アメリカの金融規制解体(金持ち優遇)
2026-07-11 Dennis Kelleher of Better Markets - Paul Krugman
クルーグマンがBetter Markets(独立系シンクタンク)のトップ、デニス・ケリハーに、誰も注目してない金融規制解体の話を聞くインタビュー。ケリハーは元上院スタッフ。
リーマン・ショックの後遺症は全然終わってない。広義失業率(U-6)が危機前水準に戻るまで10年かかったし、FRBの調査だと2016年末時点でアメリカ人の9割が2007年より17〜35%貧しくなってた、という数字をケリハーが提示。
株式の87%は上位10%が保有してるが、401k/IRAには27兆ドルの資産があるので投資家の話は金持ちだけの問題じゃない。下位50%(約1.65億人)は国全体の富のたった2.5%しか持ってない、という格差の酷さも指摘。
地銀は預金の75セントを貸し出すのに大手ウォール街銀行は50セント未満しか貸さない。規制がトレーディング業務の方が儲かるように作られてるからで、去年は大手行のノンバンク向け融資が50%増えた一方、実体経済向け融資はゼロ増だった、とBetter Marketsのレポートが示す。
FRBの銀行監督担当副議長は元ゴールドマン・サックス幹部やウォール街弁護士を側近に据えていて、規制当局がすっかりウォール街に取り込まれている状態。
新しい自己資本規制案が実現すると大手行の資本水準は2008年危機前並みまで下がり、しかもリスクの小さいはずの地銀とほぼ同水準になる、という矛盾もある。
シャドーバンキング(ノンバンク金融)の規模は今や2008年当時より大きく、しかも規制は当時より緩い。2023年には米史上最大級の銀行破綻のうち3件が集中して起きたのに、あまり話題になってない。
最高裁のSlaughter v. FTC判決がHumphrey's Executorを覆し、大統領がSEC・CFTCなど独立規制機関を直接支配できるようになった。これは車からエアバッグとバンパーを外すようなものだとケリハーは例える。
アメリカ大統領は独立規制機関の委員を理由なく解任できるようになった
SECも投資家保護から経営陣保護へと軸足を移していて、議決権行使助言会社(プロキシアドバイザー)の独立性まで規制で骨抜きにしようとしている。
暗号資産には18年経っても合法的な使い道が見つかっておらず、実質は脱税・マネロン・犯罪のための道具でしかない。政界に食い込めたのはFTXのサム・バンクマン・フリードの手法を真似て巨額の選挙資金をばらまいたからで、広告では暗号資産に触れずに当選させ、当選後に「クリプト有権者に支持された」と主張するという壮大なすり替え構造があるとケリハーは断言。
Krugman「暗号通貨は非合法な利用がメインなのに政治献金で影響力を拡大している」
ギリバンド上院議員の22歳の息子が立ち上げた暗号資産関連企業に大物投資家の資金が集まっている件も、母親の政治的立場との関係が疑われる事例として挙げられる。
AIについては野放しとがちがちの規制の両極端を避けたバランスが必要で、データセンターの電力消費や与信判断への影響、地銀がAI投資について行けなくなるリスクなどが懸念点。
最後にケリハーは、SECの規制案に20万人もの一般投資家がコメントを寄せた異例の参加実績を挙げ、市民が関与すればアメリカの民主主義はまだ立て直せると前向きに締めくくる。