相対論的量子力学
文字通り量子力学を相対論的にしようという試みです。
講義で説明するように量子力学を相対論的に書き換えようとすると、困難に直面します。
その一部は Dirac 方程式を考えることで克服できます。
この Dirac 方程式は1つの電子をそれなりに良く記述します。これは、大変素晴らしいもので、例えば非相対論的量子力学では「手で」入れていたスピンという角運動量が、Dirac 方程式の立場からは自然に導入されます。 この講義の大部分は、この Dirac 方程式による1つの電子の記述についてです。
Dirac 方程式による1つの電子の記述は素晴らしいものですが、まだ困難は残っています。Dirac はそれを克服するために「Dirac の海」という概念を導入しました。...この Dirac の海の概念も反粒子を予言するという素晴らしい成果を残しましたが、同時に1つの電子だけを考える理論は不完全で、 必ず多粒子を考えなければならないということも明らかにします。
結局、正しく相対論的に量子力学を記述できる理論は、次の2つの条件を満たさな ければなりません。
• 任意個の粒子をいっぺんに取り扱うことができる。
• 粒子の「個数」、「種類」が時間発展で変わりうる。
こういう条件を満たす理論が場の理論です
場の量子論との区別的はこの点を扱うかどうか?(つまり場の量子論のほうが発展的?)基素.icon ここで強調したいのは、量子力学を相対論的に書き換えたいという「ちょっとした」動機から始まって、様々な困難に出会い克服していくうちに、場の理論という非常に大掛かりな理論に必然的に行かなければならないことが分かったという点です。物理の発展の歴史の中でも、もっともドラマチックな展開の1つだと思います。