第17回写真「1_WALL」審査会レポート
公開最終審査会レポート
2017.11.2 木
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11月2日(木)、今回で17回目となる写真「1_WALL」の公開最終審査会を開催しました。
「1_WALL」は、新しい表現を追求している若い才能を発掘することを目的としたコンペティションです。数多くの応募者の中から1次審査、2次審査を通過した6名のファイナリストが1年後の個展開催の権利をかけてプレゼンテーションを行い、その場でグランプリが決まります。グランプリ受賞者には個展制作費として10万円が支給されます。
前身の『ひとつぼ展』の時代から、数多くのアーティストを輩出してきた「1_WALL」。果たして今回はどんな新しい才能に出合えるのでしょうか。当日の様子をお届けします。
FINALISTS
※プレゼンテーション順
JUDGES
飯沢耕太郎 / Kotaro Iizawa(写真評論家)
鈴木理策 / Risaku Suzuki(写真家)
姫野希美 / Kimi Himeno(赤々舎代表取締役/ディレクター)
増田玲 / Rei Masuda(東京国立近代美術館主任研究員)
※五十音順、敬称略
夕方、緊張した面持ちでファイナリスト6名が集合。会場では審査員による作品チェックが行われていきます。一般見学者たちも続々と集まり、審査会場が賑わいます。そして、いよいよファイナリスト一人ひとりによる作品のプレゼンテーションがスタートしました。
プレゼンテーション&質疑応答
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川崎祐「光景」
この作品は、家族を3年半の間撮影し続けたものです。撮影を行う前までは自分と家族との間に距離があり、また自分の中にも複雑な感情があったのですが、1年半ほど撮った時に気づいたことがありました。それは、当たり前のことかもしれませんが、時間は流れているということや、家族一人ひとりにそれぞれの人生があったんだということです。それに気付くまでは、家族の撮影を介して自分の実像を探そうと考えていましたが、もうそれはいいだろうと思い、彼らとの関係に新しく生じたものを写そうと試みました。でも、それはとても壊れやすいものなので、壊れないよう気をつけながら撮影を重ねました。また、そこには不思議な光景や奇妙な美しさのようなものが垣間見える気がしました。個展では、家族写真とは何だろうということを考えられるものにするつもりです。また、写真から想起される言葉も抽出して、どんな揺れやズレが作品から生まれるのかも試してみたい。
Q.飯沢:以前はアメリカ文学を専攻していたと聞いたが、写真を始めたきっかけは? 文学的な研究と今回の家族写真にはなにか関係がある?
A.川崎:写真を撮り始めたのは、体を壊して目が見えにくくなった経験があり、記録をしないといけないなと思い始めたことがきっかけ。作品を作る際は、実際に撮影したものを解釈し、暫定的な答えを持ちながら、再度撮影することを行いながら、言語化のプロセスを重要視している。そういう意味では直接的ではないですが、間接的に文学と写真はつながっているものがあると感じています。
Q.百々:文章ではなく、写真で表現することをどう捉えているの?
A.川崎:最初は、ちょっと変わったこの面白い家族のことを、文章で笑い話のように表現しようとしました。でも、どう向き合っていいかわからなかった。それに比べて写真は、ある意味シャッターを切れば写せるもの。その気軽さは、良かったなと思っています。
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田凱「黒い水」
「黒い水」とは、石油のことです。私の故郷である中国にある町は、1947年に油田が発見されて栄えた町です。でも、15年くらい前からは昔ほど石油が出なくなって、経済的に落ち込んで、だんだんと寂しい町になってしまいました。大学時代はそんな寂しい町を撮影するつもりはなかったのですが、日本に来てから「どうして自分の故郷を撮らないの?」と言われ、その言葉がこの写真を撮るきっかけになりました。また去年、仕事の給料が出ない状況で故郷を出て行かざるをえなくなったという町の友人の話を聞いて、故郷を撮る理由が改めて見つかったような気がしています。個展では、今回のようにポートレートと故郷の風景の写真を展示したい。
Q.鈴木:この作品を撮るのに、どれくらい故郷に通ったの? 一度帰るとどのくらい撮影したの?
A.田:全部で4年ほどかけて撮影しています。一度帰ると期間は一週間くらい。最初は6×6で撮っていたがあとで見ると自分の写したいものが写ってないと思い、4×5で撮るようになりました。多い時で1日10枚ほど撮影していました。
Q.この仕事は自分としては、ほぼできあがってると思う? それとももっと撮りたいと思う?
A.田:自分の中では完成度2/3ぐらいです。
Q.姫野:展示作品の写真は、どのように選んだの?
A.田:メインはポートレートの写真にしようと思いました。撮影した写真を一旦全てプリントして、それを全部並べて、その中から選んだものが今回の作品です。
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藤本まちこ「Untitled」
この作品は、感情的な写真を作りたいと思い撮り始めたもので、写っているのは私とパートナーの女性です。異質なものではなく当たり前のものとして存在したい気持ちと、後ろめたさのような感情をなくしたくないという複雑な感情を表しています。そして、人が人と過ごしていくことで分身のような存在になっていくことを留めたいと思い、撮影を続けています。今回の展示方法は、見る人に小難しい作品だと捉えて欲しくないので、シンプルにしました。また、この作品は長期的なシリーズなので、これで終わりではなく5年おきくらいに展示をしていきたいと考えています。個展では、自分が女性として求められるものと、今見たいと思っているものの対比を軸にした作品を作る予定。例えば、子育てを頑張る田舎の友人と、居場所がなくて都会に逃げてきた自分との対比などを考えています。
Q.飯沢:このポートレートは、どのくらいのペースで撮られているものなの?
A.藤本:2 ~ 3ヶ月おきです。
Q.鈴木:一緒に写っているパートナーは、この写真に対して何て言っているの? 一人で写っているのもあるの?
A.藤本:「皺とかが写って嫌だ」とは言っていますが、それを撮るためにこのような撮影の仕方にあえてしています。一人で写っている写真もあります。今後は、後ろ姿を撮影するなど変化をつけていきたい。
Q.百々:今回の展示では、なぜ後ろ姿を撮影したりなど変化をつけなかったの?
A.藤本:このポートレートの作品は、まだまだ続いていく長期的な作品。なので、今回は一区切りとしてここまででいいのかなと思いました。また5年後か何年後かに展示ができればいいなと思います。
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上竹真菜美「父をつなぐ」
この作品は、タイトルの通り私の父親をテーマにした作品です。父は、工事現場で現場監督としてずっと働いてきましたが、去年肝臓の病気になって急に仕事を辞めることになり、今は実家の福島に戻って療養をしています。肝臓の病気のために全身に黄疸が出ている父の、今まで身近すぎて見ることのなかった背中を見せてもらうと、自分が思っていたよりもおじいちゃんっぽくなっていたことなど、肉体のリアリティーに衝撃を受けました。そこで、父の生を作品として残すことはできないかと思い、今回の作品を作りました。一つひとつ増えていったであろう背中にあるほくろやシミが、父が生きてきた時間の蓄積の象徴のようなものに思えて、それを星座のようにつなぐことで何かそこに意味を与えようとしました。ドラマチックなことが起こるわけではないが流れて行く時間を鑑賞者の人にも感じてもらいたいと思い、3点の映像で展示を構成しました。個展では、これまで撮ってきた父のポートレートや今回の動画を組み合わせ、空間全体を使った作品にしたい。
Q.鈴木:一番左のモニターは動いているように見えないのだが、動画なの? これは何を意味しているの?
A.上竹:ほとんど動かないですが、風が吹くと竹のすだれや後ろのカーテンが動いている瞬間があって、これも動画です。福島の実家でいつも父が見ている風景を動画で撮影しました。
Q.飯沢:この作品の前は、同世代の人たちを撮っていたはず。今回、父親の写真を撮った時との違いは?
A.上竹:撮影していたときの意識は違うと思う。同世代の人たちを撮っていた時は、写真を撮りたいという動機が最初にあり、身近な人をずっと撮っていました。でも、今回は父の病気が先にあって、何かつくらなきゃ、父のことを作品として残したいという思いが最初にあったので、順番や制作の動機が違います。
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寺田哲史「Pregnancy-中のできごと-」
この作品の撮影は、妻の妊娠を記録するために始まりました。非常に個人的な動機で、個人のアパートなどパーソナルな空間で撮影された写真を、その日の新聞にシルクスクリーンプリントしています。そうすることで記録性を高めると同時に、個人の生活と社会の二つのレイヤーが重なって、写真だけではできない、また、新聞だけではできない唯一の作品になりました。今回は妊娠から出産直前までの写真を展示しましたが、個展では生まれてきた子どもの成長ぶりなどプライベートな記録に加えて、ビルが建ったり、道が舗装されたりといった自分が住んでいる町の変化の記録作品も展示したい。そして、今後もこのような写真の撮影を続けていって、個人と世界の歴史が同時並行的に重なる作品を作り続けていきたいと思います。
Q.飯沢:これを思いついたきっかけはなにかあったの?
A.寺田:新聞に写真を転写するというアイデアは以前からあった。短期間での身体の変化をできる限り記録したいという思いと、そのアイデアが合致した。
Q.増田:新聞の日付がほとんどは時系列で並んでいるが、右の端の方だけランダムに並んでいる。この意味は?
A.寺田:基本的には、日付が近いものは近い場所に展示しています。ランダムになっているのは、写真のイメージと新聞記事のイメージが合うものを合わせたからです。
Q.姫野:写真と記事のイメージが合うかどうかは、どういう基準なの?
A.寺田:抽象的な感覚なのでうまく言えないんですが、新聞の記事と広告の言葉の意味、モチーフのしぐさや配置などが合っているかどうかなどを考えて組み合わせています。
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福田未央「Nobody Knows」
写真を撮り始める前から、他人が思っている私と本当の私は違うと感じていて、相手が思い込んでいる私を、その相手の前で演じているという自覚を持っていました。それは多かれ少なかれ誰もが同じ思いを持っているのかもしれないですが、私は他人と接している時は何もリアルに感じることができず、一人でいる時だけ本当の意味で世界を見つめているような気がします。この作品で表現したかったのは、自分で自分を見つめているということ。また、これは自分だけの葛藤だからと言いたいのではなく、誰もが自分の視線は自分だけのものだからそこには溝のようなものがあって、その溝を認めてほしいという思いもあり、この作品を作りました。
Q.飯沢:個展プランはどう考えているの?
A.福田:他人は、距離があることも含めて他人。今はそんな他人をたくさん撮りたい。個展では、そうしてたくさん撮った写真を展示したいです。
Q.百々:今回の作品は、今の自分のリアルな気持ちをどのくらい表現できていると思う?
A.福田:リアルなものを撮りたいと思って作品を作り始めたが、自分に対しても自分を演じていて、リアルなものはない。ただ、自分に対して演じているなというリアルさは感じています。
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ファイナリストそれぞれの個性が光るプレゼンテーションと、質疑応答の時間が終了しました。今回も審査員から鋭い質問が飛び出し、ファイナリストたちは、それら一つひとつを噛み締めながら一生懸命に答えていました。
そして、いよいよグランプリ決定のための審議へ。まずは審査員それぞれに、ファイナリストの作品について感想をいただきました。
講評&審議
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川崎祐「光景」について
鈴木「家族をテーマにしたことは面白いと思うし、家族のキャラクターも魅力的。でも、ポートフォリオの時のいい意味でのわからなさみたいなものが消えてしまった印象だ」
飯沢「個展では言葉も加えられると言っていたので、その組み合わせは面白そうだなと期待している。ただ展示そのものがうまくいってるかといえばそうではないと思う。写真と文学の共通性についての話が面白かった」
姫野「ポートフォリオの時からいいなと思っていた。終わりなんだけど、終わりじゃない感じとか。展示は難しかったのだろうけど、それでも頑張っている印象を受けた。鬱屈感や閉塞感と釣り合うだけのエネルギーがいいなと思ってる」
増田「タイトルから期待していたのだが、今回は故郷の風景写真が展示されておらず残念。ポートフォリオでは家族のいる『街』というものも写されていてそれがおもしろかった。空間的には何枚か風景写真を入れることはできたのでは」
百々「家族写真とは何かなど問題提起するなど、チャレンジしているところに可能性を感じる」
田凱「黒い水」について
飯沢「石油で栄えた町が経済的に落ち込んでいく感じがじわじわと伝わってきて、かなり好きな作品だし、写真家としてレベルが高い。4×5に変えたことで距離感を含めた客観性が強くなってる。ただ、ある意味完成されている作品で、今回の審査基準には合わないかも」
百々「オーソドックスではあるが、レベルの高い作品。安定的な視線を持つ彼だからこそ、見えてくる世界や紡げる距離感があるんだと思う」
姫野「すごく良い作家だと思う。ただ、ポートフォリオの時から淡々と同じ雰囲気で撮り続けていることが少し気になる」
鈴木「風景が寂れてきて、撮るもの自体がなくなってきた感じが良い。撮るものがなくても、なお撮るという時に出てくる魅力が写真にはあると思う。ポートレートが特に魅力的だ」
増田「新しいチャレンジをしているかどうかはわからないが、日本ではこういう作家はまだいないと思うので、ある種の新鮮さがある」
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藤本まちこ「Untitled」について
鈴木「個展でも今回と同じように、パートナーとのポートレートだけを展示するというように貫いてほしかったので、ちょっと残念」
飯沢「シンプルな構図なのに、ずっと見ていても飽きない不思議な魅力がある。新しいシリーズは、このポートレートとは馴染まないのでは?」
百々「プレゼンで言っていたように、後ろめたさをなくしたくないというのを大切にして、そこを写真の中から発見していくような撮り方を続けていってほしい」
姫野「個展では、女性として求められるものと自分が見たいものを対比させたいと言っていたことや、後ろめたさなくしたくないと言っていたことが印象的だった」
増田「彼女の今回のポートレート作品には、簡単に言葉にはできない魅力がある。写真にある謎めいた魅力を引き出してるのはシンプルさやイメージの力だと思う。個展ではその魅力を出して欲しいが、彼女が言うように、長期的な作品になるということも納得でき、1年後の個展には別のシリーズでということもわかる」
上竹真菜美「父をつなぐ」について
飯沢「今回、動画を展示したことや、プレゼンも良くできている。表現者として安定した水準をもってる。個展でも相当な作品に仕上げることができるのではないか。以前は演繹的だったが、今は帰納的に写真を成立させているというところも好感が持て、評価できる。ただ、その分何が出てくるのかわからないといった面白さは感じられなかった」
姫野「ポートフォリオの段階から、力がある作家だなと思っていた。ただ、ポートフォリオの写真から発している雰囲気と今回の動画から発する雰囲気は違う感じがして、戸惑いもある」
増田「多くのイメージがある中でこの3つのイメージに絞り込んで動画として、しかも内容をきちんと詰め込むことができていると感じる」
百々「タイトル通り、ポートフォリオはインパクトがあったが、今回の展示作品は動画にすることで少し説明的になってしまったように感じる」
鈴木「今回展示で動画にしたのは、メディアを変えてでも伝えたいことがあったからだと思うし、とても力のある作家だ。ポートフォリオと展示、どちらも使いわけできているので、個展でもやってくれそうだ」
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寺田哲史「Pregnancy-中のできごと-」について
百々「非常にうまくいった作品だ。アイデアも良いし、表現も的確。生まれた子どもの写真がないのは、少し出し惜しみしている感じ」
飯沢「ベストなかたち。良くできている。この先どう展開していくかが難しくなりそうだが、彼ならできそうな感じもする」
鈴木「良くできた作品で、文句のつけようがない。でも、この先これ以上の作品を作ることは難しいだろう」
増田「今回の展示作品のポイントは、父親である彼がお腹の中のできごとに関与することができないということ。個展では、子どもの成長と周囲の環境を撮るということだったが、そうなるとポイントは異なってくるのでは」
姫野「新聞に出てくる言葉と写真の組み合わせのレイヤーがすごくいいなと思った。でも、ポートフォリオの時の感じた、次に何が出てくるんだろうというドキドキ感がなくなってしまった」
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福田未央「Nobody Knows」について
飯沢「他の人の作品と比べると幼さや未熟さみたいなものを感じてしまい、もったいないなと思った。全体的な見え方が成立しきれてない。でも、逆にいうと、この中で彼女は一番可能性があるとも言えるのかもしれない」
増田「他人を撮りたいと言っていたが、展示作品は自分もしくはまるっきり遠い人物が多いように感じる。その中間の人物を撮ることで、自分というものを掘り下げていくことができるのでは」
姫野「良い意味で揺れのある作品だ。セルフポートレートよりも他の人の顔が写っている写真がいいなと思った。自分の眼差しは自分だけのものという言葉が印象的で、この先も見てみたい」
鈴木「自問自答しているような作品だと鬱陶しくなりがちだが、彼女の作品にはそれがなく、しなやかな感じが魅力。個人的には、写真を通して外の世界にもっと出合っていってほしいと思う」
百々「写真を撮ればリアルな自分が見つかるんじゃないかと思って撮ってるという行為が面白いと思った。リアルの探求を写真に求めるならいろんなやり方や方法論があると思う。今の葛藤を突き詰めて、もっと熱量を持って写真に臨んでほしい」
こうして、ファイナリスト一人ひとりに対しての講評が終わり、投票へと移ります。まずは、審査員の方々にいいと思った2名を選んで、発表していただきました。
投票結果
飯沢:川崎・田
鈴木:上竹・川崎
百々:川崎・田
姫野:上竹・川崎
増田:上竹・田
集計すると、川崎 4票/上竹 3票/田 3票という結果に。そこで、票を獲得した川崎さん、上竹さん、田さんの中からグランプリを選ぶことになりました。まずは、この3人に票を入れた審査員の方から、改めて、選んだ理由をひと言ずつ述べていただきました。
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川崎祐「光景」について
飯沢「彼は写真と言葉を並べることで何かを構築できる人のはずなので、期待している」
鈴木「写真をずっとやってきた人が持ってしまう落とし所を知らずにカメラを持ち出しても、こんなにも面白いものが撮れるのかと思わせてくれたこと。他の人とは違う作品を作っていけそうなところに期待」
百々「ポートフォリオの迫力が十分に展示に活かされてはいないが、撮ってる写真の力には魅力を感じるし、個展も期待できる」
姫野「どんな個展にしてくれるんだろうというよりも、どんな作家になるんだろうと期待させてくれる」
上竹真菜美「父をつなぐ」について
鈴木「ポートフォリオでも展示でも、それぞれ表現する力があるので、個展も見てみたい」
姫野「伝えたいことを、かたちを変えながら表現できるところに魅力を感じるし、作家としての力を感じた」
増田「メディアの使い方が評価できるし、今後の作品も見てみたい」
審査員がそれぞれ川崎さん、上竹さん、田さんの魅力を改めて語ってくださったところで、3人のうち1人を選ぶ最終投票へ。
会場に緊張が走る中、スタッフがゆっくりと投票結果を読み上げていきます。川崎さん、上竹さん、川崎さん、川崎さん、上竹さんという結果になりました。1票差で最後まで迫っていた上竹さんでしたが……ここで、ついに川崎さんがグランプリに決定しました!
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名前を呼ばれた川崎さんには、姫野さんからトロフィーが授与されます。
川崎さんは「正直、今回の作品が初めての展示作品ではあったものの、いろいろと勉強をしてきたはずだったんですが、ダメ出しを受けてしまいました(笑)。個展では、もっと広がりのある作品を作りたいと思います。ありがとうございました」と、今回の作品への反省点と1年後の個展への意気込みを語ってくれました。
川崎さん、グランプリおめでとうございます! 個展は、約1年後にガーディアン・ガーデンで行われる予定となっていますので、みなさんどうぞお楽しみに。
出品者インタビュー
川崎祐さん(グランプリ決定!))
「展示に対する意見をもらえて、勉強になりました。でも、これはまだまだ僕の上澄み部分。個展では今回のアドバイスを参考に、さらに良いものにしたいと思うので、ぜひみなさん期待を膨らませて待っていてください」
田凱さん
「年齢制限があることもあって、今回思い切ってこのコンペに応募しました。完成度が高いことを褒められて嬉しかったです。今後は写真展をやったり、写真集を出したりする予定です。これまでにいない、新しい写真家として頑張っていきたいです」
藤本まちこさん
「グランプリをとれなかったのは残念だったけど、他の人の作品は本当に面白かったです。他の方たちがとても論理的に話されているのが印象的だったので、今後は私も想いをきちんと伝えられるよう言葉のトレーニングをしていきたい。そして、こつこつ作品を作っていきたいです」
上竹真菜美さん
「結果だけ見ると、すごく悔しい。でも、ポートフォリオとは違うかたちで展示をできたことは評価してもらえたし、自分でもうまくいったと思っています。今後も、作品を撮り続けて頑張っていきたい。まずは、大学院の卒業に向けて修士制作を頑張りたいです
寺田哲史さん
「このコンペは、ファイナリストになるまでの過程や制作のプロセスを審査員の方がきちんと理解してくれるので、アドバイスもいつも的確で参考になります。今回は残念ながら選ばれなかったけど、改善し続けて個人的に個展をやろうと思います」
福田未央さん
「自分でも混乱している部分を指摘してもらうことができて、良い勉強になりました。今回の作品は、自分の中で100点中68点。経験不足な部分があるので、また力をつけてから、再びこのコンペに挑戦したいです」
第17回写真「1_WALL」グランプリ受賞者個展