LoRAは著作権法上何が問題なのか
前提
「著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用」についての権利制限規定です。...「著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用」であれば、通常は著作権者の利益を害さないことから権利制限の対象としているのです。
したがって、逆に言えば「著作物に表現された思想又は感情の享受を目的」としていれば(非享受目的と享受目的が併存している場合も含む)30条の4は適用されないということになります。
「例えば、3DCG映像作成のため風景写真から必要な情報を抽出する場合であって、元の風景写真の「表現上の本質的な特徴」を感じ取れるような映像の作成を目的として行う場合は、元の風景写真を享受することも目的に含まれていると考えられることから、このような情報抽出のために著作物を利用する行為は、本条の対象とならないと考えられる」 表現上の本質的な特徴とは何か?画風とは同じなのか、異なるのか、部分一致するのか?
これは前述の上野委員の話と全然違う解釈ではないか基素.icon
このように、「情報解析」に、学習行為及び生成行為双方が含まれているという前提に立つと、学習対象著作物の「享受目的」が併存しているか否かの論点は、学習段階でも、生成・利用段階でも問題になることとなります。 「情報解析(学習or生成)のために対象著作物の利用行為を行うに際して、対象著作物の「表現上の本質的な特徴」を感じ取れるような著作物の作成目的(=対象著作物の享受目的)が併存している場合、対象著作物の利用行為は30条の4の対象になるか」という問題
文化庁の議論では「AI利用者の側が、ものと著作物がAI生成物の作成に寄与していないことを立証すべき」という見解も出ていることから、生成者側にも証明責任が発生することになるかもしれない。
日 時:平成 28 年 12 月5日(月) 10:00~12:00
ある著作者の著作物を大量に学習した学習済みモデルが、これと同じ画風で絵を描くとか、 同じスタイルで音楽をつくるということ自体は、 画風やスタイルといったアイデアの利用に過ぎないため、 もとの著作物の著作権の侵害にならないということははっきりしている...
...けれども、 実際には、学習済みモデルの中で一旦アイデアに昇華したのだけれども、そのアイデアをもとにして、 結果としてもとの著作物と同じ創作的表現が生み出さ れたような場合、 それが著作権侵害に当たるかどうかという問題は確かにあると思います。
既存の一部がそのままコピーされているのならアイデアではなく表現の利用になる
...どこまでが抽象的なアイデアで、どこからが具体的な表現かという区別はなかなか難しいものがあります。
先ほどの清水委員からの問題提起にも、ドラえもんのパクリというものがありましたが、 あれは、ドラえもんとは別の創作的表現であるにもかかわらず、 ドラえもんが有名であるために、 ドラえもんに似ているように感じられてしまうというケースのように思われます。 このような場合に類似性というのをどのように理解すべきなのか、というのは、 著作権法学の世界でも最近議論がありまして、創作的な表現が共通するかどうかだけで類似性を判断してよいのか、という点は確かに問題になるところかと思います。
ただ、これはAIに限った話ではございませんので、一般的に問題となるものです。
https://gyazo.com/476f81df388088d0d3e2c2323ff6fe85
AIモデルを作る場合は侵害にならない可能性が高い
これは、AIモデルを作るために画像データを収集し、学習に使うだけでは、上記3類型の行為のいずれにも該当せず「専ら肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするといえる行為」には該当しない可能性が高いためとしている。
より専門的解説
学習段階において「作風の再現を目的とする」と「表現の本質的な特徴の再現を目的とする」を区別することは相当難しいでしょうね(だからこそ、学習段階における享受目的の認定には慎重に、と繰り返し強調しているところです)。
単に「対象著作物の「表現上の本質的な特徴」を感じ取れるような著作物が作成される可能性がある」という程度でこの「享受目的」を認めるべきではありません。繰り返しになりますが、このパターンで享受目的を広く認めてしまうと、特に生成AIにおける学習に大きな制限がかかるためです。
「AIモデルを売る」場合
柿沼弁護士は「AIモデルには学習に利用した画像がそのまま入っているわけではない。つまり『AIモデルを売る』という行為は直接画像を売る行為とは区別する必要がある。“パブリシティ権を侵害する可能性のあるツール(AIモデル)を売ることが違法か”を考えなくてはならない」と指摘。
例えば、AIモデルを販売しても、購入者がパブリシティ権を侵害するような行為をしなかった場合(例:生成画像を手元に置いて楽しむだけのような場合)ならば「購入者はパブリシティ権侵害に問われず、販売主もパブリシティ権侵害にはならないのではないか」と説明する。