2-6.オールエレメントルール・権利一体の原則
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特許発明の技術的範囲と権利一体の原則(特許法70条)
特許権(特許法68条)の侵害事件においては、特許発明の技術的範囲の属否論が問われる(特許法70条)。属否論では、特許発明の構成要件を分説し、対象物件の構成と対比し、それらの異同が判断される。クレーム記載の構成要件を、すべて備えているとき、当該対象物件が特許発明の技術的範囲に属するとされる。換言すると、原則として、構成要件の一部を欠くものは、他の構成要件を具備するか否かを論ずるまでもなく技術的範囲に属しない、とされる。これを、権利一体の原則、米国では「オールエレメント・ルール」ともいう。
例えば、
① Aと、Bと、Cとを備えた装置、という特許発明に対し、
② Aと、Bと、Cと、を備えた装置、は当然のこと
③ Aと、Bと、Cと、Dとを備えた装置もまた、①の発明のすべての構成を備えているので、上記①の特許発明の特許権を侵害し、一方、
④ Aと、Bと、 Dとを備えた装置
というのは、Aと、Bと、Cの内、Cが欠けているので、上記①の特許発明の技術的範囲に属しない、すなわち当該許権を侵害しないと判断されるのである。
この視点からすると、発明特定事項として、構成要件が少ないほど、保護範囲は広く、本来再現性に不要な要素を含むなら、保護範囲は狭くなる。発明特定事項を、旧法に従い「発明の構成に欠くことのできない事項のみ」で特定するなら、「のみ」以外の不要な要件が入る余地がなくなり、不用意に権利範囲が狭くなることはない。
そこで、これからクレームを特定しようというときの行為規範としては、「発明特定事項」は、再現性要件を満たす事項「のみ」に限ると読み替えることを推奨したい。「のみ」で特定した方が好ましいことは、クレーム解釈論を学ぶとよく理解できる。そこで、簡単にクレーム解釈論に触れる。
権利一体の原則から、注意して欲しいのは、発明の構成要件が少ない程、構成要件を充足する確率は高くなるということである。よって、「構成要件が少ない方が、権利範囲は広い」ということになるのである。
この結果、クレームの特定にあたっては、発明の構成に欠くことのできない事項「のみ」で特定した方が、出願人にとって有利である、ことは、今なお生きているのである。
権利一体の原則と利用発明
ここで注意すべきは、利用発明という概念である。
① Aと、Bと、Cとを備えた装置
という先願特許発明に対し、
③ Aと、Bと、Cと、Dとを備えた装置
は、技術的範囲には属するものの、新規なDを付加したことで、新たな技術的効果があるならば、特許される場合があるということである。このような発明を利用発明という。先願特許発明の構成要件のすべてをそっくりそのまま利用している発明である。このような発明は、別発明として特許可能であるが、実施しようとすると、先願特許権の侵害となるので注意を要する(特許法72条)。特に出願人は、特許されたからといって安心してしまうので、代理人としては、注意を喚起したいところである。
そして、権利一体の原則、利用発明の概念から、
①発明の構成要件の内、一つを削除すると別発明、
②一つを他の構成要件と交換(一つ削除、一つ追加と同義)すると別発明
③さらに、新たな構成要件を追加すると別発明
となることが理解される。
従って、これから、発明の特定をしようとするとき、どのような構成要件の組み合わせで発明が成立するかを検討すべきである。
そして、発明には、先に述べたように、「目的・構成・効果」が存在するのであるから、各構成要件の組み合わせ毎に、その目的や効果も異なるである。構成が変われば効果が変わる。効果が変われば目的も変わる。目的が変われば、構成も変わるということが理解されよう。すなわち、「目的・構成・効果」には常に対応関係があり、その関係性を理解して発明を把握しなければならないのである。