蛇
民俗学者の吉野裕子によれば、日本の古語ではヘビのことを、カガチ、ハハ、あるいはカ(ハ)等と呼んだ。また、これらを語源とする語は多く、鏡(ヘビの目)、鏡餅(ヘビの身=とぐろを巻いた姿の餅)、ウワバミ(ヘビの身、大蛇を指す)、かかし(カガシ)、カガチ(ホオズキの別名、蔓草、実の三角形に近い形状からヘビの体や頭部を連想)などがあり、神(カミ=カ「蛇」ミ「身」)もヘビを元にするという。 吉野さんの本です。蛇については相当書いてますね。その中で、蛇の古語は「カカ」「カガ」であると、繰り返し述べています。例えば、酸漿(ほおずき)のことを、古事記では「カガチ、アカカガチ」と言いますね。八俣の大蛇のことを、「その目は赤加賀智(アカカガチ)の如くにして、身一つに八頭八尾あり」などとあり、大蛇の目を酸漿にたとえています。また、少名毘古那神(スクナヒコナノカミ)が、波の間から現れたとき、乗っていた船が羅摩船(カガミブネ)で、これはヤマカガミという植物だそうです。この他、カガミグサという植物もあり、両者ともに蔓科。長くて地を這うもの、なにかにまつわりつくものとして、蛇と共通する。ではなぜ少名毘古那神は、「羅摩(カガミ)=蛇」というような乗り物で現れたのか。ここらへんの吉野さんの説明が、なかなか興味深い。~吉野さんによると、古代の歌垣(カガイ)も、「カガ」すなわち蛇だそうで、歌垣といえばいにしえの乱交パーティ。男女の性が解放される非日常の時間です。盆踊りの原点みたいなものですが、もしかすると生麦の祭も、かつてはそういう時間だったのかもしれません。