🎧なはれFM#1 「見えなかった社会課題『かくれフードロス』とは?食品の乾燥技術で社会を変えるASTRA FOOD PLANの加納さんに話を聞いてみた」
ロフトワークのプロジェクトスタジオ「なはれ」から、毎月ゲストをお招きし、あるテーマについて濃いディスカッションを行うラジオ番組「なはれFM」がスタート。今回のゲストは、ASTRA FOOD PLAN 株式会社 代表の加納千裕(かのう・ちひろ)さん。加納さんは、Forbes JAPAN 2024年6月号にて、100通りの世界を救う希望「NEXT100」特集にも取り上げられています。現在の活動に至った背景や、事業への想いについてお話を伺いました。 https://scrapbox.io/files/6684f8a0734e6f001cc436d4.jpg
・収録日:2024.6.21(金)@ZEBRAHOOD 2024 in 下北沢
・ゲスト:ASTRA FOOD PLAN株式会社 代表 加納千裕さん(写真中央)
・聞き手:株式会社ロフトワーク 村上 航さん(写真右)、岩沢エリさん(写真左)
◉事業のきっかけは、美味しい“粉”を作りたかったから
加納さんが代表を務めるASTRA FOOD PLAN 株式会社では、過熱蒸煎(かねつじょうせん)機という機械を開発しています。過熱蒸煎機とは、食品の乾燥・殺菌装置。熱風乾燥機やフリーズドライなど、従来の技術では食品を乾燥するのに24時間ほど必要でしたが、過熱蒸煎機を使用するとたったの5〜10秒で食品の乾燥が可能に。みじん切りした食材を機械に入れ、400℃の高温スチームと乾いた熱風を当ててぐるぐると回転させながら食材を乾かすことで、90%の水分量があっという間に10%程までに乾くといいます。 https://scrapbox.io/files/667e9500eb3439001ca520ed.jpg
そんな画期的な技術を持つ過熱蒸煎機ですが、開発経緯を聞くと「はじめは、美味しい“粉”を作りたかったんです」と、加納さん。なんでも、この過熱蒸煎機の技術は加納さんの父である加納勉さんから引き継がれているのだとか。勉さんは、過熱水蒸気という高温のスチームで食材を調理する技術を使って野菜のピューレを製造していました。野菜の色や栄養素はそのままに、風味を強く感じる点が売りのピューレでしたが、冷凍保存による手間やコスト、解凍時に水分量が一定にならず品質が安定しないなどの課題も。当時、勉さんの引退に伴い会社が廃業の危機に追い込まれていた中、加納さんは常温保存できて冷凍の手間やコストがかからない粉末に注目。会社の仲間ともう一度新しい形でやり直そうと、過熱水蒸気の技術を生かした過熱蒸煎機の開発に成功し、2020年に新たなスタートを切りました。 ◉知られてこなかった年間2000万トンの「かくれフードロス」
もともとは野菜の粉末を作るために開発された過熱蒸煎機ですが、「社会課題の解決にこの技術を生かしたい」と話す加納さん。なかでも力を入れて取り組んでいるのが「かくれフードロス」の解決。かくれフードロスとは、食品が小売店や食卓に届くまでの過程で発生している“見えない”食品ロスのこと。いわゆる産業廃棄物です。小売店や家庭で生まれる食品ロスが年間約500万トンであるのに対し、かくれフードロスはなんと年間約2000万トン。「こんなにもロスが出ているのに知られていないのはおかしい!」と、「かくれフードロス」という新たな名前をつけ、その解決のために活動しています。
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過熱蒸煎機によるかくれフードロス削減の成功事例の一つが、大手牛丼チェーン店の「吉野家」。牛丼に使用する玉ねぎの下処理を行う野菜加工センターでは、玉ねぎの芯と一部の固い部分、スライスされた際に出る不揃いな端材を全て廃棄処分していました。その総量は年間約250万トンにものぼり、数百万円のお金をかけて廃棄していたといいます。しかし、過熱蒸煎機を導入したことで、これまで廃棄されていた玉ねぎの端材は全て玉ねぎパウダー「タマネギぐるりこ®」という商品に変身。廃棄にかかっていた予算コストだけでなく、焼却時に排出されるCO2も削減することに成功しました。 吉野家の事例からもわかる通り、粉末にすることの魅力は経済面にもあります。食品ロスの解決方法には、食材を堆肥化して販売するという方法もありますが、堆肥では1キロ100円ほどでしか売ることができず、かかるコストに対して売上があまり見込めません。一方で、野菜パウダーにすると1キロ1000円以上で販売することができます。廃棄するよりアップサイクルした方が売上が見込める構造が確立されれば、世の中のかくれフードロスはより一層減らせそうな予感です。
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◉コミュニケーションでは、誰に伝えるかを意識する
話題は、加納さんのコミュニケーション力や言葉選びの魅力の話に。プロジェクトごとに異なるクリエイターを巻き込みながら活動するロフトワークとしても、加納さんの事業がどのように共感を呼び、仲間を増やしているのか、気になるところです。コミュニケーションで大切にしていることを尋ねると、「誰に伝えるかを意識して言葉を選んでいます」と、加納さん。公演依頼も多い加納さんは、伝える人によって毎回話す内容を変えているといいます。
例えば、、、
・投資家に話すとき → 売上や営業戦略など、数字を多用した話し方に
・一般の方に話すとき→ フードロスなど身近に考えやすい社会課題を切り口にした話し方に
・大学生に話すとき → 加納さんの起業の経緯や就活に役立つ話題を交えた話し方に
また、「新しい取り組みを始めるときには、新しい言葉が重要」と、加納さん。「かくれフードロス」や「タマネギぐるりこ®」など、初めて聞いたけれどなんとなく意味がわかるような、絶妙な言葉選びが多い印象です。一般の人に届けたいものだからこそ、子どもも覚えやすく呼びやすい名前を意識したといいます。
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6月には、クラウドファンディングで238人のサポーターを得ることにも成功した加納さん。今後は、「タマネギぐるりこ®」の市場開拓にも力を入れていくため、一般の方の協力も得ながらレシピ開発などにも取り組む予定なのだそう。加納さんやASTRA FOOD PLANの今後の展開に注目です。 【要約(ChatGPT 3.5を使用)】
ASTRA FOOD PLAN株式会社は、加納さんが率いる企業で、革新的な過熱蒸煎機を開発しています。この機械は食品をたった5〜10秒で乾燥させることができ、従来の24時間と比べて大幅に時間を短縮します。この技術は、加納さんの父から受け継がれ、野菜のピューレ製造技術をさらに発展させたものです。特に「かくれフードロス」の解決に力を入れており、例えば大手牛丼チェーン店では過熱蒸煎機を使って玉ねぎの端材をパウダー化し、廃棄コストを削減しつつ、新商品「タマネギぐるりこ®」として販売しています。この取り組みは経済的にも有利で、堆肥化するよりも高い価値を生み出しています。加納さんはコミュニケーション力を活かし、様々な層に適したメッセージ伝達を心がけており、その努力が成功を収めています。
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