イジングモデル
磁性体のスピン相互作用を記述する統計力学のモデル。以下のように定義される。
$ H=J\sum_{i=1}^nZ_i Z_{i+1}
$ H:ハミルトニアン
$ J:モデルのパラメータ。例えば、最大カット問題では、$ -\frac{1}{2}である。
$ n:量子ビット数
関連:横磁場イジングモデル
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今回は以下のイジングモデルについて計算する
$ H = \sum_{i=1}^n Z_iZ_{i+1} \quad (J=1)
手計算する
まず、手動で計算するなら、組み合わせは以下の通りである。
励起状態→$ Z_iZ_{i+1}=1
$ Z_i=1,Z_{i+1}=1
$ Z_i=-1,Z_{i+1}=-1
基底状態→$ Z_iZ_{i+1}=-1
$ Z_i=1,Z_{i+1}=-1
$ Z_i=-1,Z_{i+1}=1
そのため、$ |01010\dots\rangleや$ |10101\dots\rangleといった具合で、交互に0と1を繰り返す状態が最も安定的で、エネルギーが最小である。逆に、$ |000\dots\rangleや$ |111\dots\rangleのように全て0か1の状態は最もエネルギーが必要である。
量子ビットを利用する
前提確認
CX-Z指数積分解の定理より、以下が成立する。
$ e^{-i \delta Z_i Z_{i+1}} = \text{CNOT}_{i, i+1} \cdot e^{-i \delta Z_{i+1}} \cdot \text{CNOT}_{i, i+1}
ちなみに、$ e^{-i\delta Z_{i}} = \left(\begin{matrix} e^{-i\delta}&0\\ 0&e^{i\delta} \end{matrix}\right) = RZ(2\delta)
今回は、+z方向の全磁化という物理量に着目して計算する。つまり何を行うかというと、系全体で$ |0\rangleと$ |1\rangleのどちらに状態が傾いているのかを-1~1で取得する。
式では、以下の通りである。
$ \frac{1}{n}\langle\psi| \sum_{i=1}^n Z_i |\psi\rangle
細かい話だが、あくまで-1~1に正規化するために$ \frac{1}{n}をしているだけである。この係数が何かを意味しているわけではない。
実行
コード詳細はIsingModelを確認。
結論、以下のようになる。
https://scrapbox.io/files/6673d61513eb39001c21b195.png
何が起きているかというと、「全磁化に変化がない (= $ |0\rangle,|1\rangleの変化がない)」ということである。
そもそもRZゲートは、Z軸周りの回転しか行わない。
つまり、このイジングモデルだと、時間発展における探索範囲は以下のみである。
https://scrapbox.io/files/6673b64e4ecc47001ca65043.png
そこでX軸回転と組み合わせることでより広範囲の探索を可能とした横磁場イジングモデルの出番である。これが量子アニーリングなどの基礎になる。