3秒ルール
倫理研第1回: 共同討議 第2部(1)にて、インターネットのポピュリズム的な側面を表現する言葉。 日本語では、はてなダイアリーキーワードのほうの意味が一般的であるが、倫理研委員の高木浩光が「本当にちょっとでも難しいと、もう全然盛り上がらない。3秒で答えられないとダメだ、という話がありますが(以下略)」という文脈でこの言葉を用いるとき、それはレッシグがOSCON 2002で苛立ちを隠さずに熱弁をふるった基調講演、"Free Culture"にて語られているものに近いと思われる。以下に紹介する。 レッシグはその講演でこう語っている。ワシントンでロビー活動をした際、下院議員に「君は説明をしているという時点ですでに負けている、3秒で理解されなければ負けだよ」と言われたという。このエピソードを紹介しながら、レッシグは「私達はいままでコモンズの自由を守るために説明しつづけてきたわけだが、それゆえに、コモンズを脅かしている者に自らの共有文化からの窃盗行為という悪を認識させることに躓き続けたというのか」と聴衆に問いかけている。 つまりここでは単に「3秒以内の短期記憶しかないバカ」という意味ではなく、そもそも発言が行われる前の政治的状況・文脈で、聞いた側の答えがあらかじめ決定されてしまうような、言葉の力が極端に透明な伝達性を失っている状況にレッシグは苛立ちを覚えているといえよう。 一方でレッシグは、「いくつものブログやSlashdot storiesが立てられたけれども、なにひとつワシントンを動かしていない。我々はまだ自由のためになにひとつなしてはいないのだ、ともアジっている。彼の最新書『Free Culture』はアジだとレッシグは公言しているが、このような部分からも彼がアジテーションへ向かった背景は伺えるといえよう。 ちなみに、この講演は邦訳もされている。
「自由な文化」(東浩紀訳、『新現実』第2号、角川書店) O'Reilly Network - Free Culture: Lawrence Lessig Keynote from OSCON 2002
(3秒ルールについて語っているのは3ページ目になる。)