2023年3月5日
昨夜は、リトルKの世話をしながら、論文のための図表を作っていた。一昨晩は静かに寝ていたリトルKであったが、昨晩はけっこうぐずっていたため、あまり進まなかったが。Kが起きてきて代わるというので、4時頃就寝。6時過ぎに一度起きてオムツ替えなど。その後また寝て、11時頃まで眠れた。ありがたいことである。
13時から「ろう者学への招待」というオンラインイベントを聴講。ギャローデット大学の高山亨太氏によるイベント。森壮也氏の基調講演の後、金澤貴之氏、皆川愛氏によるパネルディスカッションという構成。森氏は、例によって幅広い観点から「ろう者学」の外延とオーバービュー、今後の展望を示した。パネルディスカッションでは、「ろう者学」がどのような学であり得るかについての議論が行われた。 ギャローデット大学はもとより、世界的に見ても「ろう者学」という名目で学位を取れる研究機関があるわけでもなく、そんな中でろう者学がどういうディシプリンを持つ学問になり得るのかについては、あまりはっきりとは語られなかった印象がある。障害者学的なアプローチだけでなく、手話という言語に基づく文化が存在するのがろう文化の独自性なのだろうが、その辺があまりうまく説明されていなかったように思える。
一方で、仮にその辺がうまいこと位置付けられたとしても、例えばアフリカ文学が何かしら独自のディシプリンのある学的領域だからといって「博士(アフリカ文学)」という学位を作ろうということにはならない気がするし、ろう者学というのは、皆川氏がカルチュラルスタディーズの枠組みにおける立ち位置を示していたように、批判的な視点を持つ文化研究の一分野としてやっていくのがいいような気もする。
リトルKをあやしながら聞いていたのだが、上記のようなことを自分の考えの整理のためにリトルKに話しかけたりしていた。リトルKはすやすやと眠りについた。
ルーク・バージス『欲望の見つけ方 お金・恋愛・キャリア』を読み始める。タイトルが安っぽい自己啓発本のような感じなのだが、実態はルネ・ジラールの模倣的欲望の理論を援用して、ビジネスや人生における諸問題について考えるという、けっこう硬派な内容。 視覚的断崖実験によって示された、乳児の社会的参照と呼ばれる現象がある。社会的参照や新生児模倣に見られる通り、畢竟、大人の社会性や知性にしたって、そうしたプリミティブな反応が複雑になったというだけのことのようにも思える。その新生児模倣を提唱したアンドルー・メルツォフとルネ・ジラールには、ジラールの晩年に交流があり、プルーストにおける視覚的共同注意に関する示唆的な場面について教示があったというアツい場面が出てくる。新生児模倣を知って真っ先にジラールを思い出したのだが、そんな繋がりがあったとは!と驚く。
自分の育休ついてはそれなりに葛藤はあったのだが、ちょっとその辺についてツイートしたりしていた。言い方が難しい話題なのだが。僕のような立場の者が育休を取ることによるポジティブな効果という観点ももちろん考えたし、そのような観点から取得を勧められることもあったのだけど、そうした組織的なメリットよりも自分のやりたいことを優先したということでもある。ともあれ、そのような選択を可能にしてくれている諸条件に感謝である。
Kの実家からの帰りの電車内で、『英語のハノン 上級』の3週目が終わった。その後、『欲望の見つけ方』の続きを読む。 ----
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