歴史をつかむ技法
2013
私たちに欠けているのは、受験などで必要とされた細かな「歴史知識」ではなく、それを活かす「技法」だ。歴史用語の扱い方から歴史学の変遷まで、「歴史的思考力」を磨きあげるための一冊。そもそも「幕府」とは何か? 「天皇」の力の源泉とは? 歴史小説と歴史学との違いとは? 第一線の歴史研究者が、歴史をつかむための入口を最新の研究成果を踏まえて説く。高校生から社会人まで、教養を求めるすべての人へ
山川世界史が売れているが、授業前提の簡潔なものでこれを読んで学ぶのは難しそう
目次
はじめに
序章 歴史を学んだ実感がない?
なぜ歴史本ブームなのか/なぜ歴史を学びたいのか/なぜ歴史がつかめなかったのか
歴史用語が混乱を誘うのか
8世紀の初頭まで成文法はなかった
法律で政治制度を規定した 令
法律によって刑罰を与えるのが律
奈良時代は乱や変が人命、平安は年号で一貫性はない
乱や変も内容が変わっていることがある
コンセンサスが生まれてから教科書に反映されるまで10年かかる
教科書は丁寧に通説を紹介したもの
教科書は信じてよいのか
いかにして学べば良いのか
第一章 歴史のとらえ方
1 歴史用語の基礎知識
鎌倉時代に「幕府」はあったか
幕府という言葉は幕末に使われ始めた言葉
武家政権の発生はどこか、という解釈の問題
朝廷では関東や武家と読んだし、幕府では鎌倉殿とかよばれる 鎌倉、室町時代征夷大将軍は公方だし、幕府は公儀
武家政権を統一的に呼ぶ言葉が便利なので幕府が使われた
藩もおなじ。当時は家中といった。明治初年から廃藩置県までしか使われていないしこのとき薩摩藩は鹿児島藩だった。
用語の使い方が研究者によってまちまち
天皇号のいろいろ
天皇の名前はしんだあとにつけ死んだ後からつけてる
賛美、ツイゴウ
「日本」はいつ成立したか
用語確定の難しさ
老中は、役職はお年寄りと言われていた。年寄りの集団を指した。
武家政権は慣習法で権力が曖昧。同じ地位でも権力が異なる
「鎖国」の由来
用語はそんなもんだから、というような説明基素.icon
2 歴史学の考え方
歴史は科学である
結構コンセンサスがとれる
裁判に例えて考える
その資料は原本か?うつしなのか?
書いた人は直接の関係者か?聞いただけなのか?
関係者なら自分に有利な内容を書く。不利な内容なら信ぴょう性が高いとみる
複数の資料が同じ結論を出すか?
近世史以降はかなり史料がある
歴史研究者のスキル
既知の資料をみたら、活字でも研究に使えるかを把握できること
原本をみて、紙の質、大きさ、書体から、写しなのか、偽文書なのか見抜ける
明智光秀軍法書
書体が江戸時代以降
その時代の文章ではない
御陵神社に奉納されたのは明治時代と遅い
否定された「桶狭間」奇襲説
奇襲説への反対説
当時の武士は「吉良上野介が切腹しないのは喧嘩両成敗に反する」と考えた
当時の一般庶民には理解できないので、創作 仮名手本忠臣蔵では吉良上野介を殊更悪役に描いた
喧嘩両成敗なのだから、大石内蔵助は、吉良の代わりに吉良の孫を殺してもいいと言っている。現代的な感覚でこの考え方はできない。常識が違う 時代の正義
3 歴史イメージと歴史小説
時代小説が描くもの
時代考証を楽しむ
既婚女性はおはぐろだったが、ドラマではそうならない。求められてない
時代小説と歴史小説の違い
史実と司馬作品
小説家の歴史家化
歴史小説と歴史学との違い
研究と小説の共存
研究者の新説は、資料を読み、新しい史実の発見をし、周辺資料を読み直すと新しい説が浮かび上がる
第二章 歴史の法則と時代区分
1 歴史に法則はあるのか
「歩み」と「進歩」の違い
歴史はブラウン運動という研究者
世界はランダムに運動しているが、歴史として理解するために便宜的に物語を与えている
極端すぎる
筋道があるよ派
おおざっぱすぎる
岡田はそんなものはねえといった
渡辺は生産様式と人類史に法則があるとみるなら、歴史にも法則性があるという主張
山本は、時代の固有の要因があるという立場
進歩史観に対する懐疑
人類史と自然法則
2 「時代」とは何か――日本史の場合
時代区分の意味
古代
ギリシャ・ローマ
中世
近代
絶対主義国家時代以降
この区分は、ヨーロッパの歴史区分
この発展段階はどこでも同じと見るのがマルクス主義歴史学
古代は奴隷制
中世は農奴制
近代は資本主義
日本の古代もぬひはいるが、基本的な生産活動は領民=口分田をあたえられ税を負担する公民がメイン
江戸時代は近代ではないが、中世とも違う
近代直前という意味
しかしこの区分は便宜的なもの
マルクス主義歴史学は間違いなのでそれがそのまま当てはまるわけじゃない
統一感会はないが、研究者はそれぞれイメージを持っている
大きな時代区分/政権所在地による時代区分
3 文化史の時代区分
古代の文化/中世の文化/近世の文化/近代の文化
第三章 日本史を動かした「血筋」
1 ヤマト朝廷とは
邪馬台国論争/出土した鉄剣の意義/「直系」と血筋のルール/聖徳太子はなぜ天皇になれなかったのか/中央集権化と血筋の争い/壬申の乱の決め手 2 仏教と政争の奈良時代
律令制と遣唐使/「日本史」の始まり/政争と天皇の意向/歴史を動かした執念/泣くよ坊さん、平安遷都 摂政・関白と令外官/藤原氏の陰謀なのか/天皇親政と皇国史観/関白にならなかった藤原道長/院政はなぜ始まったのか/私兵としての武士と平氏政権
第四章 日本の変貌と三つの武家政権
平氏の滅亡と幕府の成立/鎌倉幕府の政治機構/源氏将軍の断絶と承久の乱/北条氏の権力掌握/二つに割れた天皇家/鎌倉幕府の滅亡 建武の新政と三つ巴の戦乱/室町時代の始まり/室町幕府の政治機構/応仁・文明の乱と下克上/戦国大名と朝廷
3 織豊政権の天下統一
大航海時代と日本/東アジアの国際情勢/鉄炮とキリスト教の伝来/将軍義昭と信長包囲網/近世はいつ始まったか/信長と朝廷の良好な関係/朝廷が頼りにした秀吉/関白政権の特色/秀吉の「唐入り」構想
4 江戸幕府と徳川の平和
家康の覇権/江戸幕府の政治機構/上層武士と官位制度/「委任論」という両刃の剣/ペリー来航と幕府の倒壊
5 明治維新と日本の近代
廃藩置県と身分制度の撤廃/土地制度と士族の反乱/戦争が相次いだ近代日本 終章 歴史はどう考えられてきたか
1 世界史と日本史の理論
歴史理論の変遷/アナール学派の歴史学/「網野史学」の誕生/中世社会史ブーム 2 「司馬史観」と「自由主義史観」
3 歴史を学ぶ意味
歴史から教訓を得る/「if」はなぜ禁物なのか/歴史に求められているもの/一番大事なのは歴史的思考力
おわりに