ファスト映画
5億円の算定根拠が気になるところです。
結論から言うと、根拠は114条3項(ライセンス料相当額)です。
裁判所の判断
YouTube における本件各映画作品の各レンタル価格(HD 画質のもの)は、1 作品当たり 400~500 円程度であり、400 円を下らないこと、うち 30%が YouTubeに対するプラットフォーム手数料に充当されること、本件各動画は、それぞれ、約2 時間の本件各映画作品を 10~15 分程度に編集したものであるものの、本件各映画作品全体の内容を把握し得るように編集されたものであることは、いずれも当事者間に争いがない。これらの事情を総合的に考慮すると、被告らが本件侵害行為によって得た広告収益が 700 万円程度であること(当事者間に争いがない)を併せ考慮しても、「著作権…の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額」(法 114 条 3項)は、原告らの主張のとおり、本件各動画の再生数 1 回当たり 200 円とするのが相当である。
被告側は「事実は認め、主張は争わない。」ということで、原告側の主張がそのまま認められています。
東京地裁は17日、投稿者の男女2人に5億円の賠償を命じた。ファスト映画の損害賠償を巡る初の司法判断で、映画会社などが持つ著作権を侵害したと認定した。
判決が示した賠償額は投稿者が動画公開で得たとされる利益約700万円を大幅に上回っており、安易な権利侵害に警鐘を鳴らしたといえる。
原告の主張が全額認められた形基素.icon
KADOKAWAや東映など13社が5月19日に会見を開いた。会見には、弁護団とともに13社の代理として社団法人コンテンツ海外流通促進機構(CODA)が出席
13社は、刑事訴訟で認められた作品以外にも被害を受けた作品があると主張。作品数は54本、投稿先のURLは同作品の重複投稿を含め計64本で、総再生数は計1027万4711回。少なくとも700万円以上の広告収入を得ていた可能性があるとして、東京地方裁判所へ提訴した。
13社は損害額は20億円と算定し、最低限の損害回復として、このうち5億円の支払いを求めている。
損害額は13社と協議の上算定した。映像の再生1回で権利者が受け取れる金額を280円程度と仮定。内容が一部削られていることを加味して減額し、1再生当たりの損害を200円と定めたという。「関係者と協議し、現実的に回収可能な額を検討した」(後藤理事)
本当に回収可能なのか?
弁護団の一人である中島博之弁護士は今回の民事訴訟について、同種の犯罪を抑止する効果を見込んだものと説明。「刑事で有罪判決を受けるだけでなく、今回のように民事で億単位の損害賠償請求を受けるリスクがあると示すことが、犯罪の抑止につながると思う」(中島弁護士) 犯罪が萎縮するのは良い
CODAの今月の調査によると、少なくとも55アカウントがハリウッド映画や人気の邦画など計2100本の動画を投稿していた。合計の再生回数は約4億7700万回で、CODAは被害額を956億円と推計した。 和解した人のインタビュー
5人でやっていて?3人訴訟。執行猶予付きで求刑は認められて有罪
1人和解
Filmarksのようなレビューサイトや、映画ナタリーのような映画メディアをまったく知らない人が世間の9割で...映画の情報を知ろうと思ったら、日常生活の中に浸透しているYouTubeかGoogleで検索する
コメント欄を観ていると動画の良し悪しじゃなくて、映画自体の感想がたくさん載ってました。僕のTikTokの動画のコメントにも「ファスト映画は感想を読めるからすごくいいです」とか「お互いの感想が言い合えるSNSを作ったらいいと思います」とあって。
──ファスト映画がYouTubeで映画の感想を書く場所としての役割を一部担ってしまっていたと。
そうだと思います。...結果的に映画と人が出会う機会を作っていた。
...面白い映画が紹介されていて、すでに映画を知っている人は解説や熱いコメントを書く。
──しんのすけさん在住の関西地域では放送されていませんが「王様のブランチ」のLiLiCoさんの映画コーナーは長く続いていて影響力もあります。
LiLiCoさんみたいな映画を紹介するアイコンはもっといたほうがいいと思ってます。関西で言うと、浜村淳さん。そういう人が昔と比べて少ないですよね。
2人とも知らない基素.icon
勝手に映画の情報が入ってくる媒体がない。自分で映画館に行くか、検索するかしないと。
でもそういうことに気付いたのは、TikTokで活動を始めてから。...超有名なハリウッド大作でさえ名前を知らない人がいくらでもいます。
──しんのすけさんがTikTokに投稿する動画を作るときは、映画著作物の使用の線引きはどう考えてますか?
PRの案件は除いて、基本的に僕はポスタービジュアルは無断で使ってます。その「勝手に使う」線引きは、権利者が宣伝としてリリースしているものだからお借りしますという精神。法律上の“引用”になるんですけど、この「お借りします精神」が大事だと思ってます。映画が面白い、面白くないの感想にかかわらず、結局は作品に対する愛があるかどうか。
原著作物をそのまま使うので二次創作よりリスキー
具体的な線引きとしては、僕が無断で使うのはリリースされたポスターかスチールだけ。劇中のスクショ画像は使いません。一方で動画を使うときは、PRかどうかに限らず配給・宣伝に許可を取って素材をもらうようにしてます。「動画を作りたいんで編集しても大丈夫なデータをください」と。予告編は1つの作品だと思っているので、素材として使うとなると、それを切り刻むことになる。それは許可を得ないと嫌だと思っています。その代わり、許可を得たらバシバシ編集します(笑)。オリジナルの予告を作るぐらいの勢いです。
そんなのくれるのはインフルエンサーだからだと思うが
断られることもありそうだ
予告編って配給・宣伝が映画の売りを前面に押し出すもの。でもいち視聴者として観たときに「これはセールスポイントとして合っているのか?」と思う予告もいっぱいある。僕が観てほしいターゲットに刺すには、この動画の素材をどうやって作り変えたらいいんだろう?と考えて作ってますね。自分の解釈、メッセージを伝えるために予告を作るというスタンスは間違いなくあります。
──ただ、個人がしんのすけさんのように許可を取って素材を使うのは非常にハードルが高いです。引用の「正当な範囲内」で映画の素材をおそらく無断で使って紹介しているYouTuberやインフルエンサーの方々はたくさんいますよね。
今回の逮捕でみんなビビってると思います。
動画の更新をいったん止めている人もいるし、
「今後はいらすとやの画像で映画紹介します」と言ってる人もいる。
これからは
権利者の不利益にならない形で、YouTuberやインフルエンサーが愛を持って自分なりのルールを作ってやっていくか、
配給・宣伝サイドがゲーム実況にならって許可や申請、使用に関するガイドラインを作ってくれるのを待つか
のどちらか。
逮捕・有罪判決が出るとなるとリスクを取る人は少なくなるので後者の圧が強まるんんじゃないかな
明文化・安心の二次創作とやや似ているが、二次創作は歴が長くて啓蒙家が多く、ファスト映画のように金を稼いで逮捕されるということは今まで発生していないはず スタジオジブリも公式サイトで静止画を公開したじゃないですか。鈴木敏夫さんが「常識の範囲でご自由にお使い下さい」と書かれていて。まさに言葉通りに受け取るしかない。そのラインを各々考えることが大事(強調は引用者による)だなと思います。
まじでこれに尽きる基素.icon
今回のファスト映画の余波が長引くと、映画を語る場──評論ほど硬くないけど、感想ほどさっぱりしたものでもない、その中間あたりのコミュニティが弱くなってしまう気もします。YouTuberでコアな映画ファンに向けて熱い深めの考察をやってる人もいる。そこが萎縮していくのはよくないですよね。
まず「人に映画を観てもらおう」と思ってやってる僕みたいな立場だと、素材はポスターや予告で十分なことがほとんど。でも観た人に向けて深めに考察しようとすると、やっぱり情報量が必要で本編の静止画や動画を使いたくなる。そこで“引用”の部分をちゃんと理解していないとビビってしまうと思う。
ここでは語られていないが、実際には映像の抽出でもハードルがある
ふつうDRMがかかっているので、解除する段階で法律に触れる可能性がある あとクリエイター側への周知も大事ですけど、実は観る側にも疑心暗鬼が生まれていて、それが映画文化にとって一番よくないんじゃないかと思ってます。
僕の動画にも「ファスト映画は捕まったのに、どうしてお前は捕まらないんだ?」みたいなコメントがあって。そりゃ来るよなと思いました。
「この動画は大丈夫です!」とアナウンスする人はいないわけですから、“無断転載警察”的なものが絶対生まれてくる。
「このチャンネルも画像使ってるしダメじゃね?」とか「これも捕まるんじゃね?」とか。1つでもそういうコメントがあると、観てる側の空気感がちょっと変わる。動画クリエイターもより慎重になる。権利者やメディア側がきちんと周知していく必要があるなと思ってます。
世代に合わせたチューニング
映画にそこまで興味がない人は「映画批評」「映画評論」が肩書きになっている時点で反応しない。さらに言うと、映画のことを知りたいとも思っていない人には「面倒くさそう」と思われてしまう可能性もある。
TikTokはそもそも中学生や高校生といった10代が多いので「感想」って字面として入りやすい。名前を平仮名の「しんのすけ」にしたのも、TikTokのプラットフォームに最適化されたもの。「映画評論家・齊藤進之介」より「しんのすけ@映画感想」のほうが、たくさんの人に見てもらえる可能性が1%でも上がると思ったんです。 ──しんのすけさんの動画でコメント欄が盛り上がる、盛り上がらないの基準はあるんでしょうか。
やっぱり答えがない作品は盛り上がります。最近だと「キャラクター」。グロいのが苦手な人が「どれぐらいグロいですか?」「怖いですか?」と質問したり、映画のメッセージ性をどう受け取ったか議論したり。
コメント欄が2ちゃんねるの掲示板みたいな機能を果たしていて、いろんな人の意見が読めます。そして自分と似た意見のコメントを見つけたら、いいねしてます(笑)。
2ちゃんねるという言葉を使うということはそれなりに年をとってそうだと思ったら1988年生まれだった