🎧なはれFM#3 「水×蒸留で、当たり前をアップデートするカクテルを。カクテルスタンド フレくの齋藤さんが、築130年越えの京町家で地下水を使ったお店をオープンするまで」
ロフトワークのプロジェクトスタジオ「なはれ」から、毎月ゲストをお招きし、あるテーマについて濃いディスカッションを行うラジオ番組「なはれFM」がスタート。今回のゲストは、今回のゲストは、カクテルスタンド フレく(以下、フレく)の代表 齋藤隆一(さいとう・りゅういち)さん。京都を拠点に、水をコンセプトにしたカクテルスタンドを作るに至るまでの数々のストーリーをお聞きしました。 https://scrapbox.io/files/66c0165f21a5b2001d4f7934.jpg
・収録日:2024.7.22(月)@なはれ
・ゲスト:カクテルスタンド フレく 代表 齋藤隆一さん(写真左)
・聞き手:株式会社ロフトワーク 村上 航さん(写真右奥)、加藤あんさん(写真右手前)
◉「水」と「蒸留」で作るカクテル
齋藤さんが率いるフレくは、京都・祇園にて期間限定のポップアップストアを“ラボ”として営業しています。2024年10月には、同じく京都・東山五条に新たな拠点を構える予定も。フレくが提供するカクテルで大切にしていることは、水。現在営業中のラボでは、ポリタンクを持って近くの井戸まで足を運び、ほぼ毎日地下水を汲みに行っているのだとか。そのこだわりの地下水と、ヒノキやラベンダーなどさまざまな草花からとった蒸留水やお酒を掛け算し、一つのカクテルを作ります。なんと、フレーバーのついた水だけで100種類もの在庫があるのだとか。彼らの水へのこだわりが伺えます。 https://scrapbox.io/files/66c019e4555f68001d66cc0a.jpg
フレくのカクテルはどのように生まれるのか伺ってみると「まずはストーリーから」と、齋藤さん。テーマをもとに、カクテルの温度やテクスチャー、硬さや喉越しなど、さまざまな角度から想像力を働かせ、そのイメージに合う名前や材料を選んでいくのだといいます。複雑そうに見えるカクテル作りですが、齋藤さんは「すごくシンプルなんです」と続けます。カクテルでは、お酒・酸味・甘味の3つで味の三角形を形成し、その3点がバランスよく混ざりあうと美味しいカクテルが作れるのだとか。そこに苦味や旨味を加えたり、味の三角形のバランスを崩してみたりすることで、味に変化をプラス。「カクテル作りって、論理的な側面もあるんですね」と、加藤さんが続けます。
https://scrapbox.io/files/66c01795aac883001dd13cec.jpg
2020年に前職であるホテルのプロジェクトの関係で京都に移住し、2023年に独立して現在の活動を始めた齋藤さん。一度は地元である東京に帰って開業することも視野に入れたのだとか。しかし「京都に来たのも何かの縁」と捉えて思い返してみたところ、京都の水の魅力を知り合いの杜氏さんから聞いたり、神社のお水を汲み上げてお米を炊いてみたり、コロナ禍中にホテルで出た食品ロスを活用して蒸留水を作ったりと、京都の水や蒸留に触れる機会が多い3年間を過ごしていたことに気づきます。「『その二つを掛け合わせてお店をやりなさい』と言われた気がしたんです」と、齋藤さん。前職の同僚である田川さんと福田さんに「この3人で本気でやりたい」と声をかけ、今に至るといいます。
◉フレくを支えた数々のご縁
現在間借りの業態で営業しているポップアップラボでは「実験室」をテーマにしている一方で、10月にオープンする新店舗のテーマは「京都の伏流水」。お寺の庭を眺めるようにカクテルを楽しむことができる新店舗には、山で採集した草木を使った植栽があしらわれています。さらには、新店舗が位置する場所は河井寛次郎記念館の並びにある京町家。築130年以上という長い歴史をもつ場所で、敷地内に約60メートルもの深さの井戸を掘り(*)、そこからとれた地下水を使ったカクテルのほか、おばんざいをはじめとする料理も提供予定なのだとか。水と緑に囲まれた涼しげで風情ある京町家の風景が想像されます。 そんな場所でフレくが新店舗の開業を決めた裏側には、数々のご縁があったのだとか。現在の物件に出会う前、齋藤さんは京町家を専門に扱っている不動産屋さんを通じて別の場所にある物件に目をつけていました。しかし、別の会社とその物件をかけたコンペに落選。振り出しに戻って焦っていた齋藤さんのもとに、同じ不動産屋さんから「この場所でフレくの事業をやってほしい」という逆オファーが舞い込みます。河井寛次郎記念館が並びにあり、誰に貸し出すかを長らく吟味されていた貴重な物件にフレくは選ばれました。「想いが伝わったからご紹介いただけたと思いますし、ご縁にとても感謝しています」と、齋藤さんは当時を振り返ります。
https://scrapbox.io/files/66c018891fff5d001c807b6c.jpg
もう一つ気になるのは、約60メートルもの深さのある井戸。齋藤さんの知り合いの杜氏さんの紹介で、指折りの掘削名人がいる株式会社 甲田工業所に依頼したといいます。京都では、一般的にどの場所でも4メートルほど掘れば水が滲み出てくるものの、その水が飲める水かどうかは掘ってみないとわからないというギャンブル的な側面も。しかし、長年の経験と実績に基づく井戸マップを持つ名人は「60メートル掘れば出る」と、即答。小さな京町家の敷地内で巧みに掘削機を動かし、美味しい地下水が湧き出る水脈を掘り当ててくれたといいます。「掘っていただいた井戸から取れる美味しい地下水をいろんな人に伝えていきたい」と、齋藤さん。フレくの活動は、数々のご縁に支えられていました。 ◉当たり前をアップデートするカクテルを
五条に新たな城を構えたフレくは、これからどんなことを目指して歩んでいくのでしょうか。伺ってみると、「既存のもののアップデートをしたい」と、齋藤さん。フレくのコンセプトにも掲げられている水は、生物が生きていく上で欠かせないものである一方で、その存在自体が当たり前になっているがゆえ、案外注目されにくいものでもあります。また、現代では少し目新しく見える蒸留技術も、実際は紀元前ごろから草花から水をとるために使われていた歴史ある技術。「フレくのカクテルは、当たり前になってしまったものへの意識が変わるきっかけを与えてくれますね」と村上さん。「コロナ禍で身に染みた通り、いま当たり前だと思っているものは、決して当たり前ではない。そんなことをメッセージとして伝えていきたいです」と、齋藤さんの言葉にも熱が入ります。
https://scrapbox.io/files/66c01831844108001cdfa028.jpg
かつて「水の都」と言われた京都。京の都が1000年続いたのは、美味しい地下水があったからなんていう話も。カクテルや料理を通じて、当たり前の存在になってしまった水と向き合いなおし、その魅力や歴史を五感を使って深く味わってみる。そんな古きと新しきが掛け算された体験を届けるフレくの挑戦は、まだまだ始まったばかりです。
【要約(ChatGPT 3.5を使用)】
齋藤さんが率いるフレくは、京都・祇園でポップアップラボを展開中で、2024年10月に東山五条に新拠点を開設予定です。フレくのカクテルは、水にこだわり、京都の神社から汲んだ地下水や様々な草花の蒸留水を使用しています。カクテル作りは、ストーリーから始まり、味の三角形(お酒・酸味・甘味)のバランスで決まります。齋藤さんは、京都での経験から水と蒸留技術の魅力に気付き、2023年に独立。新店舗のテーマは「枯山水」で、歴史ある京町家に設置した深さ60メートルの井戸からの地下水を使い、料理やカクテルを提供予定です。フレくは「当たり前」を見直し、京都の水の魅力を伝えることを目指しています。
【関連リンク】