所得税の人的控除に関する研究
掲載誌 : 関西大学 『経済論集』 72 巻 3 号 (2022 年 12 月) まとめ
扶養 (世帯) 人員に対する人的控除の効果の検証の結果
1. 人的控除の適用数が減少傾向である
2. 給与収入ベースでの分析によると、扶養人員が多い給与所得者ほど高い再分配効果を示す負担構造に直面している
扶養人員による負担調整の効果 (等価所得を用いた分析)
等価所得は、世帯人員の増加による生計費についての規模の経済を考慮して求めるもの 人的控除は所得水準とは無関係に定額で設定されているものであり、所得水準が大きくなるほど所得に対する割合は小さくなる
等価所得を用いた考察から、現行の人的控除制度は、低収入層では扶養人員に対する規模の経済を小さく評価し、高収入層では規模の経済を大きく評価、つまり世帯人員が増えても生計費は増加しないという前提の税負担構造となっている
内容メモ
はじめに
扶養人員の増加に伴う規模の経済を考慮した算出は行われていない 税法分野では、宮崎 (2018)
基礎控除の高所得層における逓減・消失については、日本で所得税法が採用された明治 20 年において所得に応じて免税点を段階的に措置していたことと同視すればよいとしている 1. 人的控除の意義
3. 等価所得を用いた所得税の再分配効果
世帯の等価所得を個人の担税力と見なした所得税は、世帯人員とは無関係に等価所得を基準にして水平的、垂直的に公平な負担を目指すことになる