花は雨の過ぐるによつて、紅まさに老いたり。柳は風に欺かれて緑漸く垂れり。人更に若き事なし、終には老の鶯の百囀りの春は来れども、昔に帰る秋はなし。
花は雨の過ぐるによつて、紅まさに老いたり。柳は風に欺かれて緑漸く垂れり。人更に若き事なし、終には老の鶯の百囀りの春は来れども、昔に帰る秋はなし。
「花は雨の過ぐるによつて、紅まさに老いたり」は、雨によって花の色が色褪せることをいう
「紅」はつややかなはつらつとした色で、たとえば「紅顔」と言って若い人の顔ばせを指すこともある 花の色褪せ、さらに暮春の景である老いた鶯を添えつつ、悲秋たる秋へとつなぐ。しかしその秋にすらなお帰ることはできない(昔に帰る秋はなし)という行く先のない老いの悲嘆cFQ2f7LRuLYP.icon
謡曲の語彙・詞藻の調べたるやなんなんだろうか。絢爛な錦を見るような心地がする
ただし柳は風に欺かれて緑漸く垂れりはどう解釈すればいいのか謎cFQ2f7LRuLYP.icon
老いというよりは緑がまさるのかな~とか思った。でもそうなると色褪せていく、衰えていく文の方向とどうも合わない
https://gyazo.com/a0e2a339f600c2c400809e0379bcaaad
河原万吉『稀籍考』によると昭和二年に漸く見つかった稀覯本で、「謡曲に引用された詩句の出典」として先行資料に紹介された本のようだ ちょっとしらべてみたら大和田建樹『謡曲評釈』の頭注に次のようにあった
https://gyazo.com/674f094d29380dcae79cbe765b2f98bchttps://gyazo.com/03638deea3c5fc2c20fb0d8db4df984d
なるほど、花は雨の過ぐるによつて、紅まさに老いたり。柳は風に欺かれて緑漸く垂れり。全体で春の末(暮春)になることを言うみたいでした