FOXP2
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FOXP2 とヒトの病気
ヒトの発達性言語協調障害のいくつかのケースは、FOXP2遺伝子の変異と関係している。このような障害の例として、認知的な障害はほとんど、または全くないものの、言語に必要とされる協調的な運動を適切に行うことができない患者が存在する。このような患者の動詞産出課題と音声反復課題における脳活動を fMRI を用いて計測した結果、(言語課題に関与する脳中枢であるとされる)ブローカ野と被殻の活動の低下が見られた。この結果から、FOXP2 は『言語遺伝子』と呼ばれるようになる。FOXP2 遺伝子に変異を持った人は、言語と関係ない症状も示す(このことは FOXP2 が身体の他の部位の発達にも関わっていることを考えれば驚くに値しない)。また、FOXP2 と自閉症の関連についても、肯定的な結果と否定的な結果の両方が報告されている。 言語障害と FOXP2 遺伝子の変異の関連性が、単なる運動制御の障害による結果ではないことの証拠として、以下のようなものが挙げられる。 機能
一方、FOXP2 遺伝子のコピーを持たないノックアウトマウスは小型で、プルキンエ層などの脳領域に異常を示し、生後 21 日で肺の適切な発達が起きないことにより死んでしまう。 同様に、大人のカナリアにおける高い FOXP2 の発現レベルは、歌の変化と相関がみられる。 加えて、大人のキンカチョウにおける FOXP2 の発現レベルはオスがメスに向けて歌う際に比べて、他の用途で歌う際に低下していた。歌を学習できる鳥と出来ない鳥の違いは FOXP2 蛋白のアミノ酸配列の差というよりは、FOXP2 の遺伝子発現量の差とみられている。 進化
ヒトとチンパンジーの FOXP2 の 2 アミノ酸の違いが、ヒトの言語の進化を生んだと考える研究者もいる。しかし、ほかの音声学習をする動物と FOXP2 の同様な突然変異との間に明確な関連は見つけられないとする研究者もいる。また、ヒトにおける 2 箇所のエクソンの突然変異の機能はまだ分かっていない。発達に関する研究やソングバードの研究から、ヒトと非ヒト科霊長類との違いは、この 2 箇所の突然変異ではなく、(FOXP2 が発現した時に作用する)調節塩基配列の違いによるという可能性も存在する。