社会関係資本
社会のつながりや人間関係の豊かさを示すもの
物的資本(経済的な豊かさ)や、人的資本(教育によってもたらされる知識)と並ぶ、重要な資本 これら3つの要素がうまく噛み合うことで、社会システムが円滑に運営されるとしている
ただしここで注意したいのは、社会関係資本の醸成には負の側面も存在するということ
特定の集団の内部における人と人との結びつきに基づくもの
私達が集団の結束として捉える類のもの
同質的で内部志向的な性質を持つため、集団内部では助け合いの精神が育まれ、連帯意識が強化される
したがって、集団の内部では社会関係資本の恩恵を受けやすい
しかし、外部に対して閉鎖的、排他的になりやすく、集団感の葛藤が頻発する(→11. 社会的葛藤) また集団の内部の者に対しても、集団としての種々の規範を守ることへの圧力が強く、相互監視によって個人の自由が制限される危険性もはらんでいる
異なる集団間の人を結びつける外部志向的な性質を持つもの
集団内部での結束はさほど強くないが、異なる集団に対しては開放的
したがって、この種の社会関係資本が豊かな社会では、他者一般に対する信頼が高く、自分が誰かを助ければ、(助けた相手以外の)誰かから助けてもらえるといった一般化された互酬性規範(返報性、互恵性の規範)が形成されていく(→11. 社会的葛藤) したがって、社会全体に恩恵をもたらすのは橋渡し型の社会関係資本だといえる
こうした構造化が実際に示しているのは、集団内のある構成員が他の構成員と相互作用する度合い
サルや類人猿の場合には毛づくろい
ヒトの場合には、私達の社会行動(社会関係資本と言い換えてもいい)全体の約40%が、5人の最も親しい友人や家族に向けられる いちばん内側の二層にいる15人に約60%が、残りの40%が外側の二層にいる135人にあてられる
https://gyazo.com/9751a1e8612a4b885d25575c5e6c0a75
イギリスとベルギーに住む251人の女性を対象にした完全な社会ネットワークにもとづく
サム・ロバーツと私は、これらの接触行動が情緒的な親しみの度合いと密接に関係することを実証した 18ヶ月にわたって関係の変化を調べた結果、友人間で相互作用の頻度が減ると親近感も減った
面白いことに、同じデータをヤリ・サラマキが追跡解析したところ、自分が属している広い社会ネットワーク内の人にどのように社会関係資本(時間と情動)を振り分けるかについて、私達はそれぞれにきわめて明確な(特徴というよりは)特性をもつことがわかった ネットワークの構成にかなり変更があった場合にも(引っ越しなど)、この傾向は相当に強力で変化がなかった
サルや類人猿と同じように、私達は自分の社会関係資本を一番大事な相手に集中する
つまり、情動その他の面でいちばん支えとなってくれる最も近しい人々に資本をあてる 同時に私達は、ときおり援助の手を差し伸べてくれる多くの人とのつながりも残しておく
社会学ではたった二種の社会関係しか区別しないが、図3-4では明らかに四種の社会関係が成立する点に留意
このデータを見れば、サルや類人猿の集団と同じように、社会的相互作用が人間関係において強力な糊のような役目を果たしていることがわかる
さらに、あらゆる霊長類の時間収支において、毛づくろいの時間が持つ意味合いの大切さも思い出させてくれる