埋没費用(サンクコスト)
回収できない投資
過去に発生し、回収不可能な費用。これらの費用は将来の意思決定に影響を与えるべきではない。
企業は過去の投資に囚われ、新たな投資機会を逃してしまう。
将来の費用と収益だけを基に判断すべきである。
埋没費用の例
これらの費用は一度発生すると回収できず、将来の意思決定に関係ない。
設備投資
研究開発費
広告費
1.映画産業
映画制作会社が大規模な投資を行った映画が興行収入が伸び悩んでいる場合、さらなる宣伝費を投じて回収を試みる。
2.航空業界
航空会社が新たな航空機を導入する際、過去に投資した古い機体を引き続き運用するかどうか判断する。過去の投資額に囚われて古い機体を継続使用すると、燃費効率やメンテナンス費用などの将来の費用が増大する。
3.企業買収
企業が過去に買収した事業が赤字である場合、さらなる投資を行って立て直そうとする。
埋没費用の理解によって期待できる結果
1.効率的な資源配分
2.イノベーションの促進
過去の投資に囚われない意思決定が可能になる
3.競争力の向上
客観的な意思決定により、企業の競争力が向上かる
影響を受けるマーケティング
マーケティングでは、新製品開発や広告戦略の決定において埋没費用の影響を受けやすい。
対処方法
過去の費用と将来の費用を明確に区別するために、意思決定過程を客観的に見直す
対処領域
新規投資判断
過去の投資に関わらず、新たな投資案件を客観的に評価する
プロジェクト継続判断
プロジェクトの継続を、過去の費用ではなく将来の収益と費用のみで判断する
製品ラインポートフォリオの整理
現在および将来の利益性に基づいて製品ラインを選択する
導入手順
1.意識の変革
埋没費用を無視し、将来の費用と収益のみを基に判断するという考え方に対する理解と受容が必要
1.過去の投資の無駄感
埋没費用を無視することで、過去の投資が無駄になったと感じるステークホルダーがいるかもしれない。面子が潰れる利害関係者がいる。
2.心理的抵抗
従来の意思決定方法に固執し、埋没費用を無視する新たなアプローチに対する抵抗がある場合がある。
2.客観的なデータ分析
過去の費用と将来の費用を明確に区別し、意思決定におけるバイアスを排除するためのデータ分析する
限界
感情的な要素の無視
埋没費用を無視した判断は、理論的には効率的であるが、実際の意思決定においては感情的な要素が無視されることがある。過去の投資に対する愛着や、他のステークホルダーとの関係を考慮せずに判断すると、組織内の摩擦や不満が生じる。
教訓の無視
過去の投資に対して埋没費用を無視することで、過去の失敗や成功から学ぶ機会が失われる。過去の経験を踏まえた意思決定が重要である場合、埋没費用の考慮だけでは十分な判断ができない。
情報収集と分析の限界
埋没費用を無視して効果的な意思決定を行うためには、正確な将来の費用と収益の情報が必要である。しかし、意思決定の精度には限界がある。
適用範囲の限界
経済的な意思決定において効果的であるが、倫理的、社会的、環境的な要素を考慮する場合には、この知識だけでは十分な判断ができない。
学習コストの見積もりを誤らせる
サンクコストは極めて膨大である。
特に経験や体験が埋没した行為には恐ろしいほどのサンクコストを考慮してしまう。
かかっているサンクコストを垣間見てみよう。人は試行錯誤して手に馴染むようになった道具がある。この道具とは別のものを使わなければならないとしよう。学習コストと混同しないように簡単に乗り換えられるものが対象だ。高級キーボードを使っているなら、十分に使えるが質感の安い3000円のキーボード。webブラウザであればchromeではないブラウザを使わなければならない。Visaのクレジットカードを使っているのであればMastercardのデビットカードを使おう。
これらを考えただけでも大きなストレスがたまるのではないだろうか。これもサンクコストだ。もちろん使っていない方法を利用するには学習コストがかかる。しかしサンクコストがある場合、学習コストを非常に大きく見積もる。
莫大かつ意識されにくい人の意思決定を縛るもの
主観的な累積コスト
経済コスト
感情コスト
サンクコストを費やさせて意思決定させる場合がある
関連
ある選択を行った際に失われる、次善の選択肢による利益である。
インクリメンタル分析は、ある選択肢と他の選択肢との差分(インクリメント)を分析する手法である。将来の収益と費用の差を比較することで、効果的な意思決定が可能になる。埋没費用を無視することで、インクリメンタル分析はより正確な判断ができる。
ある選択肢による費用と利益を比較し、最も効果的な選択肢を特定する手法である。
合理的選択理論は、個人や組織が自己利益を最大化するように行動するとする経済学の理論