「わいせつなもの」は、何が、何故いけないのか?(2023/05/06)
以下は会話のメモ(細部は誤っている可能性がある)
この前のコミティアで出した漫画論争 Sp. 9の原稿の話
書くきっかけ
最近のテーマは性表現の刑事規制だが、性暴力などのテーマにも浮気している
本稿のテーマ:わいせつ規制について法A守ろう、というような議論が、当事者以外にも説得力がある形で示す手助けをする
記事の中身
175条が規制するもの
1. どんな表現を規制するのか
2. その表現をどう扱うと犯罪になるのか
条文を読む
第百七十五条 わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物を頒布し、又は公然と陳列した者は、二年以下の懲役若しくは二百五十万円以下の罰金若しくは科料に処し、又は懲役及び罰金を併科する。電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者も、同様とする。 1はどんな表現が規制されるのかとよく議論されるが、2の行為対応( 公然、特定少数に提供する場合は?)の議論は比較的少ない
とはいえ公然というポイントが厳格に運用されているわけではないかもしれない
児童ポルノとの違い
児童ポルノは所持規制、外国では閲覧規制などもある
非児童の場合、見ただけで犯罪などは現実的な議論になっていない
なぜいけないのか?規制の根拠3つ
1-3は会話の中では入り混じっていてわからなかった基素.icon
1. 性秩序の維持という見解
条文が怪しくなってきたのがS25年ごろ(?)
しかし、当時の学者も積極的に支持したかは怪しい
戦前の法解釈を維持するような作りになっていて、これ以外の理由はつけられないというようなカンジ
う:戦前の性犯罪の設計は、被害者などの個人を保護するためのものではなく結婚の秩序や性道徳、家制度の維持のためのもの。戦後憲法が制定されて刑法の条文は同じでも解釈がガラッと変わった(と法学部では教えられた)
戦前も調べると結構面白い
このテーマについて、当時の法学者はあまり処罰しなくてもいいのではないかと考えていたような痕跡がある
旧刑法の立法過程では、ボアソナードが提案した厳しめの法律に日本の法学者が弱めるように修正や削除をした 都内の条例かさらにひとつ前の法律には肛門性交(鶏姦)の規制があったがなくなった
S23改正で懲役刑が入ったのはなぜ?
戦前、1910年ごろ、国際条約(国際連盟)のレベルで性表現規制が議論になった(郵便物が活発になったため?)
1930年日本も批准している。今も加入はしている。(現在の有効性は不明)
議論はフランス語で書かれている
1930年代に日本の法令もその条文に合わせる形で改正する運動があった
刑法の改正仮案がまとまったのが1940年後半。戦争でこんなことをやるタイミングはなくなり立ち消えた
重罰化の規定があった
戦後、憲法が変わったタイミングで「戦後の混乱で猥褻物が酷いことになった」ので改正仮案の法定刑を借りる形で厳罰化された
2.
5. 性虐待を誘発するという見解
う:175条に合理的な法益を求めるのは苦しいのでは?
え:(誘発は)0ではないはずだが、「包丁で殺人事件が起きた時に包丁を作った人が処罰されるべきか」というとそうなっていない。猥褻物は包丁以前の道具なので、これに根拠を求めるのは厳しいと感じる
6 ポルノグラフィー論「そういうものがあることが女性差別の考えを引き起こす」
ポルノグラフィーとわいせつは集合として重なる部分があるが、全く別の概念
フェミニズムの人が考えるポルノグラフィーは何かの説明記事への参照がある
7 性の商品化
え:えっちなものにハマると仕事をしなくなり、えっちなものばっかり見てしまい労働力にならないという脅威があるので、労働力が減るという論理
え;摘発側に聞いてみると利益を得ている点を問題視している空気がある
う:「大麻に依存性の問題がなくても売っているのは反社だから規制するのに意味がある」というような論と同じ?
ポルノ作りをしている人は反社というスタンスでの批判
9. オナニーが悪いので、オナニーを促すポルノはだめだ
18世紀のヨーロッパでは問題視された
田中久智曰くこの考え方は産業革命のイギリスがスタート 10. 心の貧しさ
加藤(学者)「性を商品として露骨に販売している人は憲法の基本権を主張する資格はない」
え:理由は読んでもわからない。個人的な感想では?
う:9とは違って、商品化によってみんなの心が貧しくなるという論
11. 見たくないものを見ない自由
う:いわゆる不快原理
12. 11 + 青少年の健全育成を根拠にしつつ、公然性概念を重要視
猥褻表現は曖昧でわからないが、公然と見せた時だけ処罰して、それ以外では厳格に縛りをかければよい
見たくない人が強制的に性的な気持ちになったり子供たちに触れる危険性が高まるからそれが取締られていて、それ以上は取り締まるという考え方ではないと
う:参加者同意をしときに現行のように取り締まるのはあるべき姿ではないと解釈されるか?
え:おそらくそう
13. 不本意にえっちなものに遭遇することによって制欲を刺激されない自由の保護。また、青少年が不本意に遭遇した時に成長発達に害を与えられることがないようにするという考え
11とどう違うの?基素.icon
う:さっきより具体的で、興奮させられない自由や自分の制欲の自己コントロールの権利
個人の保護法益に近い
国を守る法益
個人的法益
社会的法益
ぼやっとしている
一般的には175条は社会的法益を守るとされている
梅崎もこれに含めるが、具体的な危険の発生を要求する
危険性が175条の場合、突然制欲が刺激される危険性
性秩序の維持は漠然としているし憲法は保護をしているのか?
猥褻三要件の批判
90sまでのメジャーな見解について批判をし、175条は根拠がないとした
曽根威彦?
わいせつ物頒布 等罪については違憲説も少なくない(曽根威彦・表現の自由と刑事規制〔1985 年〕189 頁、
え:自説はまだ悩んでいる。えっちすぎるものの規制は共通理解があると思う。その説得力があるラインはどこか?たとえばオナニーばっかりしていると少子高齢化が進むとか、そういう根拠づけをできないか考えている
性的羞恥心という概念の研究を進めている
日常的にアダルトコンテンツに触れている人も子供がいる場合もあるし、アダルトコンテンツを全て規制した時に出生率があがるとは思えない(そこの重みは大きくないと思う)けど定量的にどうなんだろう基素.icon