配偶者控除
配偶者控除ができたのは1961年度の税制改正だった。働く夫の稼ぎを陰で支える“内助の功”に報いるために創設されたのがそもそもの目的である。当時、多くを占めていた専業主婦世帯を前提にした制度だが、2000年以降、減少に転じ、18年は600万世帯。逆に共働き世帯は1219万世帯と、今も増加傾向にある。 人事院の「平成30年度職種別民間給与実態調査」によると、家族手当制度がある事業所は77.9%。そのうち配偶者に手当を支給する事業所83.9%。配偶者の収入制限がある事業所は84.5%。その内訳は配偶者控除対象の103万円が54.6%、社会保険加入要件の130万円が30.3%となっている。多くの企業が配偶者手当の支給基準を妻の年収103万円以下に置いていることがわかる。
配偶者手当の額は企業によって異なるが、大企業では月額2万円程度を支給しているところも少なくない。年間24万円は決して小さくない金額だ。
自民党内の妻が家庭を支えるものという伝統的家族観が強い
実は民主党が政権を取った2009年の衆院選マニフェスト(政権公約)では「配偶者控除を廃止し、子ども手当の財源に充てる」と明記していた。 それに伴い2011年度税制改正では縮小も検討されたが、主婦層の反発が予想されるという委員の意見がまとまらず、引き続き検討課題とされた。2012年5月には、当時の民主党の小宮山洋子厚生労働大臣が国会で「働き方や生き方に中立でない制度は改めようと言っている。検討を急ぐべきだ」と発言。配偶者控除の廃止を見直しの議論を加速させる考えを示していた。
だが、その年の総選挙で政権は自民党に交代。第二次安倍政権が発足したが、自民党の「J-ファイル2013総合政策集」(2013年6月)では、配偶者控除を維持すると明記している。つまり、自民党政権になって配偶者控除の廃止は遠のいたことになる。
女性の就業拡大を阻んでいるのはそれだけではない。年金・医療の社会保険料の支払いを免れ「第3号被保険者」となる「130万円のカベ」と「106万円の壁(廃止)」(正社員501人以上等の一定の要件あり)もある。