事例解説アウトライン2019-11-27
(東京高裁判決まで出た段階)
コメント
事案の概要
土佐あき農業協同組合が組合員である農家に対し系統外流通業者(「商系業者」)への出荷を拘束する行為を行うことにより、一般指定12項に該当する、とされた排除措置命令の取消訴訟。
事件経緯
平成29年3月29日 排除措置命令
平成29年7月31日 執行停止申立て東京地裁決定(却下)
平成31年3月28日 東京地裁判決
令和元年11月27日 東京高裁判決
令和2年10月13日 上告不受理等
このような事案での独禁法上の切り口
①系統外流通業者の排除(本件)
適用条文
一般指定12項
法第二条第九項第四号又は前項に該当する行為のほか、相手方とその取引の相手方との取引その他相手方の事業活動を不当に拘束する条件をつけて、当該相手方と取引すること。
垂直的制限の一般条項
競争停止的な行為も他者排除的な行為も拾える
土佐あき(名宛人・原告)は、支部園芸部に関する主張を一貫して行い、随時、他の主張も行った。
支部園芸部に関する主張
(明瞭ではないが)
農家に対する本件拘束を行っているとしても支部園芸部であり土佐あきではない、という主張と思われる。
支部園芸部が違反者であるので名宛人違い、という主張か。
裁判所は、事実認定のレベルで否定。(高裁は13-18)
22条に関する点 18-21
略
弊害要件の成否
市場における反競争性
市場画定 21-23
全国のなすの販売の市場、でなく
高知県地域のなす農家を顧客とする販売受託の市場、である
反競争性(=排除効果)(=市場閉鎖効果)
「市場閉鎖効果が生じる場合」とは,非価格制限行為により,新規参入者や既存の競争者にとって,代替的な取引先を容易に確保することができなくなり,事業活動に要する費用が引き上げられる,新規参入や新商品開発等の意欲が損なわれるといった,新規参入者や既存の競争者が排除される又はこれらの取引機会が減少するような状態をもたらすおそれが生じる場合をいう。
地裁判決ではこれと全く同じ字句による一般論を当てはめ
高裁判決も引用
市場閉鎖効果の具体性 23-24
名宛人は、本件行為の廃止後に系統出荷率が上昇したことに言及し、本件行為と弊害との因果関係的なものを問題にしている模様
高裁判決
不公正な取引方法の規制をするための要件としては、具体的に競争を阻害する効果が発生していることや、その高度の蓋然性があることまでは要件になっておらず、公正競争の確保を妨げる一般的抽象的な危険性があることで足りると解される。
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とは言っても、どの範囲が拘束を受けたか、などは、検討する。したがって、名宛人が求めたような厳密な数字の立証までは必要ない、というにとどまると考えるべき。
結局のところの市場閉鎖効果の立証
24-25
「組合員の相当数が本件行為の対象となっていた」(25の3行目)
18の改め部分
地裁
拘束行為を受けた農家が半数でも面積的に大きいから市場閉鎖効果あり
高裁
目に見える拘束行為を受けた農家が全員でなくとも、一部の農家に対する拘束行為による萎縮効果があるため、全ての農家に対して拘束の影響があると言えるから、市場閉鎖効果あり。
正当化理由
25-26
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「もっぱら公正な競争秩序維持の見地から見るべきであって、事業経営上又は取引上の観点等からみて合理的ないし必要性があるにすぎない場合には」ダメ。
正当化理由という概念が育っていなかった昭和50年和光堂最判の時代の最高裁判示が継承されているもの。
現代では、当局(裁判所)が正当化理由の成立を個別に否定する際のレトリックとして用いられている(結論として否定する場合の後付けレッテル)。正当化理由として認められるようなものも、「事業経営上又は取引上の観点等」によるものが多いわけで、基準にはなっていない。
コメント
Aさん
名宛人
13末-15 クリアになった
市場閉鎖効果
地裁と高裁で議論が変わっている
地裁:農家と支部員の数の比較に注目
高裁:支部員と組合員の数の比較に注目
地裁52のウを全て書き換えればよかったのでは?
Bさん
地裁と高裁の書換え部分
地裁
面積
高裁
それを否定した・・競争法的に意味があるか?
全員に拘束が及んだか?
正当化理由 25
条文上の根拠?
正当な理由・不当な 書き分けに意味あるか?
Cさん
市場閉鎖効果と因果関係 23
このような認定でよいのか
他者排除か優越的地位濫用か 25