黒質
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黒質 - Wikipedia
黒質(こくしつ substantia nigra = ラテン語で「黒い物質」の意)は中脳の一部を占める神経核である。黒質は、緻密部と、網様部(および外側部)とによって、大きく二群に大別されるが、いずれも大脳基底核を構成する中心的な要素である。
黒質緻密部
解剖学
黒質緻密部 (こくしつちみつぶ substantia nigra pars compacta)は、ヒトにおいて、ニューロメラニン色素を含有するニューロンが多く存在しているため黒色を帯びているが、加齢と共にニューロメラニンの量が減少する。ニューロメラニンはドーパ(ヒドロキシフェニルアラニン)が重合したもので、ニューロメラニンの色素沈着は、明瞭な黒い斑として脳切片上で認めることができ、黒質という名前の起源となっている。多くのニューロンはドーパミン作動性であり(A9細胞集団)、とりわけ太く長い樹状突起をもち、腹側方向へ延びる樹状突起は境界を越えて網様部の中へ深く侵入している。
類似したドーパミン作動性ニューロンが、数はより少ないが、中脳の中を黒質からより内側および後方へ連続的に分布しており、これらの領域は腹側被蓋野(ventral tegmetal area, VTA;A10細胞集団)および赤核後部(retrorubral fielad, RRF;A8細胞集団)と名付けられている。
黒質緻密部自体も、Ventral Tier(A9v)と、カルビンディン(calbindin)陽性のDorsal Tier(A9d)とに区別される。背側部A9dは、A8やA10と互いに関連が深い。緻密部ドーパミン作動性ニューロンの長い樹状突起はGABA作動性の線条体入力を受ける。緻密部のニューロンはまた網様部のGABA作動性ニューロンの軸索側枝からの抑制性入力を受けている。これらのニューロンは軸索を黒質線条体路に沿って線条体に投射し、神経伝達物質のドーパミンを分泌する。ドーパミン作動性軸索はまたその他の大脳基底核を構成する神経核にも投射しており、それらには淡蒼球、黒質網様部、視床下核などが含まれる。
機能
→ドーパミン報酬予測誤差仮説
病理
黒質緻密部ニューロンの変性がパーキンソン病の主たる病理であると見なされている。遺伝性のパーキンソン病も少数存在するが、多くの例についてはドーパミン作動性ニューロンが死ぬ理由は明らかになっていない。
パーキンソン症状は脳炎のようなウイルス感染や、MPTPなどの化学薬品によっても引き起こされる。ドーパミン作動性ニューロンの病理的変化は統合失調症や、うつ病に時折みられる精神運動遅延にも関わっていると考えられている。
黒質網様部
黒質網様部 (こくしつもうようぶ substantia nigra pars reticulata)はGABA作動性ニューロンを高密度に含む神経核であり、淡蒼球内節と同様、大脳基底核の出力核であるとみなされている。高頻度の発火を持続しているのが特徴とされる。線条体からの直接路出力によって黒質網様部の発火が一時的に抑制され、黒質網様部の投射先の活動を脱抑制することが、運動の開始に重要だという見方が一般的である。投射繊維は視床の一部などへ出力する。黒質網様部への主な入力は、線条体からのGABA入力(直接路)、淡蒼球内節からのGABA入力(間接路)、視床下核からのグルタミン酸入力などである。
解剖学
黒質網様部のニューロンは、緻密部に比較すると、細胞の分布密度が低い。緻密部のドーパミン作動性ニューロンよりも、淡蒼球のニューロンに形態は類似している。網様部ニューロンは線条体または淡蒼球外節からのGABA作動性入力を受けると共に、視床下核からのグルタミン酸入力も受けている。多くの網様部ニューロンはGABA作動性であり、主軸索を運動性の視床核(VA核)へ投射する。VA核ニューロンはグルタミン酸作動性であり、運動性の皮質領野へ軸索を投射している。また、上丘や脚橋被蓋核など脳幹の一部にも出力する。