ポアソン分布
英: Poisson distribution
数学者シメオン・ドニ・ポアソンが1838年に確率論とともに発表 所与の時間間隔で発生する離散的な事象を数える特定の確率変数 X を持つ離散確率分布のことである。 ある離散的な事象に対して、ポアソン分布は所与の時間内での生起回数の確率を示し、指数分布は生起期間の確率を示す
定義
定数 λ > 0 に対し、自然数を値にとる確率変数 X が $ P(X=k)={\frac {\lambda ^{k}e^{{-\lambda }}}{k!}}
を満たすとき、確率変数 X はパラメータ λ のポアソン分布に従うという。
λ は所与の区間内で発生する事象の期待発生回数に等しい。
P(X = k) は、「所与の時間中に平均で λ 回発生する事象がちょうど k 回(k は非負の整数)発生する確率」に相当する。
例えば、事象が平均で2分間に1回発生する場合、10分間の中で事象が発生する回数は、λ = 5 のポアソン分布モデルを使って求められる。
具体的な例
これは、離散的な自然現象(所与の領域内や所与の時間内において、0回、1回、2回、3回… と発生する現象)に該当するものであり、現象が発生する確率は、時間ないし空間内において一定である。また、時間または空間における発生間隔は指数分布になる。次に、その例を示す。
1時間に特定の交差点を通過する車両の台数。
1ミリリットルの希釈された水試料中に含まれる特定の細菌の数(細菌数検査における最確法)。
単位面積あたりの雨粒の数。
1ページの文章を入力するとき、綴りを間違える回数。
1日に受け取る電子メールの件数。
1時間あたりの電話がかかってくる件数。
ある一定の時間内の店への来客数。
1分間のWebサーバへのアクセス数。
例えば、1時間あたりのウィキペディアの最近更新したページの編集数もおおよそポアソン分布。
1キロメートルあたりのある通り沿いのレストランの軒数。
1ヘクタールあたりのエゾマツの本数。
1立方光年あたりの恒星の数。単位時間あたりの放射線の計数値であるカウント毎分やカウント毎秒(半減期による減衰や外部からの放射能などによる変動がないと仮定して)。
歴史的例
上記の例のほか、歴史的に有名な事例としては、ロシア生まれでドイツで活躍した経済学者、統計学者のボルトキーヴィッチ(ドイツ語版) (Владислав Иосифович Борткевич) による「プロイセン陸軍で馬に蹴られて死亡した兵士数」の例が知られている。ボルトキーヴィッチは著書"Das Gesetz der kleinen Zahlen "(The Law of Small Numbers)において、プロイセン陸軍の14の騎兵連隊の中で、1875年から1894年にかけての20年間で馬に蹴られて死亡する兵士の数について調査しており、1年間当たりに換算した当該事案の発生件数の分布がパラメータ0.61のポアソン分布によく従うことを示している。
事象の特徴
上記のように、稀にしか起こらないような現象を大量に観測した結果がポアソン分布に従う例は極めて多く見られる。このようなポアソン分布に従う事象の中で、時間の経過とともに発生する事象の特徴は次のようにまとめられる。
(希少性):時間幅 $ \Delta t の間に着目している事象がちょうど1回起こる確率が $ \lambda \Delta t+o(\Delta t)、2回以上起こる確率が $ o(\Delta t)
(定常性):事象の起きる確率は、どの時間帯で同じ
(独立性):事象の起きる確率は、それ以前に起こった事象の回数や起こり方には無関係
ここで、o(Δt) は Δt に対して高位の無限小を表しており、Δt のスケールに注目したときに無視できる微小量であることを表す。
ポアソン分布