14_2025
(13_2025は欠番)
「市場」補足(前回末尾の補足)
リニア(前回言及)
正当化理由
はじめに
『独禁法講義』では、「競争を実質的に制限する」や「公正な競争を阻害するおそれがある」の枠内で、一応、反競争性と正当化理由を分けて説明しているが、
結論としては、反競争性・正当化理由を総合考慮して「競争を実質的に制限する」や「公正な競争を阻害するおそれがある」の成否を判断する、という枠組みが定着しているので、そのように理解して差し支えない。
それを前提として、以下では、「正当化理由なし」の部分に絞って解説するものである。
過去と現在
過去:公取委が触れようとしなかった
現在:グリーンなどでは積極的に言及など
条文における位置付け
「競争を実質的に制限する」や「公正な競争を阻害するおそれがある」の中に取り込む
「公共の利益に反して」は、使わない
「「公共の利益に反して」という文言があるから独占禁止法には正当化理由の成立の余地がある」とする説(通産省説)に公正取引委員会が対抗した昭和50年代の名残
現在の現役は、年代的に、それに関係していないが、「公共の利益に反して」は読まない、という「年長者の通説」の影響下にある。
「公共の利益に反して」を使わないほうが、2条6項と8条1号で統一的な議論ができる。
裁判所は、昭和59年判決が「公共の利益に反して」を根拠として判示したため、「公共の利益に反して」に頼る傾向(原告(命令名宛人)が「公共の利益に反して」いないと主張したらそれに応える傾向)があるが、「競争を実質的に制限する」や「公正な競争を阻害するおそれがある」の中でも正当化理由を検討するので、結局、「公共の利益に反して」に関する判示は、原告が主張するから一応判示しておく、という程度のものに形骸化している。
立証責任
重要だが、書いてあるとおり。
具体的基準の骨格
目的の正当性
手段の相当性
目的の正当性
11k69-74の(1)〜(7)の分類は、「正当化理由」など他に誰も言っていなかった時代からの分類であり、頭の整理のための分類であるから他の分類方法があってもよいが、だいたい、これで説明できる。
不適格なものの排除
インセンティブ確保
知的財産保護はこの一例
21条に関する考え方 11k71-72
バスターミナル維持費など
物理的・技術的・経済的な困難
効率性向上・競争促進効果
「競争促進効果」は、「正当化理由」の言い換えであることが多い。
3条件 11k72の①〜③
効率性について、pp65-66
企業結合ガイドラインにも書かれていること
想定例5 p9
公共性
公取委は取り上げないので民事裁判でしか出てこない
業績不振の他の供給者の救済(「経営状況」)
企業結合ガイドラインに書き込まれた(正当化理由としての)当事会社の主張は認めなかったが、
因果関係の観点から当事会社の主張を認めた事例。
手段の相当性
LRA
それらしい表現がされることがあるが、「議論の方向」や「心意気」を大雑把に示したものであり、LRAが見つかれば直ちに正当化理由なしとなるわけではない、と理解するのが現実に合っている。
大分の農協の話 11k74-75
MCデータプラス(下記)
事業法規制・行政指導
11k76-77のとおり
やや過去の議論である。
他官庁による事業法規制や行政指導によって独占禁止法が骨抜きにされないように、という議論を、公取委シンパが熱心に行った名残
現在は、公取委が強くなり、公取委による行政指導が行われ、公取委による事業法規制(スマホ法)が行われるに至っている。
総合的な読み物としては、例えば、
東京地裁決定(リンク先で入手できるPDFのpp12-15) 東京地裁決定は、紹介するだけになると思います。
Mt.Rainierのブログ
因果関係
並行的行為 11k79-81
市場に特殊な条件がある場合 11k81-82
もともと弊害要件が満たされていた場合
日本製紙/特種東海製紙
https://gyazo.com/513080b6f15e3ed117040a8d58ae5bc7
HHIの増加分を見る発想
企業結合当事会社がいずれも事業を行っている市場のみを見る発想
近い将来にはいずれにせよ弊害が生ずる場合
競争を期待すべきでない場合
企業結合ガイドラインに令和元年の改定で追加された記述
https://gyazo.com/6d370e262804d55c6d1ef72f285178ff
届出からクリアランスまで2年かかった有名事例
11k234の図で、どこがどうなって2年かかるのかを考えてください。
https://stjp.sakura.ne.jp/_presen/keynote/MergerReview_detailed2.jpeg
2年かかった主な原因は、下記の対馬等3経済圏ではなく、九州本島の経済圏(における問題解消措置としての債権譲渡)であったと伝えられている。
https://gyazo.com/7cc89ac848c05875d4dc2a78fdc78cfd
counterfactualについて
後日追記
説明の勘違い
長崎地銀事例で、説明に勘違いがありました。「ない」が「により」を否定しているという説明の実質には、間違いはありません。
x 「1」段落で、競争の実質的制限は既にあったことが示されている。
o 「1」段落で、もし企業結合行為が行われたら競争を実質的に制限することとなることが示されている。
(13_2025は欠番)