建築設計Ⅴ/2020年度
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建築史的な知識や、いわゆる「和風」といった情緒的で曖昧な視点など、建築の専門家として、あるいは日本人として染みついている文脈を排し、設計をするための材料(あるいは道具)を採集する対象として日本建築を取り扱ってみる。外国人あるいは宇宙人が、予備知識や先入観なしに日本建築という立体物を見たとしたら、どのようにその特徴を捉えるだろうか、という視点で分析を行う。日本建築を、あえて「誤読」してみるという試みである。
このようにして見いだした設計ツールを、そのまま用いるだけではなく、さらにドライヴさせることによって、新たな建築の設計方法を見いだせないだろうか。
地方の過疎化対策としてさまざまな地域活性の働きかけについて見聞きすることも増えていると思うが、対して一極集中している都内でも、少子化や夜間人口の減少などにより統廃合された学校跡地がそのまま仮死状態のようになっているところがある。既存校舎やその履歴も敷地のポテンシャルの一つ、空間資源の一要素として扱いながら、都市で暮らすことの意義を経済性や機能的な便宜性だけにとどめず、そこに愛着をもって貢献、継承していきたくなるような地域のよりどころとなる場を提案してください。都市部での人のつながりのスケール、地域単位をどのような物差しで考えるか、各自仮説を立て、そのスケールを具体的な建築デザインに反映させた設計をしてください。
層序学の世界では1万1700年前に始まった完新世に代わり、新たな地質年代として人間からの影響を含んだ「人新世」が検討されている。またコミュニケーションの網は精緻さを増し、私たちの生活を包み込んでおり、人の動機は移り変わる。このような世界で建築を考えることとはどのようなものだろうか? 安定した敷地とプログラムを前提とした単一でオリジナルな建物ではなく、既にある敷地と建物から、何らかのまとまりを複数取り出し、それらを重ね合わせたり、組み換えたりすることで、現在と地続きでなおかつ新しい、「連関としての建築」を創造し、そのまとまりの根拠や連関が生む空間に確かさを付与するものとして、プログラムを構想してほしい。
近年、子ども支援の一環として行われている活動として「こども食堂」が全国に広がっている。こども食堂とは、地域住民や自治体が主体となり、無料または低価格帯で子どもたちに食事を提供するコミュニティの場である。最近では単に「子どもたちの食事提供の場」としてだけではなく、帰りが遅い会社員、家事をする時間のない家族などが集ま って食事をとることも可能な、地域のコミュニケーションの場として機能を拡げている例もある。
本課題ではこども食堂が作られた社会背景と目的やメリット、こども食堂の活動から生まれる課題を考え、これからの社会のなかで必要とされる機能・用途を組み合わせ、都市のなかでの人々の生活のハブ空間となる新たな複合施設の提案を望む。
かつて産業革命以降に資本家による工場と工場労働者のための集約型集落(カンパニー・タウン)というものが存在した。企業敷地内に、生産・管理・生活の拠点を集約的に整備したものであったが、都市計画によらず、企業(資本)が生産活動を中心にした集約的な共同体をデザインした ことは興味深い。これは、小さなコミュニティや、海外労働者の住環境整備が求められるようになった現代でも有効なモデルかもしれない。建てる(生産)・考える(管理/創造)・住まう(居住)拠点、すなわち工場・オフィス・労働者住居という、用途もスケールも異なる施設を、企業敷地内に集約的に展開する課題である。それらの分離が前提となっている時代に、集約することの意味を考えてほしい。その他の条件は課題説明時に提示する。