猿人
猿人(えんじん)とは - コトバンク
人類進化を4段階に分けた場合、その最初の段階のものをいう。
アウストラロピテクス類がこれに属する。
ホモ・ハビリスは猿人と原人の橋渡しをするものと考えられる。
19世紀末E・ヘッケルは進化論を信奉し、サルとヒトをつなぐものをミッシングリンク(失われた鎖の意)だとみて、これにピテカントロプス(ギリシア語のサルとヒトの合成語で、猿人の意)なる名を与えた。
その後、ピテカントロプス・エレクトゥス(ジャワ原人)やシナントロプス・ペキネンシス(北京原人)などがそれに相当すると考えられ、また、猿人と原人は同義語として取り扱われた。
しかし、1945年ごろよりアウストラロピテクス類が再確認され、その研究が進むにつれて、猿人と原人とは段階を異にするものとみなされるに至った。前者にはアウストラロピテクス類、後者にはピテカントロプス類が組み入れられた。
また一方、人猿man-apeということばもあり、50年代には、猿人とどちらが適当かということで討議が続けられた。猿人も人猿もヒトとサルの中間的なもので、前者はそのなかでもヒト寄り、後者はサル寄りということになるが、59年、リーキー夫妻によりタンザニアのオルドワイ遺跡からジンジャントロプスが粗製の礫石器を伴って発見されて以来、文化をもつ動物として、最終的に猿人とみなされるに至った。
猿人に属する化石標本にはいろいろな違いがあるが、すべて直立姿勢(二足歩行)をとっていたことが、骨盤の形態や頭蓋底における大後頭孔の位置から証明されている。
したがって、上肢は歩行から解放され、道具を使用するのに十分自由であったと推定されている。また、短縮した犬歯はもはや牙とはいえない。これらは人類的特徴である。
しかし、脳容積は約500ミリリットルで、現生大型類人猿と等しいか多少大きめにすぎない。今日、猿人研究は人類進化を解く鍵とみなされている。