建築デザインⅡ/2020年度
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今年の課題は、コロナの影響で敷地調査などが十分に行えないことを前提に「リアリティ」が追求できる課題プログラムとしました。
みなさんの記憶の中には、コロナ禍でPCR検査や軽症者のためにホテルを収容病棟へ転用したという事例が認識されていると思います。しかしながら、重要なことはこの感染症を治療するための病院が手一杯であるということでしょう。(HotelとHospitalの語源は同じで、建築計画的構成も似ている)
今後、このような事態が何度となく訪れるに違いないことを想定し、いざという時のための「仮設の感染症対応病院」を提案したいと思います。
ここ数年、「建築デザインⅡ」の佐藤ユニットでは、武蔵野市全域を対象に公共施設のリサーチおよびその再編、指定した地域内での設計提案、コミュニティセンターへのヒアリングと課題分析および提案、共⽤部の分析と記述等を⾏ってきました。昨年度は 16 カ所のコミセンにおいて、会議室や学習室などの⽬的空間に⾄るまでの、外部からアプローチ/エントランス/ホール/階段/廊下と連続する動線空間に着⽬して公共建築を記述する試みを⾏っています(別紙参照)。
各施設は様々な⽴地条件にあり、規模や外観のデザインも様々ですが、内部空間の印象はほとんどの施設で驚くほど共通しており、その多くは退屈で冗⻑な空間あり、このような施設の本来の⽬的にそぐわないものでもあります。このような記述⽅法によって、コミセンにおける空間体験が何によって決定されているのかが表現されましたが、この認識をもとにして、どのような設計が可能となるかという課題が残されています。
今年度は、断続的な動線空間を、連続した建築的操作によっていかに設計可能なのかという課題に取り組みます。それによって公共施設の空間がどのように変化しうるでしょうか。動線空間のみを設計対象とするのではなく、⽬的空間との関係(境界)を操作する提案も必要となるでしょう。
下田市では、歴史的なまちづくりを目指す中心市街地において、“歴史・文化を感じ、楽しんで歩けるまちづくり”を進めている。昨年度は、ソフト施策として山中研究室と下田の市民が協働し、地区の良さを再認識するワークショップを行った。このワークショップでは、残し活かしたい地域資源の掘り起こしを行い、「市民が案内するまちあるきルート」を作成した。
今年度、下田市では地域の飲食店が連携する秋のイベント「下田がんバル」に合わせて、まちなかのポケットパークや護岸の一部、道路上の一部などの屋外空間を使って、仮設の「まちなかリビング」を設営し、観光客や市民の活動の可能性を検証する社会実験「(仮)下田ライフ-まちなかのリビング」を実施する。
この課題は、「(仮)下田ライフ-まちなかのリビング」のデザインを行い、さらに、この社会実験を敷衍させて、下田市の中心市街地を対象に来訪者と市民が安全に交流・活動できる恒久的な場を設計する。
観光と市民生活の共存が求められる地方の観光都市を舞台に、コロナ禍での新しい生活様式を前提にした新しい地域のデザインを、市民や行政、専門家と協働しながら見出してもらいたい。
今、コロナ禍の状況において、私たちの暮らしは大きく変わりつつあります。なかでも建築や都市において、外部空間の重要性は今後さらに増していくことが予想されます。従来型の専用住宅という建築タイプが今の状況に適合しなくなっています。これからの住まいはどうあるべきかを考えるにあたり、本課題では「都市のタイポロジー」に着目します。
具体的には、1)開口部やバルコニー、エントランスといった反復する汎用性のある「建築的なエレメント」、2)住宅地に無数に点在する位置指定道路(42 条 1 項 5 号道路)という「都市的な型」に注目します。そして、この両者が互いにどのような関係を取り結べば良いのかを、建築と都市の境界面から考察します。
そもそも住宅とは、それ自体が無数に反復する都市の構成物です。よって、これからの住宅像を考えるうえでは、タイポロジカルな思考が重要になります。