大地溝帯
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人類誕生への影響
一方で、大地溝帯の形成が初期人類(ヒト科)の誕生を導いたとする仮説もある。フランスの人類学者イブ・コパン(コッパン)によるこの仮説は、「イーストサイドストーリー(イースト・サイド物語)」と呼ばれている。アフリカ東部は、元来は現在のコンゴなど大陸中央部と同様、熱帯性の大森林に覆われた地域であった。しかし、800 - 1,000万年前に大地溝帯の活動が始まり、その周辺に高地や山脈を含む隆起帯が形成されたことにより、大西洋側から大陸東部に湿った空気を運んでいた赤道西風がさえぎられると、大地溝帯の東側は徐々に乾燥して森林が衰退し、やがてサバンナ(草原)に変わっていった。森林に住んでいた多くの類人猿は、この環境の変化に適応できずに絶滅したが、ヒトの祖先は樹上から地上に降りて、直立二足歩行に移行した。すなわち、乾燥化によって木と木の間隔が広がったことにより、木から木への移動を行う際に地面に降りる必要が生じ、ついに直立二足歩行を獲得した、とするものである。 この仮説は、一時は人類の起源についての定説となっていたが、その後の調査で、初期猿人の化石と共に、森林に棲息する哺乳類の化石が発見されると、猿人は森の中でも暮らしていたのではないかと考えられるようになった。さらに、2001年、ミシェル・ブルネ率いる国際研究チームによって、大地溝帯からはるかに離れた中央アフリカのチャド北部で、トゥーマイ猿人(サヘラントロプス・チャデンシス、600 - 700万年前)が発見されたことにより、最初期の猿人がアフリカ東部以外の地域にいたことが明らかになった。こうした新たな知見により、コパンのサバンナ説は否定的に再検証されるようになり、現在、多くの研究者は否定的な立場をとっている。