僕は、永遠を望むよ
インターホンが鳴った。
僕がドアを開けると、赤いバラの花を持った遥が立っとった。
遥は優しく微笑んで、バラの花を僕に差し出した。
「いつも寂しい思いさせて、ごめんよ」
遥が僕の頬に触れた。僕は泣いとった。
僕は頬に当てられた遥の手に自分の手を重ねて、笑った。つもりやった。きっとまた、笑いながら泣いとった。
明日は日曜日なけん、泊っていってほしいと言うと遥はそのつもりやとうなずいてくれた。
僕達はシャワーを浴びて、パジャマに着替えて、退屈なテレビ番組を見ながら焼酎を飲んだ。 焼酎を教えてくれたんは、遥やった。こんなもんおっさんが飲む酒やと思とったけど、めっちゃうまかったし、今では僕もええおっさんや。
ベッドに行くと、少し顔を赤くした遥が僕の肩に手を回してきた。 「この部屋、防音なんだろ?」
「どしたん、歌でも歌うん?」
僕が言うと、遥は楽しそうに笑うた。僕の大好きな笑顔やった。
ひとしきり笑うと、遥は僕にキスをしながらパジャマを脱がせた。 「円、きれいやな」
数え切れんくらいの女と男から言われ慣れたはずの言葉やのに。遥に言われると嬉しくて、くすぐったくて、興奮した。
遥は僕に馬乗りになると、もう一度キスをした。
「女になったことは?」
いたずらっぽく遥が笑うた。
笑いながら僕が言うと、遥も声を出して笑うた。
僕達はじゃれ合って、何度もキスをして、朝までめちゃくちゃなセックスをした。
目を覚ますと、僕をじっと見つめとった遥と目が合うた。
遥はずっと、僕の胸をなでとった。
「愛しとう」
遥は朝が来るまで何度もささやいたセリフを繰り返した。嘘でも嬉しかった。
「遥はいつまでこうして僕を愛してくれるん?」
僕は遥の手に自分の手を重ねて、ほう訊ねた。いつまで偽りの愛を与え続けてくれるん?
「円が望むなら、いつまでも」
遥はゆっくりまばたきして微笑んだ。
僕が言うと、遥は小さく何度かうなずいた。
永遠なんてどこにもないって、僕はわかっとった。
遥がまばたきをすると、大粒の涙がこぼれた。なんで遥が泣くんか、僕には理解できへんかった。