2022年8月14日
昨晩は、北川忠彦 『世阿弥』を読み始め、意外と面白くて半分ほど読み進めた。さらに、起きた後も読み進める。 著者は、世阿弥という人を相対化してみせる。すなわち、世阿弥のストイックな能は当時の一般大衆にウケるようなものではなかったし、さらには政権からも嫌われるようなものになってしまったことが晩年の配流に関わってくるのではないかという見通しを、著作の読解等を通じて明らかにしていく。一方で、それはそれで世阿弥の「天才」ぶりを別の形で強調することではある。ただ、後の千利休のような例を思うと、そういうことはあるかもしれないという気もする。 八月納涼歌舞伎のため、東銀座へ。Kおよび義母との待ち合わせまで時間があったので、木挽堂書店で「劇評」の4号を購入。ジョン・レノンとオノヨーコが来店したという「樹の花」という喫茶店でコーヒーをいただきつつ、読む。4号の対象は六月大歌舞伎。この時は「猪八戒」、「信康」、「ふるあめりかに袖はぬらさじ」で、どれもよかったなあというのを思い出しつつ読んでいた。読者による投稿がいくつか採録されており、いつか投稿してみたいなあという気持ちになる。 待ち合わせの「銀之塔」へ。タンシチューで有名なお店。喫茶店でケーキを食べた他は、起きてから何も食べていなかったので、お腹が空いていた。セットメニューを注文。さらに、Kが残した分まで食べたので、お腹いっぱいである。
今回は、義母の伝手でチケットをとっていただいたこともあり、真ん中の3列目というとてもいい席。「東海道中膝栗毛 弥次喜多流離譚」ということで、3年ぶりの澤瀉屋と高麗屋による弥次喜多。「俊寛」的な「奇ッ怪な島」から始まり、どんどん場面が大きく入れ替わり、筋書を読んでも意味不明なほど荒唐無稽なストーリー展開で、最初から最後までひたすら息をもつかせぬ展開。しばらく控えられていた本水を使った立ち回りが復活したり(あらかじめ水よけのビニール袋を渡されていた)、これでもかとばかりに繰り返される早変わり、2度の宙乗りなど、ケレンもたっぷり。また、「ウエスト・サイド・ストーリー」風な踊り対決で、たっぷり群舞が観られたのが眼福であったなあ。市川猿之助と松本幸四郎のコンビ、そして彼らと対象をなす市川團子と市川染五郎も素晴らしかったし、レディースの総長を務める坂東新悟(坂東彌十郎の息子)の踊りもいいし、ラストにおける市川笑也の小林幸子ばりの役もよかった。ひたすら楽しくて、歌舞伎の素晴らしさをあらためて教えてもらった。 帰宅して、「鎌倉殿の13人」。「比企能員の変」の回。いよいよ北条がトップに立つ展開。とはいっても、これからもまたいろいろとゴタゴタが20年ぐらい続くのだが。その後、読み止していた細川重男『頼朝の武士団 鎌倉殿・御家人たちと本拠地「鎌倉」』の続きを読み、読了。ストーリーの大枠自体は知っていることではあるので、ディテールを楽しむためにもあんちょこを先に読んでおくほうがいい。そういえばこの本は、清水克行氏が高野秀行氏との対談で、洋泉社新書の旧版を推薦していたなあ。 ----