僕は、これでええんです
週末、仕事を終えて更衣室に向かおうとすると、東雲さんに呼び止められた。
僕が立ち止まると、東雲さんはうつむいたまま、僕の手を握った。
僕が訊ねると、東雲さんは小さくうなずいた。
インターホンを鳴らすと、ゆったりした部屋着に着替えた東雲さんが出てきた。
東雲さんは僕にも部屋着に着替えるように勧めてくれた。
東雲さんの服は、どれも僕にぴったりのサイズやった。
僕達は二人でパスタを作って、ワインを飲んだ。めっちゃええワインやった。 食事を終えると、僕は東雲さんにベッドルームに連れ込まれた。
僕はもう、何をされてもええと思うとった。東雲さんの気が済むんやったらほんでええ。
東雲さんはドアを閉めると、僕をベッドに座らせて、部屋の電気を消した。 僕は部屋中を見渡した。あたり一面に、七色の電飾が飾られとった。
ほう言うて東雲さんは僕の隣に座った。頬を流れる涙が、電飾の明かりに照らされてキラキラ輝いとった。
「僕は、これでええんです。満足です」
東雲さんは笑うた。笑いながら泣いた。あふれる涙を拭おうともせんかった。
僕は東雲さんを抱き寄せた。ほうせずにはおれんかった。
東雲さんは、僕の腕の中で声を上げて泣いた。子供みたいに泣いた。
僕達が流した涙が、七色の明かりに照らされてキラキラ輝いとった。