2-9.特許要件
https://gyazo.com/36993d6c21761d7ec3bb5221cddb427b
https://gyazo.com/c810e162249d46a69f7567baef4da4ce
https://gyazo.com/52884b7fd6d165c8dd331971de894a59
https://gyazo.com/4dcd079b6750e3eb87a405b5c7005cd4
https://gyazo.com/d713362c5163806581d8afaf1e8fc4d4
https://gyazo.com/1d2e01a960577426a41e6b7cbac9b95c
https://gyazo.com/5759da6ae2388e0920630c374f91b71a
(2−9−1)産業上利用性
特許要件として、産業上利用できる発明であること(29条柱書)が要求されるが、この要件を意識してクレームを書かなければならない場面は、とりわけ、ソフトウェア関連発明の分野であろう。
ソフトウエア関連発明についての審査基準では、 「ソフトウエアによる情報処理が、ハードウエア資源を用いて具体的に実現されている」場合、当該ソフトウエアは「自然法則を利用した技術的思想の創作」であるとされる。
そこでは、
ソフトウエアがコンピュータに読み込まれることにより、
ソフトウエアとハードウエア資源とが協働した具体的手段によって、
使用目的に応じた情報の演算又は加工を実現することにより、
使用目的に応じた特有の情報処理装置(機械)又はその動作方法が構築されること、
が要求される。
よって、ソフトウエア関連発明の成立性条件としては、
情報処理に、ハードウエア資源を用いていること
ソフトウエアとハードウエア資源とが協働して具体的手段が構築されていること(個々の機能実現手段)
当該具体的手段が使用目的に応じた情報の演算又は加工を実現していること
が必要であり、
その結果、使用目的に応じた特有の情報処理装置(機械)又はその動作方法が構築されていること(全体としての装置・システム・方法)が必要となる。
以上から、ソフトウエア関連発明を特定するには、
1)クレームにハードウエア資源を特定する
2)入力された情報がどのような使用目的で、どのように演算・加工され、どのような出力をするかを明らかにする
3)そのための具体的手段(個々の機能実現手段)の名称を特定する
4)個々の機能実現手段が全体としてどう作用して使用目的に応じた特有の情報処理装置(機械)又はその動作方法が構築されるかを明らかにする
という手順が必要である。
この手順に従ってクレームを作成するならば、下図のようなクレーム構造が構築され、産業上利用できる発明が特定されたものと言えよう。
(2−9−2)新規性・進歩性
次に、新規性・進歩性との関係で、発明特定事項をどこまで限定するかが決まる。
すなわち、発明特定事項は、従来例との関係で、どこが新規で、それが進歩的なのか、意識しておくことは重要である。
しかし、時に、発明の構成要件のうち、新規な部分のみを特定してクレームとする場合が見受けられる。一部の構成が公知であったとしても、対象となる発明が技術として成立するための要件は、すべて特定しなければない(これは、前記した再現可能性に重なる)。特許法36条5項でいう、発明を特定するために「必要と認める事項のすべて」とは、そういう意味も指していると言えよう。
なお、発明の新規性は、従来技術との関係で決まるが、最初から従来例と対比するのではなく、まずは、発明者が主観的にどのような発明をしたのかを把握し、その後に、従来技術と対比することを推奨したい。予め、発明者の主観的発明範囲を決定してから、従来例の領域を差し引くことで、始めから従来技術と対比するより、客観的発明範囲を最大限の範囲で定めることができる可能性が高いからである。