第4刷に向けての修正差分
第4版の増刷決定までの間に、英語版を作り始めた。
その際「元の日本語が不明瞭」と感じたところを推敲した。英語版作成に伴う推敲(~1章)。これを書いたときは英語版の作成が優先だったので雑なメモにすぎない。修正差分の形になっていないので、第4版に向けて修正差分の形にする。 なお「紙の書籍にページ数が変化する修正は入れたくない」という出版社の意向によって、ここに書いてあっても第4版に入らないものがある。
iv
code:diff:0.1.1
- 私は、自ら新しい知識を生み出すことが、価値の高い知的生産のために重要だと考えています。
+ 価値の高い知的生産のためには、自ら新しい知識を生み出すことが重要です。
vi
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- また読むだけではなく、まねて入力するテクニック「写経」もよく使われています。
話をシンプルにすることを考えると、この段階で写経に言及しない方が良さそう。
code:diff:0.2.1
- 本書でもいくつもの知的生産にまつわる課題とその解決策を紹介します。これはプログラミングのサンプルコードのようなものです。
+ プログラミングの教科書は、課題と、それを解決するプログラムを紹介します。本書は、知的生産にまつわる課題とその解決策を紹介します。同じ構造です。
「モデル」の概念は抽象度が高いので、このタイミングではもっと具体的に「パターンの発見」と開いておく方が良い。
合わせて、この節のタイトル「抽象化してモデルを作る」も「比較してパターンを見つける」にした方が良い。(別案
: 「パターンを発見して抽象化が起きる」)
vの文中の「情報収集・モデル化・検証」という言葉も「情報収集・抽象化・検証」とした方が良い。図のキャプションも同様。「抽象化」という言葉のとっつきが悪いことを懸念したが、「抽象化」が具体的には「モデル化・パターンの発見」を含む概念だということは図に描かれているので問題ないだろう。
vii
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- この本では、知的生産術を比較することで、みなさんが自分の中に知的生産術のモデルを作ることを手助けしたいと思っています。
+ この本では、複数の知的生産術を比較することで、みなさんが知的生産術の共通パターンを発見することを手助けしたいと思っています。
code::
- さて、ここまでであなたはパターンを見いだし、「PythonでBye, world!と出力したい場合には、こう書けばよいのではないか?」と思い付く能力を手に入れました。
+ PythonでBye, world!と出力したい場合にはどうすれば良いでしょうか?あなたはパターンを見出したことによって、実装方法を思いつく能力を手に入れました。
viii
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- 第1章「新しいことを学ぶには」では、正解のないことをどうすれば学べるのかについて考えます。丸暗記ではなく、状況に合わせた応用ができるようになるために、サイクルを回して学んでいく方法を詳しく解説します。
+ 第1章は「新しいことを学ぶには」です。答えを覚えるだけでは、状況に合わせた応用をできるようにはなりません。応用力を身につけるために、情報収集、抽象化、実践、の3フェーズのサイクルを回していく必要があります。この章では、各フェーズについて詳しく掘り下げます。
ix
code:diff:0.3
- 本を買いすぎて、山積みになってしまう人も多いのではないでしょうか?
+ たくさん本を買いすぎて、読まないままになっていませんか?
物理的に積まれることが問題なのではなく、買ったのに読まない状態になることが問題。
code:diff:0.3
- しかし、私はhowよりもwhatのほうが大事な問いだと考えています。第7章「何を学ぶかを決めるには」では、この問いについて考えていきます。
+ しかし、私はどう学ぶかを工夫するよりも、何を学ぶかを決めることのほうが大事と考えています。第7章「何を学ぶかを決めるには」では、何を学ぶかを決めるための意思決定戦略について解説します。
「この問いについて考える」は曖昧なので具体的にした。
p.3
- 情報収集は箱を集めるイメージです。ここでは情報を箱にたとえています。情報収集は、たくさんの箱を集めて並べていく作業です。しかし、情報収集だけをたくさんやっても、箱が平たく並んでいくだけで積み上がりません。
+ 情報を箱にたとえてみましょう。情報収集は、たくさんの箱を集めて並べていく作業です。情報収集だけをたくさんやっても、箱は平たく並んでいくだけです。高いところに手が届くようにはなりません。
平たく並ぶだけでは何が問題かをメタファーで明示した。
p.4
- たとえば本に書かれている文章は、文字にする段階で著者の具体的な経験からいろいろな情報がそぎ落とされ、抽象的な情報になっています。
+ たとえば書籍が書かれる過程を考えてみましょう。本を書く前に著者は色々な具体的な経験をしています。しかしすべてを書籍に書くことはできません。具体的な情報の大部分はそぎ落とされます。
この分量の増加は行数が増えるので下の段落を1行削る
- 箱は積み上げている最中に崩れてしまうことがあります。数学の知識は真四角のブロックです。一方、そのほかの分野のブロックは少しいびつです。数学ではブロックを正確に積んでいくので、とても高い塔が作れます。とても抽象度の高い知識にたどり着けるわけです。しかし、ほかの分野では、数学と同じように積もうとすると崩れてしまいます。だから、多くの情報を収集して、多くの箱で支えるようにして、ピラミッド状に積む必要があります。
+ 数学の知識は真四角のブロックですが、ほかの分野のブロックは少しいびつです。真四角のブロックは正確に積むことができるので、とても高い塔が作れます。確実な論理展開を繰り返して抽象度の高い知識にたどり着けるわけです。しかし、いびつな箱は同じように積むと崩れてしまいます。だから、多くの情報を収集して、多くの箱で支えるようにピラミッド状に積む必要があります。
p.5
- 何が違うのかを調べてみたり
+ 何が違うのかを検索エンジンで調べてみたり
具体的にした
- プログラムの中のリストで書かれているところをタプルに書き換えてみたり
+ プログラムの中のリストをタプルに書き換えてみたり
simplify
- 実験を繰り返して何かを作り出し、それを発表する場合も、うまくいかなかった試作品のことはあまり話されません。
+ あなたが何かを作り出すために実験を繰り返し、最終的に成功したとしましょう。あなたが成果を発表する際に、うまくいかなかった実験すべてに言及することはありません。
p.5には収まらないが、p.6の末尾に余白があるので1行押しても大丈夫そう。
p.6
- どこまでは期待どおりに動いていて、どこから違うのか?
+ ソースコードが期待どおりの挙動をしているのはどこまでか?どこから期待と違う挙動が始まるのか?
- この疑問を解明していき、何度も修正をして、ようやくプログラムは正しく動くようになります。
+ この疑問の答えを見つけ、何度もソースコードを修正をして、ようやくプログラムは正しく動くようになります。
- この試行錯誤の過程はあまり他人には見せませんが、少なくとも私は公開している成功事例の何倍もの試行錯誤をしていますし、教科書のない問いに答えを出そうとしている人は誰でもそうやっているのだと思います。
+ 私も試行錯誤の過程をすべて公開してはいません。しかし、私は公開している成功事例の少なくとも3倍以上の試行をしています。教科書のない問いに答えを出そうとしている人は誰でもそうやっているのだと思います。
複雑な文の分解と、基準の明確化
p.6 図キャプション
「試行錯誤は見えにくい」→「試行錯誤は他人から見えにくい」
p.7
- どの教科書を使うかを自分で選ぶことはできません。
+ 教科書を自分で選ぶことはできません。
- どの教科書を選ぶかも自分で決めます。
+ 教科書を自分自身で選びます。
p.8
- 中学の期末試験の問題は、教わった「正しい方法」のとおりに行動すれば、必ず答えが出るように作られています。
+ 中学の期末試験の問題は、解けるように作られています。あなたが先生に教わった方法を正しく実行すれば、必ず答えが得られます。
p.9
- 仮にあなたが社会人で、今「学んだほうがよいんだけどな」と思っていることがあるとしましょう。
+仮にあなたが社会人で、今何か学んだほうがよいと思っていることがあるとしましょう。
p.10
- プログラミング言語の学習も同じことで、どこまで進んだら「マスターできた」という実感が得られるのか不明確です。
+ プログラミング言語の学習も同じです。あなたは、どれくらい学べば「この言語をマスターできた」と感じられるのかがわかりません。
- また、そのゴールはなるべく近いほうが良いです。最初から42キロのフルマラソンにチャレンジするのは無謀です。まずはもっと短い距離から始めて、ゴールインの喜び、達成感を早く感じることが大事です。これを活用しているのがゲームによく使われる「チュートリアル」です。
+ また、そのゴールはなるべく近いほうが良いです。例えば、最初から42キロのフルマラソンにチャレンジするのは無謀です。まずはもっと短い距離から始めて、ゴールインの喜びを感じることが大事です。やる気を維持するには、達成感を早く感じることが大事です。これを活用しているのがゲームによく使われる「チュートリアル」です。
p.12
- また、大学に行くとほかでは手に入らないような秘密の知識を教えてもらえるという誤解をする人もいるようですが、大学はそういうものではありません。
+ 大学に行くと、ほかでは手に入らないような秘密の知識を教えてもらえる、という誤解をしている人もいます。しかし、大学は秘密を与える場所ではありません。
- 社会人大学院生の受け入れに積極的な大学では、授業を土日や平日の夜に行うなど、社会人が学びやすい制度を採用しています
+ 社会人大学院生の受け入れに積極的な大学もあります。それらの大学では、授業を土日や平日の夜に行うなど、社会人が学びやすい制度を採用しています
節タイトル「大学に入りなおすべき?」およびp.12とp.13に「大学に入りなおす」という言い回しがあるが、「入りなおす」ではなく「入る」が適当。
p.14
- これらのコスト削減によって、従来は通らなかった企画も通るようになり、質の指標として機能しにくくなりました。今の時代、もはや「紙の本だから良い」とは言えなくなっています。
+ これらのコスト削減によって、出版社はより多くの出版企画を受け入れるようになりました。今の時代、紙の本はもはや質の指標として機能しません。
p.15
- ベストセラーは、多くの人が買った本です。これも社会的証明になると思うかもしれませんが
+ ベストセラーは、多くの人が買った本です。これも質の指標になると思うかもしれませんが
p.15
- さて、ここからは学びの3つのプロセス「情報収集・モデル化・検証」について、それぞれ掘り下げて考えてみましょう。まずは情報収集についてです。
さて、ここからは学びのサイクルの3つのフェーズについて、それぞれ掘り下げましょう。このセクションではまず情報収集について掘り下げます。
p.16
- 「情報収集」を漠然ととらえていると、どこから手を付けてよいかわかりません。達成条件が不明確ですね。なので、まずもっと小さい単位に分割し、近いゴールまで走ることを目標にしてみましょう。そこで「情報収集」を分割する方法について考えます。
+もしあなたが「情報収集」を漠然ととらえていると、具体的に何をすれば良いかがわかりません。情報収集というタスクは達成条件が不明確です。なので、まずもっと小さい単位に分割し、ゴールを近く、明確にしましょう。情報収集を分割する方法を3つ紹介します。
- 特に、具体的に作りたいものがある状況はチャンスです。
+ もしあなたに何か作りたいものが具体的にあるなら、チャンスです。
p.18
- そういう遠いゴールを目指すのではなく、もっと近い「今、自分のやりたいこと」を目指していくことが、やる気を高めるコツです。
+ そういう遠いゴールを目指すのはやめましょう。「今、自分のやりたいこと」などの近いゴールを目指しましょう。それが、やる気を高めるコツです。
- 3つに共通する点が感じられたかと思います。
+ 3つに共通するパターンが感じられたかと思います。
「点」は曖昧。複数の事例から共通のパターンを見つけることが大事、という話をそこまでにしているので、明示的に「パターン」と読んだほうが良いだろう。
p.19
- あなたにとってほど良い距離にゴールが必要なわけです。これは、他人が何を目標にしているかではなく、あなたがあなた自身に適切な目標を決める必要があります。
+ あなたがたどりつける、遠すぎないゴールが必要です。他人のゴールは関係ありません。あなたがあなた自身に適切なゴールを決める必要があります。
- たとえば、今からプログラミング言語を学ぼうという人が、目標としてすごいゲームを作ろうと考えたとします。これは未来の方向性としては良いのですが、達成方法はわかるでしょうか?
+ 例えばあなたが今からプログラミング言語を学ぼうとしているとしましょう。そして、目標としてすごいゲームを作ることを目指したとしましょう。すごいゲームを目指すのは、長期的な方向性としては悪くないと思います。しかし、どうやってそれを達成するのか、今のあなたにわかるでしょうか?
- 最初から全部を詳細に知ろうとするのは良くないゴール設定です。
+ すべてを詳細に知ろうとするのは良くないゴール設定です。
- これは最初から世界中すべての店の配置を把握しようとするのが無茶なゴール設定なのと同じです。まずは大まかな地図を作り、徐々に詳しくなればよいのです。
+ 世界中すべての店の品物の配置を把握するのは無謀なゴールです。それと同じです。まずはどこにどんな店があるかの大まかな地図を作り、徐々に詳しくなればよいのです。
p.19の修正は全般的に伸びているが、前後のページにもp.19自体にも余裕はない。細かく削ることが必要かも。
p.20
- また、ユーザーが解決したい課題を投稿し、それにほかのユーザーが解決方法を投稿できるWebサービス 注1 が出現したことで、プログラミング上の具体的な課題を検索するとかなり高い確率で解決策が見つかるようになりました。
+ また、質問回答サービスが出現しました。これはユーザーが解決したい課題を投稿し、ほかのユーザーが解決方法を投稿できるWebサービスです。この出現によって、プログラミング上の具体的な課題を検索すると、高い確率で解決策が見つかるようになりました。
- 「英語で検索して質問解答サイトを見る」といった新しい情報収集手段も生まれています。
+ 質問回答サイトは書籍とは異なる新しい情報源です。新しい情報収集の手段が生まれたのです。
-紙の本の時代は、全体像を把握し「このあたりにあるはずだ」と考えられる能力がとても重要でした。
+紙の本の時代は、全体像を把握することがとても重要でした。検索コストが高く、求める情報がどの辺りにあるか絞り込むことが必要だったからです。
- たくさん勉強したあとでたどり着くゴールが「全体像を把握」なのだ、という誤解です。
+ たくさん勉強したあとで、ようやく全体像を把握できる、という誤解です。
p.21 脚注
- 目的の具体化は、本章の前節の内容と同じですね。
+ 目的の具体化は、本章の前節で解説した「知りたいところから学ぶための前提条件: 目標が明確化されている」と同じですね。
「内容」を具体的に。
p.23
- 「論文を詳細に理解する」という不明確で遠いゴールの代わりに、時間を区切って明確なゴールを作り、大まかな構造を頭に入れようとしたわけです。
+ 「論文を詳細に理解する」という不明確で遠いゴールの代わりに、時間を区切ることと、大まかな構造だけに集中することで、近くて明確なゴールを作ったわけです。
「ゴールの代わりに〜大まかな構造を頭に入れようとした」だと、ゴールを頭に入れようとしていたみたいなので。
p.23
- 一方で、何かを議論しようとしたときに、参照すべき条文がどのあたりにあるかがわかり、そこを読むことができなければいけません。
+ 一方で、何かを議論しようとしたときに、あなたは条文を参照する必要があります。なので、その条文がどのあたりにあるかがわからなければいけません。
- 違いはツリー状に表現して、上下の階層をすぐに見つけられるように描くことと、1枚の大きな紙にして、ページをめくらずに全体を見られるようにするところです。
+ 違いは情報の形です。情報は、上下の階層をすぐに見つけられるように、ツリー状に描かれます。また、1枚の大きな紙にして、ページをめくらずに全体を見られるようにします。
- 授業の間、ある特定の条文に言及するときには何度もこのマップを見て、その条文が「どこにあるのか」を確認します。たとえば第570条「売主の瑕疵担保責任」は、第3編「債権」の中の、第2章「契約」の中の、第3節「売買」の中にある、というようにです。条文に言及するたびに、3編債権 2章契約 3節売買 570条......と口ずさむので、上位階層の情報は何度も目にすることになり、自然に頭に入ります。膨大な情報を脳内に体系立てて保存するうえで、地図を毎回根元からたどるのは有用な方法だと思いました。
+ 授業の間、ある特定の条文に言及するときには、このマップを見てその条文がどこにあるのかを確認し、上の階層から順に発声します。たとえば第570条「売主の瑕疵担保責任」は、第3編「債権」の中の、第2章「契約」の中の、第3節「売買」の中にあります。なので「3編債権 2章契約 3節売買 570条 売主の瑕疵担保責任」と発声します。
+ この活動によって、上位階層の情報は何度も目にすることになります。ツリーの根に近い情報ほど頻繁に出現します。なので、それを自然に覚えます。膨大な情報を脳内に体系立てて保存するうえで、根元から毎回たどるのは有用な方法です。
より具体的にした。
p.25
- 大雑把に情報収集できないなら、片っ端からやるしかありません。大雑把な全体像の把握ができない状態は、理解を組み立てるための材料が足りていません。大まかな説明を読んでも頭の中でイメージが湧かないなら、イメージするための知識がそもそも欠けているのです。
「何から学べば効率が良いか」と考えて足踏みをしてしまうことはよくあります。しかし、最初は「何から学べば効率が良いか」を判断する材料すら持っていません。そこで足踏みをしないで、まずは材料を手に入れることが必要です。
+大雑把に情報収集できないなら、片っ端からやるしかありません。大雑把に全体像の把握をしようとして目次を読んでも、何もわからないことがあります。この現象は、新しいものを学ぶ時にはしばしば起こります。これは、理解を組み立てるための材料が足りていないことによって起こります。目次に書かれている言葉は、しばしば、すでに抽象化がされています。もしあなたがその抽象化された概念を支えることのできる知識を持っていなければ、目次を読んでもそれを理解することができません。
私たちはしばしば、何から学べば効率が良いかを考えてしまいます。しかし、何から学べば効率が良いかを判断する材料すら持っていない時に、それを考えようとすることは時間の浪費です。まずは材料を手に入れることが必要です。
25分でたとえば5ページ写せたとします。〜もう写経は必要ないと思ったタイミングで写経をやめてよいのです。
全般的に再構成
25分でたとえば5ページ写せたとします。教科書が300ページなら、全部を写経するのに25時間かかる見積もりになります。この見積もりを見て、あなたは「25時間かけなければいけない」と思ってやる気をなくすかもしれません。しかしそれは間違いです。
写経は目的ではありません。目的は、あなたが教科書を理解できるようになることです。写経は自転車に乗れるようになるまでの補助輪のようなものです。本を読んでさっぱりわからない状態は、自転車に乗って倒れてばかりで前に進めない状態と同じです。補助輪を付けることで前に進めるようになります。そして、補助輪付きで走っているうちに自転車に乗る技術が向上し、補助輪なしで走れるようになります。
読んでも理解できない本を漠然と眺めても、何かを得たという実感が得られません。一方、写経をすれば、あなたの書いたものが形になって残ります。こちらの方がやる気を維持しやすいです。ゴールを明確にすることの効果です。そして、25時間後をゴールにするのではなく、25分後をゴールにする方がやる気を維持しやすいです。「チュートリアルはゴールを近くする」(10ページ)で学んだ、ゴールを近くすることの効果です。
写経をしているうちに、どんどん効率的な学びができるようになり、写経の必要性を感じなくなってきます。なぜ写経を補助輪にたとえたのかが実感できるでしょう。補助輪は、あなたが「もう補助輪は必要ない」と思ったタイミングで外してかまいません。つまり、あなたが写経する必要がないと思ったタイミングで写経をやめてよいのです。
p.31
- 凄腕のプログラマーは、プログラムにトラブルが起きたときに、実際のソースコードを見る前に「こういう処理のあたりに問題があるのではないか」と予想して、正しく当てることがあります。これはなぜできるのでしょうか?
+ よいプログラマーは、プログラムに問題が発生した時に、その問題の原因をソースコードを見ることなく予測できることがあります。なぜそれが可能なのでしょう?
p.31 この節は分割されていない一つの塊になっているが、次のモジュールの節と同じように小見出しを入れて分割した方がわかりやすくなると思う。
モデル・模型
モデルは、現実世界のしくみを説明するための簡素化された表現です。現実世界で起きている現象は複雑なので、人間の限られた認知能力でも扱えるように、重要でない部分を削ぎ落としてシンプルにするわけです。たとえば高校物理では空気抵抗や摩擦はないものとします。現実世界には存在する空気抵抗や摩擦を無視して問題をシンプルにし、高校生が扱えるようにしているわけです。
モデルは現実の一部を抜き出したものなので、現実と完全一致はしません。このことを指して「すべてのモデルは間違っている」注31と言います。
モデルを使うと低コストで実験ができる
モデルの価値は、現実との一致度ではありません。モデルの操作が、現実を直接操作することに比べてどれくらい低コストになるかです注32。
特に数式を使って表現されたモデルのことを「数理モデル」と言います。数式やプログラムの形でモデルを作ると、実験がやりやすくなります。物理的な実験装置などが必要ないからです。
凄腕のプログラマーは、プログラムにトラブルが起きたときに、実際のソースコードを見る前に「こういう処理のあたりに問題があるのではないか」と予想して、正しく当てることがあります。これはなぜできるのでしょうか?彼の脳内にはそのプログラムのモデルがあり、そのモデルのいろいろな場所を壊したときにどんな現象が起きるかを脳内で実験できるのです。そして壊した結果として起きる現象が、実際に観測された事実に似ているものを選び出しているのです。
p.39
- 新しい気付きのためには、「同じ」でも「違う」でもない、一部同じで一部違う「似ている」ものどうしを比較する必要があります。
+新しいパターンを発見するには、「同じ」でも「違う」でもない、一部同じで一部違う「似ている」ものどうしを比較する必要があります。
「気づき」という未定義語が出てきているが、既存の言葉で最も近いのは「パターンの発見」なのでそれに寄せた。
p.40
- たとえ話は、抽象的なことを伝えるときによく使われます。
+ たとえ話は、抽象的な概念を伝えるときによく使われます。
「こと」は何を意味しているのか曖昧なので、具体的にした。
p.41
- 共通部分を見つけるのはとっつきやすいのですが、「あれも似ている、これも似ている」と単に情報を集めただけにもなりやすいです。ある程度慣れてきたら、違いに注目したり、一見矛盾しているように見えるものについて考えると、考えが進みやすいです。
+ 共通部分を見つけるのはとっつきやすいですが、「あれも似ている、これも似ている」と単に情報を集めただけにもなりやすいです。違いに注目したり、一見矛盾しているように見えるものについて考えると、より抽象化につながりやすいです。
p.43
- 自分でパターンを発見しなくても、パターンが書いてある本を読めばよいのではないか、と思うかもしれません。一見合理的に見えますが、実際には「ピンとこない」「抽象的でよくわからない」などの感想を持つことも多いように思います。
+ あなたは、自分でパターンを発見しなくても、パターンが書いてある本を読めば習得できると思うかもしれません。しかし、実際にパターン本を読むと、しばしば抽象的で難しく感じます。パターン本を読んでもパターンを習得できないことがあるのです。
「よい」が曖昧なので明確化した。
p.43 脚注
- 似たコンセプトとして、空腹の人に魚を与えても1日しか空腹をしのげないから、魚を与えるのではなく釣りのしかたを教えよ、という表現もあります。
+ 似たたとえとして、空腹の人に魚を与えても1日しか空腹をしのげないから、魚を与えるのではなく釣りのしかたを教えよ、とも言われます。
p.44
- 一方で「なぜ似ているのか」を自分の言葉で説明したり、別の例に変えたり、自分の解決したい問題が公開伴暗号によって解決すると気付いて応用することは、公開鍵暗号を理解していない人にはできません。
+ 一方で、公開鍵暗号を理解していないなら、どう南京錠に似ているのかを自分の言葉で説明できません。別の例に変えられません。自分の解決したい問題が公開鍵暗号で解決すると気付けません。知識を応用できません。
- 本当はわかっていないのにわかっていると思い込んでしまうことは、よく起こります。その間違いに気付いて学びを進めていくためにも、理解を検証することが大事です。
+ 私たちはしばしば理解の勘違いをします。本当はその概念を理解していないのに、理解したと感じてしまいます。この勘違いに気づいて、理解を改善していくために、自分が理解しているかを検証することが大事です。
「間違い」「学びを進める」が何を指すのか明確化。
- あなたが何かをわかったような気持ちになったとしても、本当にわかっているという保証にはなりません。あなたが正しいと思っているあなたの脳内のモデルが本当に正しいかどうかは、その脳内モデルを実際に使って、その結果を観察して検証しなければいけないのです。
+ あなたが何かをわかったような気持ちになったとしても、本当にわかっているという保証にはなりません。わかったような気持ちは、あなたの脳内で仮のモデルが作られた時に起こります。そのモデルが正しいかどうか検証する必要があります。検証は、そのモデルを実際に使って、その結果を観察することで行われます。
p.45
-プログラミングの学習は、とても検証がやりやすい分野です。...ものづくりという点で似ている、木工で椅子を作ることと比べてみましょう。...もう一つ、絵を描くことと比べてみましょう。...
+ プログラミングは、理解の検証が比較的やりやすい分野です。...他の領域の理解と比べてみましょう。木工もものづくりだという点で、プログラミングに似ています。...もう一つ、他の領域の理解と比べてみましょう。デッサンもものづくりです。...
木工の段落
他の領域の理解と比べてみましょう。木工もものづくりだという点で、プログラミングに似ています。たとえば、木工で椅子を作っていて、木を切った後で、うまく組み上がらないことに気付いたとしましょう。なぜ組みあがらないのか調べて、間違えて木材を必要な長さよりも短く切っていたことがわかったとしましょう。その木材はもう使い物にならないので、新しく切るところからやりなおしです。木工と比べて、プログラミングはデジタルデータを使ったものづくりなので、試行錯誤のコストがとても安いのです。
p.48
- 実際のデータ、直接経験から「あっ、こういうパターンがありそうだ」と直感的に発見するものです。
+ 具体的な情報を観察しているうちに「あっ、こういうパターンがありそうだ」と直感的に発見するものです。
ここではアインシュタインの考えとこの本の間の対応を説明しているので、アインシュタインの用語ではなくこの本の用語を出して対応づけたほうがいい。
- 「作って検証」(★ページ)では、理解をもとに何かを作ってみて、それが期待どおりに動くかどうかで理解の正しさを検証する話をしました。理解が公理Aに対応し、その理解をもとに「こう作ればこう動くはずだ」と具体的な主張Sが作られ、それが実際にその通りに動くか直接経験Eと照らし合わせることで検証するわけです
+「作って検証」(★ページ)では、プログラムを作ることによってあなたの理解を検証する話をしました。理解は公理Aに対応します。あなたは自分の理解に基づいて、具体的なプログラムを作ります。これが具体的な主張Sに対応します。次に、あなたはこのプログラムが期待した通りに動くかどうかを観察します。プログラムの具体的な挙動は直接経験Eに対応していて、それと照らし合わせることによって検証するわけです。
- Einsteinは4のステップも直感に属すると考えました。Sの中に現れる概念と、直接的な経験の間の関係が論理的でない、たとえば、dogという言葉と犬を見たときに私達が直接経験することとの対応付けに根拠がないからだ、とのことです。これは「すべてのモデルは間違っている」と関連する話で、モデルは直接経験とは異なるものなので、新しく観測された直接経験が特定のモデルに対応付くものなのかそうでないのかを論理的に言うことはできないということかと思います。
+ Einsteinは4のステップも直感に属すると考えました。Sの中に現れる概念と、直接的な経験の間の関係が論理的でないからです。たとえば、dogという言葉と犬を見たときに私達が直接経験することとの対応付けは論理的な根拠を持ちません。この考えは「すべてのモデルは間違っている」と関連する話です。モデルは現実世界の現象自体とは異なるものなので、新しく観測された現象を特定のモデルで解釈するかどうかは、論理的に決まることではなく、人間の主観的な選択なのです。
p.50
- たとえば、料理の得意な人が料理をするときには、鍋を火にかけて素材に火が通るのを待っている間に素材を切るのに使ったまな板を洗ったり、火が通ったものを盛り付けるための皿を準備したりできます。でも、料理を学びはじめたばかりの人はそれができません。得意な人は、火が通るまでの待ち時間の長さや、まな板を洗うのにかかる時間の長さを把握しています。だから「火が通るまでの待ち時間の間にまな板を洗える」という判断ができます。学びはじめたばかりの人はこの判断ができないので、並行処理ができません。
+ たとえば、料理の得意な人は複数の料理タスクを同時に実行できます。素材を加熱している間に、素材を切るのに使ったまな板を洗ったり、加熱した素材を盛り付けるための皿を準備したりできます。でも、料理を学びはじめたばかりの人はそれができません。得意な人は、素材の加熱にかかる時間や、まな板を洗うのにかかる時間を把握しています。だから素材を加熱している待ち時間の間にまな板を洗うことができると判断できます。学びはじめたばかりの人は時間を把握しておらず、この判断ができません。なので、並行処理ができません。
- 複数のタスクを並行で進めているように見えるときでも、1つの瞬間には1つのタスクをしていて、切り替えながら実行しています。複数のタスクを並行で実行することは、「タスクの切り替えの意思決定」という追加のタスクを抱えることになります。あなたが複数のタスクをやろうとして、やる気が出なかったり頭が混乱したりしているなら、まずはやることを1つに絞り、1つずつ片付けていきましょう。
+ 複数のタスクを並行で進めているように見えるときでも、私たちはある瞬間には1つのタスクだけをしています。私たちはタスクを素早く切り替えているのです。この切り替えコストはゼロではありません。複数のタスクを並行で実行することは、「タスク切り替えの意思決定」という追加のタスクを抱えることになります。この切り替えタスクのコストが、慣れた人は低く、不慣れな人は高いのです。もしあなたが複数のタスクをやろうとして、やる気が出なかったり、頭が混乱したりしているなら、まずは1つに集中し、1つずつ片付けていきましょう。
p.53
- そして部屋が散らかっている人向けのよくあるアドバイスの一つが、「とにかく片っ端から捨てろ」です。
+ 部屋が散らかっている人向けのよくあるアドバイスの一つが、「とにかく片っ端から捨てろ」ですが、しばしばうまく機能しません。
悪い例を出して、それからよい例を出す、という構造なのだけども、よい例が次のページに行ってしまっているので構造がわかりにくいから先に釘を刺しておく。
p.54
- 「部屋全体」を片付けることは高コストなので
+ 「部屋全体」を片付けることには時間がかかるので
この場合のコストは時間コストなので明記した
p.55
- こういうシチュエーションで、タスクに優先順位を付けようとするケースがよくあります。
+ このような場合、タスクに優先順位を付けるようアドバイスされることがしばしばあります。
- ソートの計算量
+ 並べることの大変さ
発想はソートの計算量から来てはいるが、それを知らない読者にとって「ソートの計算量」という見出しは適切ではない。
p.56
- 実際には多くの人が、「どちらから先にやろうか」と考えて、3秒以上の時間を使う経験をしているでしょう。
+ 実際には、どちらのタスクを優先するか悩んで、しばしば3秒以上の時間を使うことでしょう。
- 1次元の値に対しては素朴な大きさの定義があり、多くの人がそれに同意しているので食い違うことが少ないです。
+ 1次元の値に対しては素朴な大きさの定義があり、多くの人がそれに同意しているので、大きさについての意見が食い違うことが少ないのです。あなたは2と5ではどちらが大きいと思いますか?もちろん5ですよね。
「食い違う」の目的語を追加。例を追加。
p.57
- xとyが同じくらい重要だと考えてx + yで比較するならCが一番重要です。xがyの2倍重要なら、5 * 2 + 2 == 4 * 2 + 4なのでBとCの重要度が同じになります。
+ xとyが同じくらい重要だと考えるなら、x + yの大きさで比較することになるので、Cが一番重要です。xがyの2倍重要だと考えるなら、x * 2 + y で比較することになります。すると、5 * 2 + 2 == 4 * 2 + 4なのでBとCの重要度が同じになります。
- 事前に話し合っておくことで、時間がなくてタスクを取捨選択しないといけない状況下で、何を優先すべきかの議論に時間が取られるのを防ぐことができます。
+ しばしば、すべてのタスクを実行する時間がなく、実行するタスクを選ばなければいけない状況が起きます。事前に話し合っておくことで、この時間がない状況でどのタスクを優先すべきかの議論に時間が取られるのを防ぐことができます。
「何」が不明瞭なので具体的にした。また状況を明確にした。
- 本当にそれでよいのでしょうか?
+ 本当にそれでよいのでしょうか?事前に定めた優先順位は正しいですか?
何を疑問視しているのか明確化した。
before
この議論はタスクの重要度は独立していることを仮定していますが、現実のソフトウェア開発では「タスクDをやればタスクAのxが増える」とか「タスクEをやるとタスクBの実装コストが下がる」とか「タスクFとGはバラバラに実装するより、1人の人がまとめて実装したほうが実装コストが安い」など依存関係が複雑に絡み合っています。
after
この議論はタスクの重要度が独立していることを仮定しています。しかし、現実のソフトウェア開発ではそうではありません。例えば以下のような現象が起きます。
タスクDをやればタスクAのxが増える。
タスクEをやるとタスクBの実装コストが下がる。
タスクFとGは、バラバラに実装するより、1人の人がまとめて実装したほうが簡単。
現実世界のタスクは互いに依存しあっていて、複雑です。
文章で書くよりも箇条書きの方がよい。
p.58
- 実際に何人かの人に聞いてみると「何回か試して、一番良かったものを選ぶ」という回答がありました。
+ 実際に何人かの人に聞いてみると「それぞれのスロットマシンを何回か試して、一番結果が良かったものを選ぶ」という回答がありました。
- 私は選択肢に「スロットをプレイしない」も加え、600体のエージェントが1,000回プレイをする、というシミュレーション実験を行いました。
+ 私は3つのスロットマシンがある環境で、600体のエージェントが1,000回の意思決定をする、というシミュレーション実験を行いました。意思決定の内容は、各々のエージェントが、3つのスロットマシンのいずれか、もしくは「プレイしない」の4つの選択肢から1つを選ぶ、というものです。
- 各エージェントは、まず各スロットを3回ずつプレイして、それ以降は過去の経験に基づいて一番期待値の高い選択肢を選ぶ、というアルゴリズムで動くようにしました。スロットの中には0.3の確率で当たりが出る「お得なスロットマシン」を用意しました。もちろん各エージェントはそのことを知りません。エージェントたちは試行を通してお得なスロットマシンを発見できるでしょうか?
+ 各エージェントは、まず各スロットマシンを3回ずつプレイします。そして、それ以降は自分の過去の経験に基づいて、一番期待値の高い選択肢を選びます。スロットマシンの中には0.3の確率で500円の当たりが出るものを用意しました。このスロットマシンの期待値は150円です。100円をこのスロットマシンに入れるのはお得なので、このスロットで遊び続けるのが最適解です。もちろん各エージェントは、そういうスロットマシンが存在することも、どれがそのスロットマシンなのかも知りません。エージェントたちは経験を通してお得なスロットマシンを発見できるでしょうか?
- 実験の結果は、過半数57%のエージェントがお得な選択肢に気付かず「スロットをプレイしない」を選ぶという結果になりました。
+ 実験の結果、過半数のエージェントは、最適なスロットマシンを発見できませんでした。彼らの大部分は「スロットをプレイしない」を選びました。
全体の66%のエージェントが最適なスロットマシンを発見できず、全体の57%のエージェントが「スロットをプレイしない」を選んだ。細かい数字は重要ではないので削った。
p.59
- この問題を、強化学習の分野では「探索と利用のトレードオフ」(exploration exploitation tradeoff)と呼びます。「過去の経験から一番良いと思う行動」ばかりをしていたのでは、もっと良い行動を見つけることができません。それは探索が足りないのです。一方、もっと良いものがあるかも!と「未経験の行動」ばかりをしていたのでは、過去の経験が活かせません。それは利用が足りないのです。
+この問題を、強化学習の分野では「探索と利用のトレードオフ」(exploration-exploitation tradeoff)と呼びます。過去の経験から一番良いと思う選択肢ばかりを選んでいたのでは、もっと良い選択肢を見つけることができません。それは探索が足りないのです。
+一方、もっと良い選択肢を探して、未経験の選択肢ばかりを選んでいたのでは、過去の経験が活かせません。それは利用が足りないのです。
「行動」は強化学習の用語で「選択肢を選ぶ」と近い意味なのだけども、伝わらないと思うので開いた。
p.61
たとえばコンピュータによる囲碁や将棋でよく用いられるUCB1アルゴリズムでは、
ここの手前に「UCB1アルゴリズム」と見出しを追加した方が良いのでは
- たとえばコンピュータによる囲碁や将棋でよく用いられるUCB1アルゴリズムでは、不確かであることをポジティブに評価する項を足してから、選択肢を比較します。
+ UCB1アルゴリズムは、コンピュータによる囲碁や将棋の思考エンジンでよく用いられるアルゴリズムです。このアルゴリズムは、不確実な状況にどう対処するかのヒントになります。...
なんでUCB1の話をするのかを先に説明。
- Aの信頼区間が広いのは、現時点までの平均よりもずっと大きいかもしれないし、ずっと小さいかもしれない、ということです。
+ Aの信頼区間はBよりも広いです。これは、Aの不確実さが高いからです。Aをやることのメリットは、現時点までの平均よりもずっと大きいかもしれないし、ずっと小さいかもしれない、ということです。
- この考え方を管理の話に引き戻して考えると、そのタスクをやることで平均的に何が得られるかで判断するのではなく、最良の場合に何が得られるかで判断するということになります。
+ この考え方をタスク管理の話に引き戻して考えると、そのタスクをやることで平均的に何が得られるかではなく、最良の場合に何が得られるかでそのタスクをやるかどうか判断しよう、となります。
p.61
before
そしてCohnは、まず金銭価値が高くリスクも高いフィーチャから実装し、次に金銭価値が高くてリスクが低いフィーチャを実装し、最後に金銭価値が低くてリスクも低いフィーチャを実装せよ、金銭価値が低くてリスクが高いフィーチャは実装するな、と主張しました。
after
そしてCohnは、以下のように主張しました。
まず金銭価値が高くリスクも高いフィーチャから実装せよ。
次に金銭価値が高くてリスクが低いフィーチャを実装せよ。
最後に金銭価値が低くてリスクも低いフィーチャを実装せよ。
金銭価値が低くてリスクが高いフィーチャは実装するな。
p.63
- 「まず基地を作る」(★ページ)で、まずは「今日やらないといけないタスク」を最優先にしましたが、これは本当に正しいのでしょうか?その「今日やらないといけないタスク」は、本当にすべて「緊急で重要」なのでしょうか?これを考えなおし、重要でないものにNoと言うことが必要です。
+ 「まず基地を作る」(★ページ)では、まずは「今日やらないといけないタスク」を最優先にしました。日々忙しいなら、あなたはその「今日やらないといけないタスク」が、本当にすべて重要なタスクであるかを疑う必要があります。重要でないものを見つけ、それにNoと言うことで時間を作るのです。
「正しいのでしょうか?」が何に対して疑問を持っているのか明確ではなかったので明確化。最後の「必要です」も何に必要か明確でないので明確化。
p.64
- 「緊急」と「最近通知されたもの」は混同しがちです。
+ 私たちはしばしば「最近通知されたもの」を「緊急」と混同しがちです。
- タスクを書き出していないなら「すぐやらないと忘れてしまうかもしれない」という不安感から、やっていた作業を投げ出して着手してしまうかもしれません。
+ もしタスクを書き出していないと、あなたは通知されたタスクを忘れてしまうかもしれないという不安を感じます。この不安感から、そのタスクをすぐにやらないといけないという焦燥感が生まれます。あなたは、今やっていた重要だが緊急ではない作業を投げ出して、通知されたタスクに着手してしまうかもしれません。
- そうではなく❸を止めることができないか考えましょう。
+ そうではなくあなたにとって重要ではない❸のタスクを止めましょう。
- たとえば入ってきたタスクが他人からの依頼なら、依頼を引き受けることの交換条件として、別の❸のタスクを止めることができないか交渉する余地があるかもしれません。
+ たとえば入ってきたタスクが他人からの依頼なら、依頼を引き受けることの交換条件として、別の❸のタスクを止める交渉ができることがあります。
具体的にはある人が「Aをやって」って言った上に「Bをやって」と言ってきた場合、「AとBとどちらが優先か?」って質問して優先順位を決めさせれば、優先されなかった方は実質的には「今はやらない」という決定がされたことになる。
- Coveyは、何が重要かはあなたのミッションや価値観によって決まると言いました。しかし、自分のミッションや価値観が言語化できていなければ、何を基準にして決めたらよいかがわかりません。価値観はどうやって言語化するのでしょうか?
+ Coveyは、何が重要かはあなたのミッションや価値観によって決まると言いました。言葉を使って思考をするためには、あなたのミッションに、言葉というハンドルがついている必要があります。ミッションはどうやって言語化するのでしょうか?
「重要さを何を基準にして決めたら良いかわからない」が問題なのではなく、概念に対するハンドルがないと、それを操作できない、というところが問題なので。
第3版では第2文が変わっているけど、第1文をafterで置き換えるので良さそう。ただし紙面に収まらなさそうな気配があるのであとで議論が必要。合わせて以下も議論
- しかし、明確にしろと言われてもぱっと言語化できない人のほうが多いでしょう。そのような状態で適当に決めたとしても、普段の活動をするうえでの判断にはうまく結び付かなかったりします。
+ しかし、多くの人はまだ自分のミッションを自分の言葉でを語ることができていません。その状態で慌てて適当に決めたとしても、その言葉は日々の活動とうまく結びつきません。
「適当に決める」が曖昧。
- 人生の目標は、ピラミッドの頂上部分です。これを先に決めて、そこから噛み砕いて個々の行動を決めることを、頂上から降りてくるという意味でトップダウンと呼ぶことにしましょう。GTDのAllenはトップダウンとは逆に、下から上がっていくボトムアップを推奨しました 注15。この場合の一番下の部分は、日々行う行動です。 +人生の目標は、ピラミッドの頂上部分です。人生の目標についての考え方には2つの方向があります。降りる方向と登る方向です。人生の目標を先に決めて、そこから噛み砕いて日々の行動を決めることを、頂上から降りてくるという意味でトップダウンと呼ぶことにしましょう。GTDのAllenは逆に、下から上がっていくボトムアップを推奨しました 注15。 自分が行なっている日々の行動を観察し、事後的にそこから共通のパターンを発見します。1章で学んだ情報収集とパターンの発見です。このパターン発見による抽象化を通して、最終的に人生の目標が言語化されるのです。
1章との関連を明記した。
p.67
- タスクが大きすぎるのではないでしょうか?
+ タスクが大きすぎます。ゴールが遠すぎるせいでやる気が出ないのです。(脚注: 関連: p.10「チュートリアルはゴールを近くする」)
-- タスクが大きすぎてゴールが遠いことや、タスクの大きさが見積もれていないせいで漠然と大きそうに思うことが、腰を重くしているようです。
+ (前の段落と結合)彼らは、タスクの大きさが見積もれていないので、とても大きいと感じ、それがやる気を損ねているのです。
- 私が今まさに取り組んでいる「1冊の本を書く」という知的生産タスクも、大きすぎて時間が見積もれないタスクです。
+ 私は今まさに「1冊の本を書く」という知的生産タスクに取り組んでいます。このタスクも、大きすぎて時間が見積もれません。
- こういう大きなタスクの状態では多くの人は筆が進まないので、「1章ごとに締め切りを設定する」というタスク分割をするのが一般的です。
+ 書籍の執筆全体を大きなタスクととらえていると、やる気を保つことが困難になります。そこでタスクを分割し、章ごとに締め切りを設定することが一般的です。
脚注
- ここは正確には、4時間以内に終わらなさそうと答えた人のうち、最初の25分でやることを答えられた52%の、それをやったらどうかと言われてやる気が出た人58%を取り除いたものが母数です。
箇条書きに砕くと下記のようになるが、脚注にこれを入れるのは難しそう。
正確には、分母は下記のA-Cです。
A: 4時間以内に終わらなさそうと答えた人
B: 52% of A: 最初の25分でやることを答えられた人
C: 58% of B: それをやったらどうかと言われてやる気が出た人
p.68
before
この大きなタスクのやる気を出すために、私は「本を書く」という大きなタスクを、「アイデアをメモしてふせんを作る」「ふせんを並び替えて構成を考える」「構成をもとに原稿に起こす」という3つのフェーズに分割しています。
after
この大きなタスクのやる気を出すために、私はタスクを下記の3つのフェーズに分解しました。
アイデアをメモしてふせんを作る
ふせんを並び替えて構成を考える
構成をもとに原稿に起こす
- 人間が集中力を持続できる時間には限界があると昔から考えられており、たとえば小林 忠嗣は人間の集中力が持続するのは最大で2時間だから、業務をブレイクダウンした結果が2時間以上のタスクになるなら、そのタスクをさらに分解してそれぞれのゴールを明確化する必要がある、と主張しています。
+ 人間が集中力を持続できる時間には限界があると考えられています。たとえば小林 忠嗣は、人間の集中力が持続するのは最大2時間であり、もしタスクにかかる時間が2時間以上なら、そのタスクを小さなタスクに分解して、それぞれのタスクのゴールを明確化する必要がある、と主張しています。
p.69
2.3.2.1 集中力の限界 の中で分量的に「山道のハイキングをイメージしてみましょう。」の手前に小見出しがあった方が良いのでは。「ハイキングのたとえ」とかで。
p.70
- 連続的なものとしてとらえられがちな「時間」を、決まった長さで切り取り「ポモドーロ」と名前を付け、その「個数」でタスクの大きさを見積もるわけです。
+ 「時間」は連続的なものととらえられがちです。これを決まった長さで切り取り、それにを「ポモドーロ」と名前を付けます。これによって、ポモドーロの「個数」でタスクの大きさを見積もれるようになります。
箇条書き
今日1日分のタスクリストを作る
タスクの大きさをポモドーロの個数で見積もる
+ タスクの開始時に1ポモドーロ(25分)のタイマーを開始する
1ポモドーロの間はタスクの変更をせずに1つのことに集中する
もし自分または他人による割り込みが発生したらそれを記録する
1ポモドーロ集中した状態を継続できたら、立ち上がって数歩歩くなどして視点を切り替える 注21
自分にとって当たり前すぎて、未経験の人向けの一番大事なところを書き落としていた。
-注20 25分という長さには何か深遠な意味があるのかと勘違いする人もいるようですが、長さには意味はありません。Staffanは25分間の集中ができない人向けには、10分や15分に短くしてみることを勧めています。
+ 注20 25分という長さには何か深遠な意味があるのかと勘違いする人もいるようですが、長さには意味はありません。もしあなたが25分間集中ができないなら、5分や10分に短くしてみることを勧めます。
間接的な言い方をやめて直接的に。時間も短くした。
注21
- もしポモドーロタイマーが鳴らなければ、私は問題に対して視点を近付けた狭い視野のまま、より良い方法に気付かずに悪い方法で作業を続けていたかもしれません。
+ もし私がポモドーロタイマーを使っていなければ、私はより良い方法に気付かずに悪い方法で作業を続けていたでしょう。集中力は、問題に視点を近付け、視野を狭めます。
p.71
- 各タスクが何ポモドーロでできるのかの見積りは、まず1ポモドーロでできそうなタスクの量を見積もってみて、実際にやってみて、ズレを観察することで鍛えます。1ポモドーロで終わると思ったものが終わらなかったり、逆に早く終わったりという経験を積み重ねて、見積り精度が徐々に上がるのです
+ 各タスクが何ポモドーロでできるのかの見積りができるようになるためには、まず自分が1ポモドーロでどの程度のタスクができるかを知る必要があります。1ポモドーロでできそうなタスクの量を見積もってみて、実際にそれをやってみて、ズレを観察することで徐々に見積もり能力が改善されます。1ポモドーロで終わると思ったものが終わらなかったり、逆に早く終わったりという経験を積み重ねて、見積り精度が徐々に上がるのです 。
- 注22 これは理解を検証するために実験をすることとよく似ています。
+ 注22 見積もりと実際にかかった時間のギャップを観察することは、理解を検証するための実験によく似ています。実験では、期待した結果と、実際の結果のギャップを観察します。
「これ」が不明瞭、「似ている」もどう似ているのかが不明瞭。
p.73
- それ以来、時間がかかりそうなメールの返信をする際には、25分のポモドーロタイマーを開始することにした。
+ それ以来、時間がかかりそうなメールの返信をする際には、25分のポモドーロタイマーを開始することにした。時間がかからないと思っても、5分のタイマーを開始することにしました。私の見積もりは間違うことがあるからです。
後半を書かないと説明が片手落ちだよね。
p.74
- 「仕事だからやる」ではなく、「計画だからやる」でもなく、「まずは計測をしよう」というわけです。
+ 仕事だからという理由で時間を使うのではなく、計画だからという理由で時間を使うのでもなく、まずは自分がどういう時間の使い方をしているか計測して明確化しようというわけです。ポモドーロテクニックやタスクシュートにも共通の考え方です。
なぜここでドラッカーに言及しているのかを明確化した。こういう類似性に関して「数ページ前で書いているんだから明記しなくてもわかるだろ」という気持ちで書いてきたけど、実際のところ「開いたページを読む」とか「少しずつ読む」というユースケースでは短期記憶から抜けているので明記したほうがいいなと考え直した。
- 「プログラムを高速化したくなったときには、まずどこが遅いのかを詳細に計測(プロファイリング)するべきだ」
+ 「プログラムを高速化したくなったときには、まずどのコードで時間がかかっているのかを詳細に計測(プロファイリング)するべきだ」
「どこが遅い」を明確化した
p.76
- それは、1回のサイクルによって得られたものが蓄積されるのかどうかによって決まります。
+ それは、1回のサイクルによって得られた知識が蓄積されるのかどうかによって決まります。
「もの」の明確化
p.78
- 具体的には、海馬のNDMA受容体を遮断する薬物を海馬に注入しました。
+ 海馬の機能を破壊するために、具体的には、海馬のNDMA受容体を遮断する薬物を海馬に注入しました。
p.79
- 普通のラットは、直接観察できる「目印の見え方」の情報をもとに、直接観察できていない「足場の場所」の記憶を作り出しているのでしょう。なので、違う場所からスタートしても、すばやく足場にたどり着くことができるわけです。一方、海馬の壊れたラットは、水に落とされたあとどう泳いで足場にたどり着いたか、という具体的な手順を丸暗記しているのでしょう。なので、違う場所からスタートすると、何も学習していないときと同じように足場を探し回ったのです。
+モリスの水迷路の実験では、ラットは足場の場所を直接観察できず、周囲の目印だけが観察できます。普通のラットは、直接観察できる目印の見え方をもとに、直接観察できない足場の場所の記憶を作り出しているのでしょう。なので、違う場所からスタートしても、すばやく足場にたどり着くことができます。
+一方、海馬の壊れたラットは、水に落とされたあとどう泳いで足場にたどり着いたか、という具体的な手順だけを覚えているのでしょう。この方法でも同じ場所からスタートするなら、効率よく足場にたどり着けます。しかし、違う場所からスタートすると、何も学習していないときと同じように足場を探し回る必要があります。
p.83
- 学習を繰り返すとシナプス自体も増えます。
+ 学習を繰り返すとシナプスの数も増えます。
- 海馬を取り除かれた人の事例では、手術の数年前までの記憶を思い出すことはできませんでしたが、会話に支障なく幼少期の記憶も思い出すことができました。
+ 海馬を取り除かれた人の事例では、彼は手術の数年前までの記憶を思い出すことはできませんでした。しかし、会話には支障がなく、また幼少期の記憶は思い出すことができました。
- そして、その記憶が消えるまでの間に同じ刺激が来ると、もうひと手間かけてもっと長持ちする記憶を作ります。
+ そして、その記憶が消える前に同じ刺激が来ると、もうひと手間かけてもっと長持ちする記憶を作ります。
- 記憶は段階的に作られ、繰り返すことによって徐々に長持ちする方法で保存されていくのです。
+ 記憶は繰り返しによって段階的に作られ、徐々に長持ちする記憶に変換されていくのです。
- 繰り返し使うことで徐々に強くなっていくものと言えば、筋肉です。記憶を作ることは、ファイルの保存よりも、筋肉のトレーニングに近いのです。
+ 繰り返し使うことで徐々に強くなっていくものと言えば何でしょうか? 一つの例は筋肉です。記憶を作ることは、ファイルの保存よりも、筋肉のトレーニングに近いのです。
- 脳には、強い恐怖などを感じたときに、一時的に記憶を定着しやすくするしくみがあります。ただ、日常的に記憶のためのツールとして使えるものではないので、説明を割愛しました。
+ 脳は、強い恐怖などを感じたときに、記憶を強く定着します。ただ、この仕組みは日常的に記憶のためのツールとして使えるものではないので、説明を割愛しました。
p.84
- 銘記
+ 記銘
- これは役に立たない刺激を無視するためのしくみですが、同じ文章を繰り返し読まされると、だんだん退屈になってくるのに似ています
+ これは役に立たない情報を無視するためのしくみです。似た作業を繰り返していると、だんだん退屈になってくるのと似ています。
「が」でつなぐほどの関係性がない。刺激→情報、は下と関連
- 脳にとって「役に立つ」とは何でしょうか?それは「報酬が得られる」ということです。
+ 脳にとって「役に立つ」情報とは何でしょうか?それは「報酬が得られる」ということです。
上の段落の反対パターンについて書いていることがわかりやすいように明記。
p.58
- 情報をインプットするときに海馬で発生しているシータ波は、時間を10倍程度に圧縮する働きをしています。
+ 情報をインプットするときに海馬ではシータ波が発生します。このシータ波は、時間を10倍程度に圧縮する働きをしています。
- 具体的な情報から抽象的な情報を作り出すプロセスがここで働いているわけです。
+ 具体的な情報から抽象的な情報を作り出すプロセスが海馬で働いているわけです。
p.86
- 教科書を読んだ日にテストを受けて、7日後に2回目のテストを受けた場合の正解率は47.4%に上がりました。
+ テキストを読んだ日にテストを受けて、7日後に2回目のテストを受けた場合の正解率は47.4%に上がりました。
- テストが行われることやタイミングは被験者には秘密です。
+ テストは抜き打ちです。被験者は、テキストを読むタイミングでは、あとでテストが行われることを知りません。
p.89
- 正解は階段状にAとBが並んでいるので、弱い識別器単独ではうまく識別できない「難しい問題」です。
+ これは単独の弱識別器には難しい問題です。正解では階段状にAとBが並んでいるからです。
- これに挑戦します。
+ どうすれば弱い識別器でこの問題を解くことができるでしょうか?
- 1回目のテストに答えた弱学習器❶は脇に置いて、新しい弱学習器❷を学習します。このとき、前回間違えた問題を重視して覚えるように指示します。2回目のテストでは中央上がAであることを重視して、回答2のように縦に切ると答えたとします。この弱学習器❶と弱学習器❷の回答を合わせて多数決で識別する(今までの回答まとめ2)のですが、中央の2つで2つの識別機の意見が分かれています。なのでこの2つを不正解とします(正誤チェック2)。
+ 1回目のテストに答えた弱学習器❶は脇に置いて、次は新しい弱学習器❷を学習します。
+このとき、前回間違えた問題を重視して覚えさせます。今回は、中央上のがAであることを強調するわけです。
+ 2回目のテストで、弱学習器❷が回答2のように縦に切ると答えたとします。
+ 弱学習器❶と弱学習器❷の回答を多数決で合成します。(今までの回答まとめ2)
+ 今回は中央の2つで2つの識別機の意見が分かれています。なのでこの2つを不正解とします(正誤チェック2)。
p.92
- 主観的な「覚えている感」と、客観的なテストの成績とは一致しないのです。
+ これは88ページで見た「自信はないが成績は高い」という現象に似ています。主観的な「覚えている感」と、客観的なテストの成績とは一致しないのです。
関連があることに気づかないかもしれないので、明記しておく。
p.94
- 私はこの文章を見て、過去の自分はカードに書く問題の作り方が間違っていたことに気付きました。
+ 私はこの文章を読んで、自分の単語カードの作り方が間違っていたことに気づきました。問題の作り方が適切ではなかったのです。
- 20のルールの中で、私が一番大事だと思うのは「ルール4:最小情報原則にこだわる」で、問題を可能な限りシンプルにしよう、というものです。
+ 20のルールの中で、私が一番大事だと思うのは「ルール4:最小情報原則にこだわる」です。問題は可能な限りシンプルにしよう、というルールです。
「もの」の明確化
脚注
- 本当は全部解説したいのですが、原文が22ページあるのでそれだけで1章分になってしまいます。
+ 本当はすべてのルールを解説したいのですが、原文が22ページあるのでそれだけで1章分になってしまいます。
p.98
- わかっていないのにわかったつもりになっていた場合の被害のほうが大きいので、安全側に倒しましょう。
+ 理解は仮説です。わかっていないのにわかったつもりになると、被害が大きいです。仮説を素早く検証しましょう。
p.107
- 本の内容だけが組み立てる材料ではない
+ 本の内容だけが理解を組み立てる材料ではない
目的語が不明瞭
p.109
- 音読の訓練を積んだアナウンサーの聞きやすい音読がおよそこの速度です。読みやすさを気にせずに早口で読めばもう少し早くなるでしょうが、
+ 訓練を積んだアナウンサーの聞き取りやすい音読がおよそこの速度です。聞き取りやすさを気にせずに早口で読めばもう少し早くなるでしょうが、
読みやすさではなく聞き取りやすさ
p.113
- まず「自分は普段読んでいる速度の3倍の速度で読んでも理解度を保てる」という誤った自己像があるわけです。実際に3倍の速度で読んでみたら、理解度が3分の1になります。
+ まず「自分は普段読んでいる速度の倍の速度で読んでも理解度を保てる」という誤った自己像があるわけです。でも、実際に倍の速度で読んでみたら、理解度が半分になります。
p.114
- ある著者の本Xを読むかどうか決める前に、まず歴史の文脈の中でのその本Xの位置付けを知ることができます。
+ ある本Xを読むかどうか決める前に、まず歴史の文脈の中でのその本Xの位置付けを知ることができます。
p.115
- ある著者の本Xを読むかどうか決める前に、まず歴史の文脈の中でのその本Xの位置付けを知ることができます。たとえば哲学者Immanuel Kant(カント)の『純粋理性批判』は、数学者Gottfried Wilhelm Leibniz(ライプニッツ)などが、神が正しいことを前提として理性の正しさを論じたことに対し批判的な立場を取った西洋哲学史の重大な転換点となる書籍です。そこから100年ほど経って、哲学者Friedrich Wilhelm Nietzsche(ニーチェ)が『悦ばしき知識』で「神は死んだ」と言うきっかけになった......という話はまったく本の中身を読まなくても知ることができます。これが「ぜんぜん読んだことのない本」です 注10。
↓
5つの文章に分けた
↓
+ ある著者の本Xを読むかどうか決める前に、まず歴史の文脈の中でのその本Xの位置付けを知ることができます。たとえば哲学者Immanuel Kant(カント)の『純粋理性批判』について考えてみましょう。
+ この本の前には、数学者Gottfried Wilhelm Leibniz(ライプニッツ)などが、神が正しいことを前提として理性の正しさを論じていました。カントはこれに対して批判的な立場を取ったわけです。
+ そのことで、この本は哲学の歴史の中での重大な転換点になりました。
+ そこから100年ほど経って、哲学者Friedrich Wilhelm Nietzsche(ニーチェ)が『悦ばしき知識』で「神は死んだ」と言いました。カントの主張がこの発言のきっかけになったのです。
+ たとえこの本を読んでいなくても、この情報を知ることはできます。これが「ぜんぜん読んだことのない本」に分類されます。
- 次に人に内容を聞くことができます。自分の身近にいる、その分野に詳しい人に聞くのでもよいですし、今の時代なら検索して書評を探すのもこれに相当するでしょう。
+ 本を読んだ他人から情報を得ることもできます。その分野に詳しい友人に聞くこともできますし、今の時代ならインターネットを検索して書評を探すこともできるでしょう。
- 読める以上の本を「しっかり読まなければならない」と考えてストレスを溜めるよりは、より現実的な目標設定です
+ もしあなたが読める以上の本をしっかり読もうと考えると、その考えはストレスを溜め、苦しみを生みます。しっかり読むことを手放す方が、より現実的な目標設定です。
脚注
- なお、私がこの本で内容に言及している本は4回読んでいます。少なくとも1回、企画の段階で「あの本に言及しよう」と思い付ける程度に読んでいて、原稿執筆前に言及したい内容がどのページにあるか把握できる程度に2回目を読み、言及する箇所をじっくり3回目に読んで、読みながら原稿を書くと過剰に詳細になるので本を閉じて原稿を書いて、最後に確認のために4回目を読んでいます。しかし、しっかり通読することだけを読んだとするなら0~1回しか読んでいないことになります。
+ 私はこの本で、多くの本の内容に言及しています。しっかり通読することだけを「読んだ」と呼ぶなら、私はほとんどの本を1回しか読んでいないことになります。具体的にはどのような読み方をしているでしょうか。過去に1回、企画の段階で「あの本に言及しよう」と思い付ける程度に読んでいます。次に、原稿執筆前に言及したい内容がどのページにあるか把握できる程度に2回目を読みます。執筆直前に言及する箇所をじっくり読みます。これが3回目です。読みながら原稿を書くと過剰に詳細になるので原稿を書く時には本を見ません。最後に内容が間違っていないかどうかの確認のために4回目を読んでいます。つまり、大雑把な読み方を1回と数えるなら、最低4回読んでいます。
- 1ページ2秒以下の「見つける」読み方
+ 情報を見つけるために、1ページを2秒で読む方法
と変えた方が目的語が明確だが、長さや他の節見出しとの関連で難しいか
p.115
code:diff:4.3
- 残りの部分は、Fより上の「速い読み方」と下の「遅い読み方」とに分かれます。「見つける」と「組み立てる」のグラデーションで考えると、速い読み方は見つけるほうに重点があります。この見つける読み方を学ぶうえで既存の速読術が参考になるので、2つの速読術を紹介します。
+ 残りの部分は、Fより上の「速い読み方」と、Fより下の「遅い読み方」とに分かれます。読書には「情報を見つける」と「理解を組み立てる」の2つの目的があります。速い読み方は、情報を見つけるほうに重点を置いています。どうやって情報を見つけるかを学ぶために、既存の速読術が参考になります。なので、以下では2つの速読術を紹介します。
p.116
code:diff:4.3 before
レベル1(25分)
本全体に目を通して、目次、各章の見出し、小見出しをチェックする
もう一度本全体に目を通しながらマーク1を探してそこだけを読む
レベル2(+30分)
もう一度本全体に目を通しながらマーク2を探してそこだけを読む
レベル3(+45~90分)
もう一度本全体に目を通し、見出し、小見出しをチェックしながら、マーク3を探してそこだけを読む。
code:diff:4.3 after
レベル1(25分)
まず、目次、各章の見出し、小見出しをチェックする。
次に、本全体からマーク1のついた段落を探し、それだけを読む。
レベル2(+30分)
さらに、本全体からマーク2のついた段落を探し、それだけを読む。
レベル3(+45~90分)
改めて、見出し、小見出しをチェックしながら、マーク3のついた段落を探し、それだけを読む。
p.118
- もしこれが効果を生むとしたら、声を出さずに音読の速度で読む癖が付いてしまっている人に、もっと速い読み方を体験させ訓練させることによって、癖から抜け出すきっかけを作ることによるのではないかと考えています。
+ この読み方は、音読の速度で読む癖が付いてしまっている人に、速い読み方を体験させ訓練させることで、癖から抜け出すきっかけを作ることが主な効果なのかもしれません。
p.121
- 寺田昌嗣は、読書の価値を「本の著者の力」×「あなたの経験値」×「あなたのビジネス力」という3つの力の積だと考え、それを読書に費やした時間で割ったものが読書の投資対効果だ、としています。
+ 寺田昌嗣は、読書の価値を3つの積だと考えました。「本の著者の力」×「あなたの経験値」×「あなたのビジネス力」です。あなたは読書で時間を費やします。これは価値を得るための投資です。読書の投資対効果は、価値を時間で割ったものであり、投資対効果を高めることが大事なのです。
-読書の価値は本だけによって決まるのではない、という考え方です。
+ この考え方の面白い点は、読書の価値が本だけによって決まるのではない、という点です。
- この「あなたの経験値」には、「本から有用な情報を取り出す情報収集力」と「あなたが今までにした経験」と「自分の経験と本から収集した情報をもとにモデルを組み立てる力」が含まれているように思います。また「あなたのビジネス力」には「顧客からの情報収集力」と「経験と情報をもとに顧客のニーズを理解するためのモデルを組み立てる力」と「顧客のニーズを満たしそうなものを作り、顧客に見せて理解を検証すること」が含まれているように思います注17。
+ ここまでの章で使ってきた言葉で表現するなら、「あなたの経験値」は「本から有用な情報を取り出す情報収集力」と「あなたが今までにした経験や学んだことを思い出す力」と「自分の経験と本から収集した情報をもとに理解を組み立てる力」、「あなたのビジネス力」は「顧客からの情報収集力」と「経験と情報をもとに顧客のニーズを理解する力」と「顧客のニーズを満たしそうなものを作り、顧客に見せて理解を検証すること」を含む概念だと感じました。
p.125
- ソースコードの読み方と書籍の読み方には、フォルダ階層や目次に注目するところに共通点があることを学びました。
+ ソースコードの読み方と書籍の読み方には、フォルダ階層や目次に注目するところに共通点があることを学びました。どちらも、階層的な、場所に基づいた情報の整理です。
- 昔の人の、青年期の著作と晩年の著作を読み比べたりすると、意外と内容が変わっていたりします。ならば今年発売された本の著者は、30年後には違う考えている可能性が高いことでしょう
+ 哲学者ヴィトゲンシュタインは、自分が書いた書籍に対して、25年ほど経ってから重大な誤りがあると指摘しました。彼のような頭のいい人でも間違えるのですから、今年発売された書籍の著者も間違えるでしょう。
脚注にしていたが、本文に具体的に書いた方が良いと考えた。脚注は削除。
- 普遍的は正しさ
+ 普遍的な正しさ
p.127
-著者が想定している知識を読者が持っているかどうかも、本の読み方に大きな影響を与えます。
+ 筆者は読者がどんな知識を持っているかを知りません。なので筆者は、いくつかの知識を、読者が持っていると想定します。もし読者が、想定された知識を持っていない場合、その書籍の内容を理解するためには、まず外部の書籍を参照して想定された知識を得る必要があります。
- 私は情報提供サービスが現れることで、著者が「こんなことは紙面を割いて解説しなくてもインターネットで検索すればすぐにわかることだな」と考え、読者に期待する知識の水準が上がると考えています。
+ 私は、情報提供サービスが現れることで、想定される知識の水準が上がると考えています。著者は、たとえ読者がある知識を知らなかったとしても、インターネットを検索してすぐに知ることができる、と考えて解説を省くようになるからです。
p.128
-論の進め方について、登山型の本とハイキング型の本、という切り口もあります。登山型は、概念を積み上げていくタイプの本です。手前をおろそかにするとあとで困ります。ハイキング型は、いろいろな概念を次々と述べていくタイプの本です。
+ 話の進め方については登山型とハイキング型という切り口もあります。登山型の本は概念を一歩一歩組み立てていきます。もしあなたが書籍の前半を理解できなければ、後半を理解することはできません。ハイキング型の本は色々な概念を眺めて歩きます。いくつかの内容を飛ばしても、実害がありません。
p.133
- なぜなら「この本に書かれていること」の総量をあなたは知らないので、自力で「100%理解したかどうか」を判定できないからです。
+ なぜなら「この本で著者が伝えたかったこと」の総量をあなたは知らないので、自力で「100%理解したかどうか」を判定できないからです。
p.135
- 1冊の書籍の内容を抜き出すことではなく、本の内容とそのほかの知識との結合に価値があるケースがあります。
+ 私たちは1冊の書籍の「中」の情報に注意を引かれがちです。しかし、しばしばその本の中の情報と、その本の外の情報との結合に価値があります。
p.137
- 読書の目的をいくつか紹介しましたが、私の一番のお勧めは復習のための教材を作ることを目的とすることです。
+ ここまでで読書の目的を3つ紹介しました。この節ではもう一つの目的を紹介します。それは復習のための教材を作ることです。
過去に紹介したものの中からオススメを選んでいるかのような文章だが、そうではないので、追加することを明示した。また、色々な選択肢を示して、読者が個々人の状況に合わせて取捨選択することを促そうとしているのに「一番のおすすめ」などと言ってはいけないと考え直した。
経営コンサルタントの本田直之は著書『レバレッジ・リーディング』注36の中
で、書籍の中で重要な部分を抜き出し、濃縮して「レバレッジメモ」を作る
べきだ、と提唱しました。このレバレッジメモを繰り返し読んで、さらに
濃縮していくわけです。これは復習のための教材を作っていることに相当
します。
の後に追加
この本を読んで私が実際に作ったレバレッジメモがこれです: 文章の内容の80%は文章の20%にある。20%の時間で80%を取り、レバレッジメモにして原本を捨てよ。繰り返し読んでさらに濃縮せよ。
p.139
- しかし、メモを読み返したときに濃縮もしくは加筆しなければならない設計にしたことで、特に編集するところが思いつかないメモが作業待ちのタスクとしてたまってしまいました。
+しかし「読み返す」を「短くするか、長くする」と定義したせいで、読み返しが苦痛になりました。削ることも加えることもない断片が「読み返すべきもの」のリストに残り続け、その山がやる気を損ねたのです。今思えば、私は読み返しのコストを可能な限り低くするべきでした。編集はコストが高すます。p.95で紹介したAnkiでは、2タップで1枚のカードの処理が完了します。だからこそ、短い隙間時間でも実行できるのです。
p.141
- 公開することで種をまき、フィードバックを受けて徐々に成長していって、時間をかけてあなたの中の理解が大きな木に育つ、という可能性に賭けてみるわけです。
+ 公開することで種をまき、フィードバックを受けて徐々に成長していって、時間をかけてあなたの中の理解が大きな木に育つのです。あなたもこの可能性に賭けてみませんか?
主語が不明瞭だったので。
p.147
-5分で20枚書けたなら、大雑把な見積りとしては25分で100枚準備できる計算になります
+前の章では5分間に時間を区切って書き出しをしました。何枚かけましたか?5分で20枚書けたなら、大雑把な見積りとしては25分で100枚準備できる計算になります。
- 社会人は忙しくて、なかなかまとまった時間がとりにくいかと思います。この書き出し法では、100枚書き終わるまでずっと机の前に座っていることを要求はしていません。
+ あなたが忙しくて、まとまった時間を取ることが難しくても、この書き出し法は少しずつ進めることができます。100枚書き終わるまでずっと机の前に座っている必要はありません。
社会人に限らないからね。
P.152
-なので一人で机に並べることを想定していて、それに合わせてふせんも小さく、ペンも細くなっています。このサイズのふせんはA4の紙に並べて貼った場合に、25枚貼ることができます。
+一人でやる場合には大きい付箋を使う必要はありません。小さい付箋の方が限られたスペースにたくさん並べることができます。そこで私は小さいふせんと、細いペンを使っています。このサイズのふせんはA4の紙に並べて貼った場合に、横なら25枚、縦なら28枚貼ることができます。
p.153
- ふせんを広げて関係のありそうなものを近くへ移動していくという手法を、私は文化人類学者の川喜田二郎が書いた『発想法』で学びました。彼のイニシャルを取ってKJ法と呼ばれています 注18。当時まだ糊付きふせん紙 注19 は発売されていないので、
+ ふせんを広げて関係のありそうなものを近くへ移動していくという手法を、私は文化人類学者の川喜田二郎が書いた『発想法』で学びました。彼のイニシャルを取ってKJ法と呼ばれています 注18。この方法が提案されたのは1960年代で、当時まだ糊付きふせん紙 注19 は発売されていないので、
「当時」がいつだかわからないので加筆
- 情報を書いた紙を移動するKJ法的な手法を経験したことのある人は多いでしょう。
+ 情報を書いた紙を移動する手法を経験したことのある人は多いでしょう。
「KJ法的」は曖昧
p.155
「グループ編成は客観的ではない」の冒頭に1章への言及を追加(英語版からのバックポート)
+ 1章では具体的な情報からのパターンの発見について解説しました。p.47の「まとめ」で紹介したように、アインシュタインは公理が論理ではなく直感によって生まれると考えました。グループ編成はこれに似ています。客観的な論理によって作るのではなく、あなたの主観的な感情に基づいて作るのです。
p.157
>-なぜ分類してはいけないのかを理解することは、KJ法を活用するうえでとても大事です。
+分類という行為が持つ特徴について理解することは、(以下同文)
このあとの章では分類のデメリット2つとメリット1つを解説する。だから「なぜ分類をしてはいけないのか」ではなくて分類とはどういうものであるのかの理解。
p.160
>-川喜田二郎は「関係がありそう」なものを集めろ、としか説明してくれません。これもKJ法を学ぶ人がつまずきやすいところです。「関係」とはいったい何なのでしょう。
>+川喜田二郎は「関係がありそうなものを集めろ」と説明しました。これもKJ法を学ぶ人がつまずきやすいところです。「関係」とは何なのか、掘り下げて考えてみましょう。
-ものごとを分類するときは、似ているものを1つのグループに入れます。つまり分類は「AとBは似ている」という類似関係に注目しているわけです。KJ法で「関係のありそうなものを集める」と言うとき、この「関係」は類似関係だけではありません。
+グループ編成のフェーズで、似たものを集める必要がある、と勘違いをする人がたくさんいます。彼らは類似関係だけをみています。しかし他にも色々な関係が存在します。
この方が「例えば〜という関係がある」に繋がりやすい。
図を追加した
丸ごと加筆した
p.160
-グループ編成の考え方を学ぶうえで、川喜田二郎の「関係のありそうなもの」という表現はつかみづらいです。それを改善しようとして『NM法のすべて』 注25 の著者、中山正和は「対立関係」に注目することを提唱しました。
+「グループ編成」の時に「似たものを集めよう」と考えてしまう既存の思考の枠を壊すには、対立に注目することが有益です。以前わたしが開催したワークショップで、ある参加者がグループ編成に悩んでいました。私が「対立するものも同じグループに入れて良いのだよ、対立関係も関係の一種だから」と言ったところ、そのアドバイスが彼女の既成概念を崩したようで、彼女はとてもよいグループ編成を行うことができました。(改段落)
『NM法のすべて』 注25 の著者、中山正和も「対立関係」に注目することを提唱しました。
-NM法では対立関係に注目しました。KJ法は対立も含めて、どんな関係でもかまいません。グループを作る段階では、その関係がどういう関係であるかを説明できる必要もありません。
+NM法では対立関係に注目しましたが、KJ法では対立も含めてどんな関係でもかまいません。また、グループを作る段階では、その関係がどういう関係であるかを説明できる必要もありません。
この2つの文の間で節を区切って、間に対立は一つだけではないの話を入れたいが、増補版でない改訂でその修正はできないだろうから「また、」を入れるだけにとどめる。 >- 物理的に近い位置にあるふせんは同じスライド上、もしくは時間的に近いスライドで語るイメージです。
>+ KJ法において、物理的に近い位置にある付箋は、プレゼンテーションにおいて、同じスライドか時間的に近いスライドに相当します。
p.163
-この章の冒頭で、まず情報が多すぎるのか少なすぎるのかを識別しようと説明し、ふせん100枚を目安としたのは、これを意識してのものでした。十分な量の情報が書き出されている状況で、表札作りがどう機能するのかを学んでいきましょう。
+この章の冒頭で、まず情報が多すぎるのか少なすぎるのかを識別しようと説明しました。そしてふせん100枚を目標としました。それは、KJ法が、十分な量の情報が書き出されている状況で、表札作りによってそれを圧縮する手法だからです。
「どう機能するのか」って書いてたけども、明記した。
p.171
英語版では各ステップの再掲・目的の確認、そしてその省略が小見出しで書かれているが、まあ第4版には入らないだろうから増補版向けのメモ。
- 川喜田二郎は数個のグループになるまで表札作りとさらなるグループ化を繰り返すことを提案しましたが、それを数回体験してみて良いグループ編成とはどういうものかを理解できれば、普段の作業ではやらなくてよいと思います。私の場合、600枚のふせんから書籍の目次案を作るときには表札作りをしましたが、章ごとに分けた60~100枚程度のふせんは表札を作らずに直接空間配置をしました。
+ 川喜田二郎は数個のグループになるまで表札作りとさらなるグループ化を繰り返すことを提案しました。表札作りは良いグループ編成とは何かを理解する上で有益なので、何度か体験してみることは重要です。ですが、あなたが何度か経験して良いグループ編成とはどういうものかを理解したら、普段の作業では飛ばしてもよいと思います。
+私の場合、600枚のふせんから書籍の目次案を作るときには表札作りをしました。その後、章ごとに分けたことで、ふせんは60~100枚になりました。これに対しては、表札を作らずに直接空間配置をしました。
p.173
-意味について考えるなどの認知的に高度な作業をしたほうが記憶にとどまりやすくなることを解説しました。KJ法は認知的に高度な処理であり
+認知的に高度な作業をしたほうが記憶にとどまりやすくなることを解説しました。文章の意味について考えることは認知的に高度な作業の一つです。KJ法の、意味に関連のある付箋を探すことや、グループを説明する表札を作ることは、認知的に高度な処理です。
p.175
-たとえば3年前に自分が書いた文章を今の自分が見て、今でも重要だと思ったら、今の自分がより良く修正したうえで再度投稿します。
+たとえば3年前に自分が書いた文章を今の自分が見て、今でも重要だと思ったら、その文章は長期的な価値を持っているということです。この文章を改善したり発展したりすることにも価値があるでしょう。
私が上記の「ふせんを取っておくしくみ」を発明する前は、発表が終わったふせんは捨ててしまっていました。
p.172で解説したふせんをA4の紙に貼って保管するしくみを使い始める前、私は発表が終わったふせんは捨ててしまっていました。
発明って言うほどのことはしてない。クリアファイルに入れてるだけ。
正確に言えば「広いポリエチレンシートに展開して貼った状態で保管しておく」を試したものが何件かあるが、これはしわくちゃになってまったくお勧めできない。(と増補版で脚注に追加する)
- 画面サイズがもう2倍程度大きくなれば、画面上でKJ法の空間配置をやることも現実的になるでしょう。
+タブレット端末はピンチ操作による直感的な拡大縮小をサポートしています。この機能は空間の不足を解消しうるでしょう。そう遠くない未来には、きっとモニターは2倍のサイズになり、ペン入力とピンチ操作を受け付けるようになるでしょう。