ブックカタリストBC115用メモ
本編
倉下とストア派
『心穏やかに生きる哲学 ストア派に学ぶストレスフルな時代を生きる考え方』
どんな本か?
原題:『Reasons Not to Worry:How to Be Stoic in Chaotic Times―A Practical Guide to Stoicism for Self-Improvement and Personal Growth』
著者:ブリジッド・ディレイニー
英国『ガーディアン』紙ジャーナリスト。毎週執筆している人気コラム「ブリジッド・ディレイニーの日記」は、オーストラリア、アメリカ、イギリスで広く読まれている。『Wellmania』はイギリス、カナダ、アメリカ、フランスでも出版され、ネットフリックス社でドラマ化された。ディレイニーはその共同制作者であり副プロデューサーでもある。
ディスカヴァー・トゥエンティワン(2024/08/23発売)
章立て
第1部 ストア哲学のエッセンス
死を意識して生きる
本当に大切なものを見極める
災難に対処する
心穏やかでいる
善良であるために
心をわずらわされないために
第2部 人生とその不条理について
平静さを保つ
何ごともほどほどにする
SNSとどう付き合うか
今あるもので幸せになる
他人と比べて落ち込まない
不安な気持ちを消し去る
第3部 耐え忍ばなくてはいけないとき
深い悲しみに向き合う
死を受け入れる
ストア派とは何か
ストア(柱廊)
https://gyazo.com/6508d24c9eda92f8b2734f6ef4fab82d
ストア・ポイキレ(彩飾柱廊)
ギリシャ アテネのアテナイのアゴラ内にあるストア(柱廊)
ゼノン(紀元前335年 - 紀元前263年)がここで演説をした
このキティオンのゼノンとエレアのゼノン(紀元前490年頃 - 紀元前430年頃)は別人
商人の息子に生まれ、成人して自らも商人となり中年期に至るまで商業に携わっていた
思想の流れ
ソクラテス(紀元前470年頃 – 紀元前399年)の弟子アンティステネス(紀元前446年頃 - 紀元前366年頃)を始祖とするキュニコス学派の思想から発展
ゼノンの弟子のうち最も影響力があったのはクリュシッポス( 紀元前280年頃 - 紀元前207年頃)
古代ギリシャからローマへ
代表的な思想家
ルキウス・アンナエウス・セネカ
第5代ローマ皇帝ネロの幼少期の家庭教師
エピクテトス
マルクス・アウレリウス・アントニヌス
第16代ローマ皇帝。 五賢帝最後の皇帝
ストア派のコアになる考え方は何か?
そもそも「哲学」?
ストア派のように過ごす5つの基本原則(本書「はじめに」より)
人生で起こることの大半は自分にはコントロールできないと認識する。
世界をどのようにとらえるかが自分の感情を生み出すことを理解する。
悪いことは時に起こるべくして起こり、誰にでも同じようにあることだと受け入れる。
自分を、切り離された個人ではなくより大きな全体の一部としてとらえる。人類の、そして自然の一部として。
自分が持っているものすべてを、ただ借りているだけで、いつか返す日が来るものだと考える。
その考え方は現代に生きる私たちにどのような影響を持つか
その考え方は何も問題を持たないのか
「はじめに」
現代で一貫した生きる意味をどうすれば見出すことができるのか?
道徳的な相対主義が根付いている
パンデミックなど苦難が多く、複雑で生き方が一様に決まらない
この俗世において、ますます複雑になっていく人生の試練に立ち向かうための、社会的及び道徳的手段の決定版はなく、また広く同意を得られる手段もありません。その代わりに、私たちは自分たちで何とかするようにと放り出されているのです。しかし、絶えず変化し続ける時代にどうやって一貫した意味を見出したらいいのでしょう? また、どうやってしっかりと地面に足をつけ、社会がばらばらになっていく不安に押し流されないようにしたらいいのでしょう?
ストア派へのイメージ
ストイック(厳しい、独立的、偏屈、自己鍛練に励んでいる)
実際の人々はそうではない。人生を楽しみ、他者を愛し、共同体の一員として生きていた
求めるのは不動心(アタラクシア)
慎重に調整された心の穏やかさ
人類社会に対する透徹したまなざし
常に現実的で、しかし皮肉めいたところはない
空から降りてきて救ってくれる神はいないし、死後の世界もない
私たちにあるのは自分自身とお互いだけで、皆欠点があるがそれで十分
お互い支え合うしかない。だから、ある種の試練に立ち向かうことを求める。
最善を尽くすこと、合理的であること、徳を積むように心がけること、自分の本性に従って生きること、兄弟姉妹に対するのと同じように他者にも良くすること
第1部
死を意識して生きる
現代における「死」
未熟で死を向き合えずにいる
自分の死を受け入れるためのメカニズム(儀式、詩)がない
ストア派は、いずれ自分が死ぬことを理解しようとしながら生きた
上手に死を向かえること=良く生きること
否定的な視覚化、という手法
大切な人の死を生存中に偲ぶ
友人の死、家族の死(もしこれが最後の一日だったとしたら)
死を恐れるのではなく、死について考える
今の時間の捉え方が変わる、精神的な受け身
『限りある時間の使い方』
仕事についての考え方
一生懸命に働くことに誇りを持つべきだが、仕事は人生のほんの一部にすぎない
本当に大切なものを見極める
自分のコントロールが利かないものに価値を置けば置くほど、ますますコントロールする力を失う by エピクテトス
コントロール・テスト(コントロールの二分法)
行動を起こす前に行うテスト
何がコントロールできるか?
私たちの品性
私たちの反応(場合によっては行動も。ただし結果は含まれない)
他者への対応の仕方
コントロール感
コントロールできると勘違いしているものがたくさんある(コントロール感が大切であるがゆえに)
実際は非常に限定的
自分にできるのは最善を尽くすことだけで、その結果はコントロールできない
災難に対処する
「好ましくても無関心」
品性・人徳・論理的な思考力を守り育てることには関心事としての優先度は高いが、富・健康・名声は低い。
財産はあってもよい。ただしすべてを失っても「大丈夫」と思えるなら
そうすることであまり傷つかずに済む
二倍傷つくことを避ける
最初の喪失から連鎖的に傷が拡がっていく
最悪の状態を想定する(もし財産を失ったら?)
期間限定で貧しい生活をする
経験を積む
ストア派は、今あなたが持っているものすべて(健康を含む)を自分のものではなく、単に借りているだけでいつかお返しするものだと考えるように言います。
健康すらも好ましくても無関心でいるべきものだと位置づけている
どんな状況になっても平静さを保ち、品性が怪我では損なわれないと自分に言い聞かせる
4つの美徳、勇気、正義、節制、賢明さを実践できる
心穏やかでいる
不動心(アタラクシア)
揺るぎない落ち着きで心が澄んでいる状態であり、苦悩や不安から解放されている、という意味
美徳がもたらす幸福(ユーダイモニア)
かき乱されない=精神的な悩みがない
アリストテレス「自分の強みを活かして、意義あることに打ち込む幸せ」
パッション(情熱)は受動的、神によってもたらされたもの
不動心とは「心の平和や、内面の静けさや、精神的な強さのために」作り出すもの
著者の対話相手であるアンドリューの考え方
アンドリューの論理に従うと、自分が完全にコントロールできるものだけから幸せが生じるように訓練すれば、幸せは確実に手に入ります。
多少コントロールできる程度のものに関しては、確実に幸せにつながるわけではありません。
不動心を獲得するためのテクニック→「大きな視点を持つ」
善良であるために
惜しげもなく、与えること
取引(ディール)ではなく
心をわずらわされないために
良い悪いという評価を伴う判断を避ける→理性に基づいた思考
ただし簡単ではない。
つまり、ストア哲学が掲げる目標はあまりに高くてそこまでたどり着けないことも多いのですが、目指して励むべき理想のあり方を私たちに示してくれているのです。
判断をしないというのは、考えたり感じたりすることを放棄するという意味ではありませんし、情報や手がかりを拒否するわけでもありません。ただ、ややさかなことも含めてすべてに対し、良し悪しの意味付けをしないということです。
自分が受けた心象に衝動的に反応しない
反応する前に一呼吸置く
再認識(リフレーミング)
感情の勢いを落とすか、少なくとも感情が湧き上がってきたときにそれを認識し、感情の勢いが落ちてきたところで、自分の判断を見直したり、やり直したりする。
「いや、まてよ」「ほんとうに、そうだろうか」
世の中をありのままに理解すること→ストア哲学の要
自分自身はどう見るか?
これもまた明晰で現実的であるべき
ストア派が行った効果的な自己評価のための方法
日記をつけること
物事をじっくりと考えること
自分の心と向き合うこと
第2部
平静さを保つ
怒りについて
利他的な理由から怒りを抑えるのではない
怒り=正当性
すぐに対処する(セネカ)
反応を確認する
ほとんど身体的な反応の感情と、判断から生じる感情がある
自分が抱いている感情・反応を自覚する、判断を保留する
判断を保留するのは認知的トリックです。考えるスピードをただ落とすだけで、自分がどんな判断ををするかをより意識しやすくなります。
怒りを抱かないようにすることは、物事に対して受け身になることではない
怒りのエネルギーをそれ以外のことに使う
怒りという感覚や感情は、変化が必要なものが世界の中に存在していると捉える
「ガソリンは、エンジンに」
@ishii_rikie: 作品を作る人が、作品の姿勢で反論をしめした、というのは、後世の世に、粋な世代として残ろうもの。
すべからく、作り出す人、というのは、そう、ありたい。
精神的精力は、罵倒や憎悪の具現化に使うのはもったいなくて、新しい有用性を生み出す推力に、使うべき。
ガソリンはエンジンに。
何事もほどほどにする
節度を保つのはすぐには成果が出ない地味な作業
その他の書籍
『生の短さについて 他二篇 (岩波文庫) 』
『人生の短さについて 他2篇 (光文社古典新訳文庫)』
『怒りについて 他2篇 (岩波文庫)』
『エピクテトス 人生談義 上 (岩波文庫) 』
『エピクテトス 人生談義 下 (岩波文庫)』
『マルクス・アウレーリウス 自省録 (岩波文庫) 』
『ギリシア・ローマ ストア派の哲人たち セネカ、エピクテトス、マルクス・アウレリウス』
『哲人たちの人生談義 ストア哲学をよむ (岩波新書)』
『迷いを断つためのストア哲学』
『知的生きかた文庫 ストア哲学―強く、しなやかに生きる知恵』
『STOIC 人生の教科書ストイシズム』
『その悩み、エピクテトスなら、こう言うね。: 古代ローマの大賢人の教え』
関連アイデア
ストア派と依存症そしてミニマリスト
自己啓発とストア派
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事前検討メモ
ストア哲学について語ろうと思っている
『弱さ考』という選択肢もまだある
起点は『心穏やかに生きる哲学 ストア派に学ぶストレスフルな時代を生きる考え方』。他にもいろいろな本がある。そうした本を挙げながら、ストア哲学とは何か。現代におけるストア哲学の意義、といったことを考えたい。