進化適応環境
alias: 進化的適応環境, EEA, Environment of Evolutionary Adaptedness, 進化適応の環境, 進化適応環境
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source: By Artist unknown - http://www.nps.gov/features/yell/slidefile/history/indians/Page.htm, Public Domain
現代のヒトの諸特徴とされるものが進化した舞台である環境
ヒトが進化したときの環境が世界中で一つのタイプであったとは限らない
進化心理学者たちが考える適応とは、更新世の時代の環境への適応を指す
進化のスピードは遅いため、人間の心の機能自体はこの時代からほとんど変化していないと考えられている
現代人に見られる様々な認知の歪み(バイアス)や不適応行動は、進化的適応環境と現代環境との間にある齟齬によるものだという主張もある
一方、文化心理学者が考える文化差は、長くても数千年ほどの間に生まれたものと考えられていることから、このような変化が同じ「適応」という枠組みの中で理解できるものなのか、議論が交わされている(石井, 2009)
霊長類の研究、古人類の生息環境の研究、そして、現代の狩猟採集生活するに人々の研究から総合して、以下のような状況が世界中に分布するヒトに共通のEEAであったのではないかと推定
ホモ・サピエンスの生業形態は狩猟採集
採集対象や重要性は地方ごとに異なるだろう
毎日のカロリーを基本的に支えていたのは採集によって獲得される植物
狩猟によって獲得される動物は、タンパク源として非常に重要であったものの、毎日期待することのできるものではなかったと考えられる
男性が主に狩猟をし、女性がおもに採集をするという男女間の分業があっただろうと推定される
男性が植物の採集をしないわけではないし、女性が獲物を狩ることがないこともない
しかし、大掛かりな狩猟は男性の仕事
女性はたいてい子供の世話で忙しかったから
このような生業形態を持ったヒトは、何らかの集団を作っていた
血縁関係に基づく関係が核をなしていただろうことと、血縁関係にない個人間にもなんらかの結びつきがあったろうことが推定される
ヒト日常的に付き合いを持つ範囲は比較的狭く、近隣に住む異なる集団間には、強い猜疑心と敵対関係があっただろうと推測される
しかし、集団間の関係は、敵対的なばかりであったとは考えられない
配偶者の獲得
物資の交換
そこで、自分の属する集団内部での血縁淘汰と互恵的利他行動、および異なる集団間での互恵的利他行動が非常に大事であったと考えられる
ダンバー数: ダンバーは新皮質と集団サイズのモデルから、ヒトの祖先の集団サイズは、およそ150人くらいを限度とするものだったのではないかと推測している(Dunbar, 1993, Dunbar, 1996)
ヒトは、シンボル操作能力を有し、それを音声言語で表現してコミュニケーションの手段として使用している
言語は、能の中にはっきりと組み込まれており、ヒトに特有な重要な特徴
言語そのものがどのような淘汰圧によって生じてきたのかはわからないが、言語を持ったということが、ヒトの認知能力の幅を大きく広げることに貢献してきたと考えられる
ヒトは脳が大きく、成長速度が遅いので、育児にかなりの手間がかかる
哺乳類なので、母親が授乳し、子を運び、さまざまなことを教えるもっとも重要な世話人
エレクトゥスのころから、現代人と似たようなプロポーションなので、このことはその頃から続いてきたものと考えられる
離乳食のない時代には、子供への授乳はおよそ5、6年間続けられてきた
避妊の手段もないため、一人の子供の離乳が終わると、しばらくしてまた妊娠したと考えられる
女性は一生の大半を妊娠しているか、授乳しているか、独り立ちしない子供を抱えているかしていることになる
このことは女性の生活のあり方に大きな制限を課していたに違いない
配偶システムは化石に残らないため直接の証拠はない
特定の男女の間にペア・ボンドがあったのではないかと推定される(詳しくは第10章 ヒトの繁殖と配偶システム)
性的二型が減少したことや、脳が大きくなるにつれて子供の世話が大変になったこと
少なくとも、母親が一人で子育てにあたっていたとは考えにくく、母親の血縁者および父親が、何らかの育児の分担を行っていたと考えられる