門的なサイトは多数ある.以下は一例.
●少し変わった視点の記事もある.
●楽しいプロンプト集というのもある.学ぶには遊び心が大切!
↑↑ AI大喜利は自分の頭の体操になるかも.
↑↑ GPT-4用とあるが,他のAIでやっていけないことはない.AIにプロンプトを考えさせるのも面白い
●プロンプトエンジニアリングの「手法」には次のような呼び名が定義されている.
CoT、Zero-CoT、ToT、mock、ReAct、Step Back、Metacog、IEPなど
↑↑ 興味があればやってみよう.
※これらの手法は実用的な分類であって,その効果を定量的に評価して定義されているわけではない.学問として習熟して体系化されるにはもう少し時間がかかるだろう.今後の生成AIの発展いかんによっては体系化・理論化される前に研究分野として廃れていまう可能性もゼロではない――ということは留意しておくべき.
📝おもしろい,役に立ちそうなプロンプトがあればメモしておきなさい.
◎3◎質問してみる
実際にCpilotに質問をしてみよう.いくつか課題を用意したので,自分なりのプロンプトで質問してみよう.
※1つの話題につき5回までなら連続でやりとりできるので,突っ込んだ質問など変化を持たせてみよう.
課題A「RC直列回路の過渡応答方程式を表示させる」:数式が正しく表示されるか?検証方法は?※ほかにグラフになりそうな方程式があればそれでもOK
課題B 「上記の方程式のグラフを描かせる」:グラフの画像が表示されるか?それは正しいか?
課題C「壮大で感動的な美しい風景を描かせる」:見て感動するか?どう評価する?
課題D「人類は地球にとってなぜ悪で絶滅するべき存在なのかを考察させる」:ネガティブな質問に対する回答は?
課題E その他,自分がふと疑問に思ったことを聞いてみよう
★大切なのはAIの回答をちゃんと検証すること.Copilotは引用サイトリンクをつけてくれるので検証はしやすいが,そのサイトがでたらめなことも.それが必要かつ十分なのかどうかは,あなた自身が判断する必要がある.
★もしAIに「答えられない」と言われたら?
→ 妥当と思われる回答を得るにはどんなプロンプトがよいか,工夫してみよう.
📝AIとの対話はコピー可能.面白いと思った対話をノートに記録しなさい.
◎4◎考察してみる
上で生成AIといろいろ対話してみたことだろう.これを踏まえて,以下について考えなさい.
A. プロンプトとAIの回答の関係について:
📝以下について自分で考えてノートに書き出しなさい.
a. 意外と正確な回答を得られたプロンプトはなにか?それはなぜか?
b. 回答がはずれたり回答されなかったプロンプトは?それはなぜか?
c. 「よいプロンプトとはなにか」を生成AIに聞いて,それを検証・評価する
B. AI向けの課題/AI向けじゃない課題:
📝実習を通して,以下をまとめなさい.
a. AI向けの課題とそうじゃない課題の違い
b. すんなりうまく答えてくれる聞き方とそうじゃない聞き方の違い
◎5◎「AIとわたし」を考える
生成AIといまの自分( 学生生活 )との関係について,2つの視点で考えてみよう.
A.促進要素:生成AIによって「あなた自身」が成長したり生産性が向上するような要素を考えてみる
B.阻害要素:生成AIを利用することで逆に成長や生産を阻害するような使い方を考えてみる
📝まずは,これらについて自分で考えてメモをしなさい.
★以下は模範回答ではないが,例として挙げてみた.
A.促進要素
1.「お手本」から学ぶ:AIによる要約・翻訳・作文
※ただし自分での吟味・訂正は必要
2. 提案・アイデアのやりとりから学ぶ
AIは偏見・心理バイアスが少ない → ブレインストーミング向き
新視点・新発想の発見の可能性
3.「情報の質」=真贋判定のトレーニング
4. 安心できる話し相手:コミュニケーションを学ぶ
生成AIの時間的特性=「いつでも嫌な顔をせず答えてくれる」
生成AIの表現特性=「ディスらない・否定しない・認めてくれる・励ましてくれる・ポジティブにしてくれる」
📝これらが自分にとって促進要素かどうか,メモしなさい.AIと相談してOK.
B.阻害要素
1.「ただ楽をするため/今をやり過ごすためだけのツール」に成り下がるリスク
2.「知的能力の修練の場」でなくなるリスク
← マラソンランナーがタクシー使ったらトレーニングになるか?
3. その他,心理的要因で阻害するものはあるか?
📝これらについて自分の成長・学習への阻害要因を,まとめてなさい.AIと相談してOK.
★その他,いろいろと考えられるし,人によって異なることは大いにあり得る.
◎6◎生成系AIの注意点
これまで試してきて,思うことがあることだろう.ここでは,生成AIに対する注意点をまとめておく.今後生成AIとお付き合いする上でのマインドセットとして頭に留めておきたい.もちろん,ほかに気づいたことがあれば📝しておこう.
★生成系AIの答えは真実とは限らない.
むしろ結構でたらめなことを答えるので,必ず評価が必要.
📝 誰が,どうやって評価する?評価基準はなに?
★生成系AIは最新情報を知らない.
学習している世界中のネット上の情報は数年前までのデータ.昨日発生したニュースは知らない.
※CopilotとGeminiは最新情報の検索を含めて回答可能.しかし過去の情報に比較すると不正確なことがある.
📝Copilotに今日起きた事件について聞いてみよう
★生成系AIに対しては「質問・対話のスキル」が必要.
同じ内容の質問でも聞き方によって回答が異なる.
複雑な問題には工夫が必要.これらのスキルはプロンプトエンジニアリングとして体系化されつつある.理論体系としては十分に成熟していない.生成AIの振る舞いは完全に解明されていないためにスキルの効能は確定的ではない.
まとめれば,次のように言える.
「AIに聞けば信用できる素敵な答えが1回で返ってくると思うな」
📝今後のAIへの対話をよりスムーズにするためにユーザが必要な行動はなんだろうか.考えなさい.
★生成系AIは現在進行系.
生成AIは現在進行系で激しい技術競争の真っ只中にある.有用性が大きいと同時に変化が激しい.
社会・国家・教育など全ての分野でのルールづくりが整っていないし追いつかない.
つまりそこには濫用され悪用される穴がいくらでも存在することに他ならない.
最新技術や法的な動向を追いかけチェックし知識を更新し続けるしかない.
📝これらについて,今後国や社会はどうするべきか,その中で自分はどうするべきかを,AIと相談しながら自分なりの考えをまとめなさい.
★★実習★★AIに聞いてみる
上記のような注意すべき事柄について,生成AI自身はどう思っているのか?聞いてみよう.
複数のAIに同じ質問をするなど,どういう回答をするのかを比較観察しよう.
📝生成AIの回答を見て,自分の考えをコメントしなさい.
以上.
2024/5/6