自己生成効果
self generation effect
人が行った精緻化を聞くよりも、仮に拙くても自分で精緻化を行ったほうが成績がよくなる現象を指している。自分で精緻化を行う場合は自分のよく知っていることがらが付け加えられ、それはよく知っているがゆえに思い出しやすく、よい手がかりになるからだろう。
自己生成効果
専門知識分野に自分で意味を創造してみるという、頭を働かせる「活動」を行う効果は、基本的な記憶タスクにおいて明確に表れる。例えば「家」を意味するフランス語「メゾン(maison)」を覚えたいとしよう。この単語を読んだときに一文字抜けていたほうが(例えば「mais●n」)、覚える確率ははるかに高まる。「o」を加えて単語を完成させる。これで思考が完了する。ごくごく基本的な形だが、学習を創造する──つまり学習に意味を持たせる作業を行ったことになる。
学習を頭を働かせる「活動」ととらえる研究によって、知識の習得についての常識はここ数年で大きく変わった。例えば、最近この研究を総ざらいに評価したケント州立大学のジョン・ダンロスキーらによると、蛍光ペンでなぞるやり方は学習にあまり効果がないとわかった。なぜか。マーカーを引くのは人が知識を構築するのに十分な行動ではない、ということらしい。同様に、ダンロスキーらによれば繰り返し読む効果も限定的だ。なぜか。これもやはり頭を働かせる「活動」を促すには至らないからだ。
学習が頭を働かせる「活動」であることを裏づけるエビデンスがこれだけ出ていながら、注目する学校や大学がわが国にあまりにも少ないのは残念でならない。どこの大学図書館でも、行ってみると学生は受け身で本を読んでいる(対象について学びたければ、能動的に関わる行動をとるべきだ)。高校の校内を歩いてみれば、生徒たちは教科書の全ページに機械的にマーカーを引いている(自己テストのほうが学習アプローチとしてずっと効果が高い)。大事な会議の準備をするのに人はメモに目を通すだけのことが多い(もっと良いアプローチは、誰もいない部屋で伝えたい内容を実際にしゃべってみることだ)。