顕在記憶と潜在記憶
意図して思い出す顕在記憶
意図的に思い出そうとするのは、顕在記憶と呼ばれる。「あの人の名前何だったっけ」とか、「スペインの南にあるアフリカの国何だったっけ」などとがんばって意図的に思い出そうとするものである。
意図無しに思い出す潜在記憶
思い出そうとせずに思い出すのは、一般には潜在記憶と呼ばれる。最も典型的なのは、意図せず思い出し、思い出したという意識も伴わない潜在記憶である。
たとえば読者の皆さんは今この本を読んでいる。この時にはこの章の最初に述べたように文字の記憶、文法の記憶、言葉の意味の記憶が想起され、活用されている。しかし、これらを思い出しているという意識は存在しないだろう。むろんここで「就中興味を惹かれるのは……」などというのが出てくると、多くの人では「就中って何だっけ」と一挙に顕在記憶システムが入り込んでくる。
手続き的な記憶もそうである。私たちは自動車学校でギアチェンジの時にはクラッチを切ることを教わり、はじめは「ギアチェンジするんだからクラッチ、クラッチ」などと顕在記憶のレベルで想起を行っているが、慣れてしまえばそんなふうに思い出すことはなくなる。
出典