事例解説アウトライン2020-11-05
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本件申合せ
新人選手が,新人選手選択会議(以下「ドラフト会議」という。)前に12球団による指名を拒否し,又はドラフト会議での交渉権を得た球団への入団を拒否し,外国球団と契約した場合,外国球団との契約が終了してから高卒選手は3年間,大卒・社会人選手は2年間,12球団は当該選手をドラフト会議で指名しない。
現在は、昔でいう「ドラフト外」はなく、「新人選手」であれば、「ドラフト会議で指名しない」が直ちに「選手契約を締結しない」を意味する模様。
新人選手選択会議規約
MLB球団に所属した選手も第1条の「新人選手」に該当し得る。
https://gyazo.com/74cc43487204fd33d208b86190175025
プロ野球球団・選手の関係と独禁法に関するこれまでの経緯
昭和53年 江川事件の際の国会答弁
平成23年 東日本大震災Q&A
関係事業者が共同して,又は事業者団体が,賃金,労働時間等について調整したり決定することは,独占禁止法上問題となりますか。
被災者をどのような条件で雇用するかという雇用契約上の問題ですので,労働関係法令上の考慮の必要性は別として,独占禁止法上は問題となるものではありません。
平成24年 契約金上限問題に関する事務総長会見記録
プロ野球選手の契約関係については,労働契約ないしは労働関係としての性格を備えているものとみられる点などを踏まえますと,独占禁止法に直ちに違反するものとの認識は現在有していない
「人材と競争」に関する議論の整理
人材の側の競争を問題とするかどうかという次元
労働者は事業者に当たらない
昭和22年制定当初の議論
労働組合活動の合法化のため等
「労働者兼事業者」の登場(昔から?)
「労働契約は対象外」という議論(上記プロ野球関係答弁)は「労働者は事業者に当たらない」論の派生形であると考えられるが、労働者を免責するだけでなく企業の側も免責することになる。
企業の側の競争(優越的地位濫用を含む)を問題とするかどうかという次元
「人材と競争」という議論の主な関心対象はこちら
人材の側が事業者に該当するかどうかは、この問題の本質には関係がない。
相手方が消費者であっても、価格カルテルは独禁法違反となるし、優越的地位濫用も成立し得る。
ところが、ここで議論がねじれて、
人材が事業者に該当しない場合には独禁法で保護しないかのような議論がされた
労働法に任せられるところは任せたい
令和元年度年次報告
その他の類型として,芸能事務所が,自らと競争関係にある芸能事務所に所属する芸能人の活動を妨害していた疑いがあったため,取引妨害等につながるおそれがあったとして注意を行った事例などがある。
本件の法律構成
8条5号 → 一般指定1項1号
選手が提供する役務の市場を検討対象市場としている
一般に,事業者団体が,構成事業者に対し,他の事業者から役務を受けることを共同で拒絶するようにさせる場合であって,他の事業者が当該構成事業者と同等の役務提供先を見いだすことが困難なときは,当該他の事業者を当該役務の提供市場から排除する効果を生じさせ,当該役務提供市場における公正な競争を阻害するおそれがある(独占禁止法第8条第5号〔一般指定第1項第1号(共同の取引拒絶)〕)。
2条9項1号・一般指定1項は、被拒絶者を事業者に限定しており、素直に読めば、被拒絶者が事業者として競争に参加すべき市場からの被拒絶者の排除を問題とする条文
(拒絶する側の競争を問題とするのであれば、被拒絶者が事業者であることを求める必要はないはずであるから)
本件の論法は、それには合致
しかし
選手が提供する役務の市場を検討対象市場とするのは、本件の実態に合致しているのか?
球団が選手提供役務を購入する市場を問題とする場合
この場合、本来は、選手が事業者に該当するか否かは物事の本質には関係ない。
事業者団体を行為主体と考える場合は、
8条1号
8条4号
(8条3号も不可能ではないが、選手の側の競争を問題にすることになり「振り出しに戻る」感がある)
球団らを行為主体と考える場合は、
不当な取引制限
(私的独占・・話が細かくなりすぎるので取り敢えず略)
確約手続でなかった点
様々な文脈があると思われ、明瞭に分析することは難しい。
公取委として、競争が回復すると確認していない案件である旨の説明(公正取引座談会)
公表文
公正取引委員会は,前記3を踏まえ,今後,大阪ガスが自ら申し出た改善措置を実施したことを確認した上で本件審査を終了することとした。
本件は、それとは異なる。
公正取引委員会は,NPBによる前記6の措置が,独占禁止法違反の疑いを解消するものと判断し,本件審査を終了した。
本件公表文は、冒頭で、行為の疑い、という言い方をし、違反の疑いとは言っていないが、最後の最後で、違反の疑いを解消、とした。
「他方,実際に本件申合せが適用されて12球団に契約を拒絶された例はなかった。」の位置付け
違反でないことの根拠とはなりにくい
情状、本件申合せの「廃止」の説得性、・・
コメント
Dさん
拒絶例はなかった
「ルール」があればあきらめるのではないか。
田澤選手は2020ドラフトでも指名されなかった。
ヤクルトが、阪神→独立リーグの選手と、シーズン中にドラフト関係なく契約
→ 田澤選手の形態が排除されている
ドラフトで指名されなければダメ、というのは引き続き残っている。
本件申合せは、最初から排除の意図はあったのではないか。
正当な理由?
Eさん
本件の公正な競争は誰と誰の競争か?誰が被害者か、わかりにくい。
球団か
選手か
shiraishi.icon排除、もあるし、被カルテル・被濫用、もあり得るのでは。
Fさん
米国では野球に適用除外
欧州では競争法適用可能・・ドラフト制度なし
日本では、独禁法の疑い解消
ドラフト制度について公取委はどう考えているのか。