クレーム解釈論
クレーム解釈論
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特許法第70条1項は、「特許発明の技術的範囲は、願書に添付した明細書の特許請求の範囲の記載に基づいて定めなければならない」としている。
これは、特許請求の範囲(クレーム)は、当該特許発明の保護範囲(scope of protection)を定める基準となることを意味し、従って、原則として、保護範囲はクレームのみで解釈され、クレームのみで一義的に明白に保護範囲を確定できる場合にはわざわざ発明の詳細な説明の記載を参酌する必要はない。
但し、70条2項は、「前項の場合においては、願書に添付した明細書の特許請求の範囲以外の部分の記載及び図面を考慮して、特許請求の範囲に記載された用語の意義を解釈するものとする。」としている。これは、特許法第70条1項で「特許請求の範囲」の解釈が問題となるとき、特許法第36条の規定を前提として、明細書中の発明の詳細な説明を参酌して解釈されることを確認的に定めたものである。
70条1項でいう「特許請求の範囲」には、「特許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべてを記載してあること」(36条5項)を要し、しかも、「発明の詳細な説明に記載したもの」(36条6項1号)であり、さらに、詳細な説明の記載は「発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分であること」(36条4項)を要するわけであるから、その反対解釈として、クレーム解釈にあたっては、その拠り所となる「発明の詳細な説明」を参酌して請求の範囲を解釈してよいのである。よって、具体的には、特許発明の構成要件毎に、その意義を「発明の詳細な説明」を参酌しつつ特定し、イ号物件の対応する構成と比較し、その異同を論じることとなる。
特許権侵害であると疑われる対象物件(通常、イ号物件という)が、当該特許発明の「技術的範囲に属するか否か」を判断するときの手順の一例を示す。
(1)特許発明の特定→特許権設定登録時又は訂正審判による訂正後の「請求の範囲」記載の発明を、構成要件毎に分説。
(2)イ号物件の特定→特許発明の各構成要件に対応して、イ号物件の構成を分説。
(3)文言解釈(形式的同一性の判断)→請求項記載の構成要件とイ号の構成とを対比しその異同を判断する。
(4)実質的解釈(実質的同一性の判断)→各種実質的解釈論の考慮
(5)均等論適用の可否
例えば、Wクリップが次のような特許発明だったとする。
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【請求項1】互いに対向する一対の狭持部、及び、各狭持部の一端を連結する連結部からなり、一対の狭持部及び連結部の少なくともいずれかの部分が板バネ(弾性を有する板状体)にて形成されてなるクリップ本体と、
各狭持部に一端が接続され、他端が連結部を越えて外方へと延出し、一端を作用点、他端を力点とし、連結部近傍のクリップ本体部分との当接部を支点とした一対のレバーと、
を備え、
前記クリップ本体は、狭持部、連結部がそれぞれ板状をなし、被狭持物を狭持していないときに、各狭持部の他端同士が、互いに当接して、断面3角形状をなし、
前記各レバーの一端が、前記各狭持部の端部に回動自在に係止されていることを特徴とするクリップ。
これに対して、次の図のようなクリップが侵害ではないかと疑われたとする。
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技術的範囲の属否は、次のような手順で行う。
1)まず、特許請求の範囲に記載された特許発明を分説する。
A:互いに対向する一対の狭持部、及び、各狭持部の一端を連結する連結部からなり、一対の狭持部及び連結部の少なくともいずれかの部分が板バネ(弾性を有する板状体)にて形成されてなるクリップ本体と、
B:各狭持部に一端が接続され、他端が連結部を越えて外方へと延出し、一端を作用点、他端を力点とし、連結部近傍のクリップ本体部分との当接部を支点とした一対のレバーと、を備え、
C:前記クリップ本体は、狭持部、連結部がそれぞれ板状をなし、被狭持物を狭持していないときに、各狭持部の他端同士が、互いに当接して、断面3角形状をなし、
D:前記各レバーの一端が、前記各狭持部の端部に回動自在に係止されていることを特徴とする
クリップ。
2)対象物件(イ号)を同様に特定する。
ここでは、特許発明の構成要件に対応して、どのような構成を有するかを、特定する。
a: バネ性を有する金属板を折り曲げることで対向する側板部と各側板の端縁同志をつなぐ連結板部とを形成してあるクリップ本体と、
b: 前記クリップ本体の各側板外面に一端が取り付けられ、他端が側板部と連結板部との接続部分を越えて外方へと延出し、一端を作用点、他端を力点とし、側板部と連結板部との接続部分との当接部を支点とした一対のレバーと、を備え、
c: クリップ本体は、非使用時に断面3角形状で、2つの側板の前記連結板とは反対側の端縁同志が当接しており、
d: 前記各レバーは、前記クリップ本体の各側板外面に、各側板の前記連結板とは反対側の端縁に対し45度の角度を持って一端が回動自在に取り付けられている
クリップ
3)次に対比をする。
すべての対比は省略するが、問題となる構成は4つめのDとd。レバーが回動する点は、共通しているが、回動支点の取付け位置が若干違っている。これを発明思想として同一と言えるか言えないかが争点となろう。
特許発明では、狭持部の端部、これに対し、イ号物件では、側板外面。この差異を同一と言えないなら、構成が異なることになるが、その差異が、本質的部分でないなら、均等論の問題になる。
文言的にはDの構成が違うとは言えるけれど、実質的に違うか否かは、明細書の記載等を参照して、総合的に判断されるから、断定はできない。
このケースでは、A、B,C,Dからなるクリップにおいて、イ号では、Dの構造がD近似のD1となった例なので、微妙な争点となっているが、解釈論として、D=D1であるなら、技術的範囲に属する、D=D1でない場合は、原則としては、構成が違うこととなり、権利一体の原則から技術的範囲に属しないこととなるが、DとD1との差異が微細であるなら均等と判断されることもあるので注意が必要である。
権利取得後の実際の解釈は、事件毎に事実関係も違うし、出される証拠も違うので、簡単には割り切れないことに注意。具体的なクレーム解釈は、簡単にはいかないので、判例等を参考に、均等論を含め、様々な解釈事例を学ぶ必要がある。