金利と経済―高まるリスクと残された処方箋(2017)
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2017
本書の一部を立ち読みするなら「おわりに 日本経済はどこにむかうのか」の章を読んでほしい。近年の日銀の金融政策の展開が、なぜ民主主義国家における中央銀行として問題かを書いたからだ。
中央銀行はどこまで自らの判断で動いていいのか。財政政策に立ち入らず金利操作に専念するのであれば独自の判断で動いていい。
しかし、異次元緩和以降の日銀はアベノミクスの下で政府と一体となり、財政政策の領域に踏み込んだ。出口では財政の安定性を守ることも重要。政府の協力なしに物価安定は実現できない トランプノミクスで高まる財政への期待と不確実性
異次元緩和+マイナス金利政策の検証
待望されるヘリコプターマネーのコスト
イールドカープ・コントロールの効果……
生きた題材をもとに、日銀金融研究所長などを歴任した第一人者が
景気、成長と利子率の関係を検証した、いま最も読まれるべき経済書
金利操作に期待されるのは、
「トレンドへの働きかけ」か、「経済の安定化」か?
【第1章より抜粋】
昔は、金融政策はきわめてシンプルなものだ、
と考えられていた。今でも多くの経済人が、
景気が悪ければ金利を下げて金融を緩和すればよい、
という単純な原理の有効性を基本的に信じているようにみえる。
ただ、高度成長期の金融政策運営を支えていた経済の構造は、
1973年時点で完全に崩壊していた。
「景気」の本質が変化して金融政策の働きかけの意味が変わったとき、
先の原理の効果は思うようには出なくなり、
金融政策は新たな工夫を試みてどんどん複雑化してくる。
目次
目次
はじめに
第1章 農を楽しくする人
「景気」の本質は変化する
偽造貨幣から考えるお金と所得の関係
第2章 バブルとデフレ、どちらをとるか
「不均衡の累積」という現象
グリーンスパンの感じた恐怖
世界的な実質長期金利のトレンド的低下
第3章 長期停滞が懸念される理由
一時的な逆風か、長期的な停滞か
バブルでも過熱しなかった先進国経済の低体温症
多くがマイナスになっている自然利子率の推計値
何が自然利子率の先行きを決めるか
自然利子率の低迷で政策当局が背負う重荷
労働者の質が高くても自然利子率は低下する
【第3章の補論1】
自然利子率の将来展望─レイチェルとスミスの要因分解の概要
【第3章の補論2】
人口減少の長期的影響は不確実性が高い
第4章 自然利子率がマイナスの場合の金融政策
金利誘導の基本的な考え方
景気循環を前提にしたクルーグマン提案
インフレ期待を高めなかった「見せ金」の積み上げ
長期停滞仮説が正しければ失敗するクルーグマン提案
日本への処方箋の見直し
欧州はなぜマイナス金利政策に踏み込んだのか
マイナス金利の「物理的下限」は国ごとに異なる
マイナス金利の効果と副作用の比較
マイナス金利が金融に与える悪影響
見通しが暗いユーロエリアの銀行収益
第6章 「マイナス金利」追加の功罪
疑った瞬間に永遠に飛べなくなる
マイナス金利の意義
マイナス金利を「付け加えた」ことによる歪み
長期金利の急落は危険な副作用だった
日銀トレードは国債市場にバブルを発生させる
バブルはなぜ厄介なのか
「気合いの金融政策」とバブルの共通性
欧州銀より大きい邦銀のダメージ
「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」移行の背景
矛盾をはらむ枠組み
0%程度の長期金利にコミットするメリット
予想インフレ率形成に偏った「総括的な検証」
サプライズ頼みの金融政策がはらむ3つの弊害
「衝撃と畏怖」を目指すのはなぜか
金融政策と為替レートの関係を検証する
必然性があるヘリコプターマネー待望論の高まり
第8章 「財政政策の時代」と金融政策
トランプノミクスの登場
財政出動が自然利子率に与える影響
ヘリコプターマネーの効果:バーナンキによる整理
通説どおり、将来の財政負担は増えないか
「永遠のゼロ」か、銀行課税か
財政・金融政策の一体化という現実
財政破綻を回避する道
物価水準の財政理論は指針になるか
出口に向けた課題
日本経済の長期展望と望ましい処方箋
インフレは自然利子率の上昇をもたらさない
おわりに 日本はどこに向かうのか
注と参考文献